◎今月の話題


食肉小売現場の現状と課題

(株)マオ・インターナショナル
   代表取締役 毛見(けみ) 信秀

 ここ数年、食肉消費に大きく影響を与える問題が数多く出現し、その都度小売現場は対応を迫られた。また、消費の動向も、ここ数年大きく変わりつつある。不景気であることだけが理由ではなく、食肉の消費動向は、確実に変化してきている。

食肉消費の変化から

1.安全・安心は当たり前

消費者が小売店頭で食肉に求めるものは、安全・安心は当たり前で、さらに以下のような点についての対応を期待している。
(1)健康、美容によければ買いたくなる
(2)メニューの提案があれば助かる
(3)おいしい(柔らかい)が必須

2.人口減少問題

従来の売場提案は、女性・子供が主なターゲットであった。今後はさらに「大人」「高齢者夫婦」に対する提案が必要になる。具体的には、
(1)柔らかい、ヘルシーな商品
(2)大人対象商品(例.大人のハンバーグ)
(3)個食
(肉だけでは単価ダウンのため、セット商品化が必要)
(4)二人前
などに対応した提案が求められている。

3.平日と週末にメリハリ

少人数家族の食生活の傾向として、外食・中食利用も増加している。平日は近所のファミリーレストランなどで簡単にすませる(安心・健康に留意したメニューも増えている。)または、総菜を利用する。そして、週末はディナーレストランも利用する。
小売りは、このような食生活の多様化を踏まえて、売場の提案についても、平日はファミリーレストラン、総菜への対応、週末は焼肉店、中華料理店、しゃぶしゃぶレストランなどへの対応が必要となってきている。
  小売りの対応例として、
(1)簡便商品の提案
(2)セット商品(焼肉セットなど)の提案
(3)メニュー提案の変化
(4)おいしそうな商品づくり
(5)外食との価格差提案
などが挙げられる。

4.嗜好の全国均一化(東南アジアタイプへ)

消費者は、何がおいしくて、何が健康によくて、何が経済的で、といった知識・経験が身につき、嗜好・消費が変わってきている。大きくは牛肉の高騰により豚肉の消費が拡大し、しゃぶしゃぶ、焼肉を中心に、関西以西でも豚肉の売上構成比が上がっている。嗜好全国均一化と、これに加えてさまざまな部位の利用開発がなされ、本来のおいしい部位が消費されるといった、いわゆる東南アジアタイプに移行しつつある。
 徐々に変化している例として、
(1)豚バラ、肩ロースの消費拡大
 (モモ、ロース、ヒレの不振)
(2)牛スネの消費拡大
(3)骨付肉(豚スペアリブ、鶏手羽先)の消費拡大
(4)特殊鶏系ブランド肉に代表される中間ブランド肉の不振
(消費者にとって価格が高いだけでメリットのないブランド)
(5)カレー用に使われる肉が角切り肉から切落し肉へ(さらにミンチ肉へ)
などが挙げられる。

小売現場では

1.競争の激化

店舗数が多すぎる中で、生き残りへの対応を迫られている。大きくはディスカウント系と付加価値系に分かれ、中途半端な企業は苦戦している。合併なども増えている。

2.消費動向への対応

食卓への食肉メニュー出現頻度を上げること以外に消費拡大はあり得ない。消費の変化で取り上げた内容を踏まえ、「料理メニューの変化」の売場での提案が必要となる。そのためにも、小売現場で働く人間が料理を学ばなければならない。

3.安全・安心への対応

多くの食肉にかかわる問題が噴出し(違法行為も含め)、食肉の安全問題、食肉業界の体質の問題が、広く消費者に知られるようになった。消費者対応が、商売の基本であり、食肉原料そのものへも、もう一度目を向ける必要がある。
単なるブランド化、良く見せるだけの表現、商品化の前に、生産と小売の連動、あらゆる場合における情報の開示が必要となっている。
牛肉トレーサビリティ法の施行により、業界は多くの負担をかかえたが、小売現場の日々の対応はおおむね順調に行っている。法施行の発端が何であれ、正直者でないと消費者はついてこないという意識付けと理解し、付加価値と勘違いしない方向に進みたい。

4.逆風の中での売場対応

食肉はこれからも各種の問題が出現すると見られる。魚ほどではないにしても相場の変化はある。この1年、特に牛肉の相場が高い。最初は購入の単価が上がり、売上高は大きくは減少はしなかった。しかし徐々に購入頻度、購入量が減少し、売り上げに影響をおよぼし始めた。
牛肉の売り上げ減少につれ、豚肉強化が功を奏し、食肉全体としては売上を維持した。
動物性タンパクを摂取するためにお客様は何を選択するか。お客様の食卓に載せていただくために、何を提供するか。小売は変幻自在に商売の仕方を変えられる。
大切なことはお客様がその小売店のファンであるか、その店の食肉のファンであるか、である。


けみ のぶひで

プロフィール

株式会社マオ・インターナショナル 代表取締役
1953年 岐阜県 生まれ。1977年 京都大学卒業後、株式会社ダイエー 入社。
1990年 株式会社マオ・インターナショナル(小売精肉部門総合コンサルティング)設立。
(主要著書)
 精肉部門運営マニュアル(日本セルフサービス協会)
 精肉売物の教科書(商業界)


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