◎地域便り


長野県 ●ヤギ乳見直しの動き

長野県/藤田 優


3月下旬に生まれた愛らしい子ヤギ

  佐久市にある独立行政法人家畜改良センター長野牧場は、国内唯一のヤギ育種等機関である。このところ、同牧場には、従来の種ヤギや凍結精液の配布に関する問い合わせ以外にヤギ乳の利用、飼養管理技術についての問い合わせや実習・研修の申し込みが急激に増加している。

 これにはいくつかの背景が考えられるが、具体的には(1)従来から知られているヤギ乳の消化性が良く低アレルギーという特徴の見直し(2)ヤギ乳は臭いというイメージに対して実は搾乳後の冷却などを適正に行えば臭みはほとんど出ないことが分かってきたこと(3)ヤギ乳の特徴を活かした比較的規模の大きな生産事例が増えてきていることなど−があげられる。

 実際に長野牧場でヤギ乳と低脂肪牛乳(3銘柄)の4種を飲み比べ、どれがヤギ乳かを当ててもらう試験を実施したところ、被験者43名(当場職員および食糧・統計事務所職員)のうち正解者はわずか18名(42%)でしかなかった。

 ヤギ乳利用についても全国各地で行われるようになってきており、代表的なものを紹介すると殺菌乳は、北海道の乾牧場、岩手の川徳牧場、宮崎の中村牧場、沖縄のはごろも牧場で販売され、ヨーグルトは、広島の高原安瀬平乳業、チーズは、北海道の(有)ランランファーム、茨城の森のシェーブル館のほか手作りに近い形で群馬の熊井氏、長野のたんぽぽ堂(吉田氏)や延齢草(小林氏)が宿泊客、固定客に販売している。

 このほか、アイスクリームは北海道のリスの森、福島の(株)自然の杜、鹿児島の(有)ノガミ産業で販売され、洋菓子(チーズケーキ、プリン)で兵庫に本社のある(株)サンタクロースが全国的な販売を展開している。

 ヤギ乳利用に関してもう一つの面白い動きとしては石鹸材料としてであり、大阪の手作り石鹸メーカー((有)ユノカ)が当場のヤギ乳を利用して石鹸、シャンプーを試作したところ、非常に肌触りの良いものができるということで本年から山羊乳石鹸を定番として販売することになっている。また製品化には至っていないものの日本全薬工業(株)や健康食品メーカーが機能性食品の材料としてヤギ乳を利用すべくヤギ飼養に取り組んでいたり、化粧品の材料に使ってみたいとの製薬会社からの問い合わせもある。

家畜改良センター長野牧場でのヤギの搾乳

 長野牧場では生産した日量100kg程度のヤギ乳について森のシェーブル館などに販売しているが新規にヤギ乳を利用したいと相談されてきた方に対しても販路拡大のためにヤギ乳を提供又は販売してきている。 ヤギ乳加工が今後産業として発展していくためにはヤギ一頭一頭の泌乳量を上げコストを下げていくことが課題であることから、長野牧場としては現在600kg弱程度(240日)の平均乳量を場内のトップレベルである1,000〜1,200kg程度にまで上げて行きたいと考えている。


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