◎地域便り


山口県 ●県内の酪農振興に寄与する乳業会社を目指して

山口県/中野 昭人


 本州最西端にある山口県の酪農は農家数160戸、乳用牛頭数5,240頭で、平成13
年の生乳生産量は2万6千トンとなっており、ほぼ全量が県内に出荷されているが、
牛乳消費量は3万7千キロリットルで、不足分は他県に依存する消費県となってい
る。

 一方、県内には乳業工場が平成10年4月時点で13工場あり、いずれも中小規模で
老朽化が進んでおり、牛乳・乳製品価格が年々低下する中で厳しい経営を強いら
れる状況にあった。

 そこで、平成10〜12年度において乳業再編整備等対策事業に取り組み、新会社
(やまぐち県酪乳業株式会社)を設立し、生産性の低い4工場を廃止するとともに、
新たに1工場を建設し、牛乳・乳製品の安定生産と流通の合理化等を図ることとな
った。

 なお、13年3月に完成した新工場は、鉄骨・延べ床面積1万2,155平方メートルで、
いくつものラインを備え、HACCPシステムの導入により安全で衛生的な牛乳類・ヨ
ーグルト・プリン・果汁類等を製造するとともに、新たに製品開発室を設け、消
費者ニーズに対応した新製品の開発を積極的に進めていくこととした。

 近年、清涼飲料水等の伸びにより、牛乳・乳製品の消費停滞が続く中で、本格
稼働して1年が経過したが、新工場の建設によって

 @ESL(品質保持期限の延長)の導入により、牛乳類の品質保持期限が従来の2
    培に延長でき、計画生産が可能となり、製造コストが大幅に削減できた。
    
 A充填エリアを他の生産エリアと区分けしてクリーンルーム化することにより、
    製品の細菌汚染や異物混入を極力少なくすることが可能となった。
    
 B生産工種の一部をロボット化することにより省力化を図った。

 C1.5日分の製品が保管できる冷蔵庫の設置により、製品検査後の品質保証と物
    流コストの削減を図った。
 D原料の受入れから製品出荷までをコンピュータで一元管理し、製造履歴の追
    跡が確実に行え、事故原因の究明や再発の防止が容易となった。

など当初計画どおりの合理化・効率化が図られるとともに、一連の食品事故や偽
装表示問題等により「食に対する安全・安心」への関心が高まる中で、消費者ニ
ーズに対応した牛乳・乳製品の供給が可能となった。

 また、昨年から取り組んできた新製品(のむヨーグルトそよ風等)の開発にも
成功し、健康ブームとも相まって、本年4月からは順調に販売を伸ばしている状況
にある。

 現在、県内においても若い酪農後継者による大規模経営が芽生えつつある中で、
酪農家が安心して生乳出荷できる受け皿として、また、県産農畜産物の地産地消
運動が積極的に進められている中で、「安全・安心・新鮮」な牛乳・乳製品を安
定供給していく中核的な工場として、今後も一層の効率化や販売体制の強化に取
り組んでいくことが新会社の使命と考え、努力しているところである。

【平成13年3月に完成した新工場】
【新工場で開発した新製品(のむヨーグルトそよ風)】


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