トピックス

●●●牛肉生産量、15年度は減少に転じる●●●

 農林水産省「食肉流通統計」によると、15年度の牛肉生産量(部分肉ベース)は、前年度に比べて2.8%下回る35万3千トンとなった。過去の動向を振り返ってみると、13年度には、国内におけるBSEの発生に伴い前年度をかなりの程度下回る結果となった。BSEによる出荷繰り延べの解消に伴い、14年度にはほぼBSE発生前(12年度)の水準近くに回復したが、15年度は再び減少に転じた。このことから、生産量は12年度以降、減少傾向で推移しているものとみられる。(図1)

図1 牛肉生産量の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」
 注:部分肉ベース


 15年度のと畜頭数を見ると、乳牛(交雑種を含む)は4.1%上回った一方、和牛は6.8%下回った。和牛では、めす、去勢ともにと畜頭数が減少しており、和牛の飼養頭数の減少を反映したものとみられる。(図2)

図2 と畜頭数の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」



●●●牛肉輸入量、3年連続で減少●●●

 財務省「貿易統計」によると、15年度の牛肉輸入量(部分肉ベース、16年3月は速報値)は、前年度に比べて2.6%下回る52万トンとなり、13年度以降、3年連続の減少となった。

 冷蔵、冷凍の内訳をみると、冷蔵4.2%減、冷凍1.3%減といずれも前年度を下回った。(図3)

図3 牛肉輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」


 15年度を通してみると、昨年度をわずかに下回る水準となったが、月別の輸入量は例年になく大きく変動している。15年5月にはカナダでBSEが確認され、同国からの輸入が停止された。しかし、15年4月〜6月は、前年同期の輸入量が日本におけるBSE発生の影響で輸入量が少なかったこともあり、19.3%増の13万4千トンとなった。この結果、冷蔵牛肉では発動基準数量を超えたため、8月から関税の緊急措置が発動された。

 関税の緊急措置発動を控えた7月には、冷蔵牛肉の駆け込み輸入に加え、発動を予想して事前に手当された冷凍牛肉の輸入増加により、全体の牛肉輸入量は大幅に増加した。

 8月以降はやや落ち着いた動きを示したものの、12月には豪州と並ぶ牛肉輸出国である米国でBSEが確認され、米国産牛肉の輸入が停止された結果、16年1月から3月までの牛肉輸入量は、前年同期の8割程度に落ち込んだ。しかし、同期間の豪州からの輸入をみると、前年同期に比べて14.9%増加している。(図4)

図4 国別牛肉輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース


●●●15年度の豚肉輸入量、過去最高に●●●

 財務省の貿易統計によると15年度の豚肉輸入量は、わが国への輸入主要国で、口蹄疫、豚コレラなどの疾病発生もなく、また、わが国の牛肉の代替需要増などから、77万7千トンと前年度を3万1千トン上回る記録更新となった。

 月別にみると7月は、翌月のSG発動を予測しての駆け込み輸入により12万トンの輸入があった。一方、この頃、国内生産量の増加などから、安価な国産品が出回り、輸入品在庫が一時的に積み上がる時期もあった。しかし、SG発動以降は、ほぼ前年並みの輸入量となった。

 さらに1月以降はBSE、高病原性鳥インフルエンザ発生などにより牛肉、鶏肉の消費が低迷したことにより、豚肉の消費が拡大し、輸入量の増加に拍車をかけることとなった。

 国別の輸入量をみると輸入量第1位の米国からは、冷凍品と冷蔵品がほぼ半々の割合で、合計24万6千トンが輸入された。第2位のデンマークからは、23万3千トンが輸入され、その9割が冷凍品であった。

図5 国別輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース



 また、年間輸入量全体の12%を占める、「その他の国」の内訳は、チリ、フランス、オランダ、アイルランドなどで、中でもチリからは、3万5千トン輸入されたメキシコと並び2万9千トン(毎月1.5〜3千トン程度の輸入)の冷凍品が輸入されて、今後の輸入動向が注目されるところである。


●●●家計調査にみる地域別鶏肉の消費動向と販売促進活動●●●

 総務省の家計調査報告による3月の鶏肉の地域別購入頻度と支出金額は、表1のとおりとなった。

表1 地域別1世帯当たりの鶏肉購入頻度と支出金額
資料:総務省「家計調査」より
 注:購入頻度とは、調査世帯が当該項目を家計簿に何回記入したかを示すもので、
年間100世帯当たりの回数で掲載されている。


 昨年の3月と比較した場合、購入頻度、支出金額とも全国的に下がっており、高病原性鳥インフルエンザの発生による風評被害による、消費後退と推察される。

 一般的に沖縄を除く東海以南の鶏肉の消費は、全国平均を上回っている中で、今回の北陸、東海、近畿、中国、四国地方の落ち込みの大きさは顕著であった。

 高病原性鳥インフルエンザが発生した山口県、大分県、京都府はもとより、各地域の養鶏団体、自治体、生産者、流通業者、関連業者は、消費者を巻き込んだ消費回復、販売促進活動を活発に行い、その範囲も広範かつ全国規模に広がった。

 各養鶏団体では、BSE発生の時には約1年かかった牛肉の消費回復ペースを少しでも縮めようと、イベント開催時に鶏卵パックや唐揚げなどを無料配布するなど、直接消費者に鶏肉・卵の安全性を訴えつつ、生産者の生の声を伝えるべく、消費回復に積極的に取り組んでいる。


●●●脱脂粉乳の推定期末在庫、4年連続で増加●●●

 農林水産省牛乳乳製品課調べによると、16年3月の脱脂粉乳の推定期末在庫量は、前年同月に比べて15.4%上回る9万3千トンとなり、12年度以降、4年連続の増加となった。

 15年度の需給状況についてみると、生乳生産がわずかに増加する中で、冷夏の影響などにより飲用乳消費が停滞した結果、脱脂粉乳の生産が前年度に比べて1.3%増加した。一方、加工乳から牛乳への飲用乳消費のシフトに伴い脱脂粉乳の需要は依然低迷しており、脱脂粉乳の在庫は1年間で1万2千トン積み増される結果となった。

 こうした状況の中で、脱脂粉乳の在庫解消は、国内の牛乳・乳製品需給のバランスを保つ上で大きな課題となっている。新規用途の開発が進められているが、需給バランスの改善に直ちにつながるものではないだけに、既存用途向けの需要が伸び悩む現状の中で、輸入調製品から国産脱脂粉乳への置き換えの促進が重要性を増している。(図6)

図6 脱脂粉乳の推定期末在庫量などの推移
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」、牛乳乳製品課調べ



●●●脱脂粉乳を利用したみそに関係者が注目●●●

 脱脂粉乳の過剰在庫対策が酪農乳業界の大きな課題となっている中で、当機構、大学、みそメーカーなどからなる研究グループ(「脱脂粉乳の利用を考える会」)が開発した脱脂粉乳を原料の一部としたみそが、関係者の注目を集めている。開発の着想は、従前の脱脂粉乳の用途と競合しない新規用途の開拓にあり、醸造段階から主原料である大豆に脱脂粉乳を加えて製造する(1kgのみそに約120gの脱脂粉乳が使われている)。できあがったみそは、みその風味はそのままに、カルシウムやアミノ酸含有量は通常のみそを上回っており、同研究グループでは、骨粗しょう症や高血圧防止への効果を念頭に置いて、その特性に由来する効能についても研究を進めている。先頃、学会発表や官・業界関係者などを招いた試食会も行われ、既に新聞などでも紹介されている。同研究グループでは、みそ・食品メーカーに関心が広がりつつある点を踏まえて、「特色のある商品であり、通常品との差別化を図れば十分市場性があるのではないか」と期待を膨らませている。

 
脱脂粉乳を利用したみそ
 
試食会の風景(6月12日開催)



●●●鶏卵の価格差補てん基準価格の動向●●●

 鶏卵価格安定事業は、鶏卵価格の低落が鶏卵生産者の経営に及ぼす影響を緩和する観点から、標準取引価格が補てん基準価格を下回った場合に、生産者および農協などの積立金と国の助成により造成した基金を用いて、その差額の一定割合を補てんするものである。

 事業実施主体は、全農系の(社)全国鶏卵価格安定基金と全鶏連系の(社)全日本卵価安定基金であり、それぞれが基金の管理を行っている。

 補てん基準価格は、鶏卵の生産条件および需給事情、その他の経済事情などを勘案して毎年両基金の理事会で決定されている。そして、毎年の標準取引価格(全農中央鶏卵センターほか指定鶏卵販売所において販売された規格卵の加重平均価格)が補てん基準価格を下回ったとき、その差額に0.9を乗じて得た金額を、生産者に対して交付している。

 15年度の鶏卵の標準取引価格は、需要の低迷などにより、かつてない低水準で推移し、補てん基準価格の168円/kgを年度を通して下回ったことから、財源が枯渇し、年度末の1〜3月の補てんに支障を来す事態となった。(図7)(表2)

図7 標準取引価格の推移
資料:(社)全国鶏卵価安定基金

 

表2 標準取引価格と補てん基準価格
(単位:円)
注:備考欄の金額は制度に基づく補てん金額である。


 鶏卵は、供給量の増減が卸売価格に直ちに反映されることから、この度、農林水産省から示された「鶏卵生産指針」を踏まえた生産者の主体的判断による生産調整が望まれる。


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