◎地域便り


北海道 ●「資源循環型肉牛生産シンポジウム」開催される

北海道/宮崎 元


 北海道環境リサイクル肉牛協議会(会長:帯広畜産大学 左教授。活動内容:未利用資源を肉牛生産に生かすための飼料開発、研究および農家での給与)が主催する「資源循環型肉牛生産シンポジウム」が、11月5日にホテルノースランド帯広で開催され、生産者、飼料会社、流通関係者および学生などが約130名参加した。そこで、ジャガイモデンプンかすなどの未利用資源を活用した肉牛生産についての意見交換が行われた。

 基調講演は日本大学の阿部教授で、国内の未利用有機資源の利用は、家畜生産のコストや環境負荷の低減、飼料自給率の向上という視点で進める必要がある。未利用資源の利用を広げるためには、まずその資源の情報を集め、素材としての特徴を見極め、素材の加工や保存、給与体制をどうするかを考えないとならない。さらに、一人で取り組むのではなく、地域の異業種とのネットワーク「地域産業コンプレックス(複合体)」を構築することが必要であるとの内容であった。

 事例発表としては、ジャガイモの皮や切れ端を使用した発酵飼料(イモ皮サイレージ)の給与試験では、通常の濃厚飼料の20%を代替えの場合は日増体量に差が無く、肉質は同等かやや優れ、飼料費も安価であった。また、ジャガイモデンプンかすの給与試験では、フスマと乳酸生成糸状菌から作ったこうじで発酵させた飼料(ポテトパルプサイレージ)は発酵品質が優れ、牛の嗜好性も良く、育成期で30%、肥育期で25%の代替えが可能であるとの報告がされた。

 パネルディスカッションでは、イモ皮サイレージを給与している生産者からは人間が食べられない飼料を肉牛に給与し肉を生産するのが肉牛生産の基本である。その生産者の肉を調理するシェフからは、牛肉には生産物の安全性、地域性および生産をする背景が必要であり、客に説明すると感激してもらっている。流通関係者からは誰が生産し流通させたのか(トレース)、飼料の安全性および動物福祉の観点が必要である。また、消費者からは食の安全性が最大の関心事であるといった意見が出された。また、会場との意見交換では、資源循環の観点から、未活用資源を利用した肉牛生産が必要であり、それを消費者も理解して欲しい。また、高級牛肉とはならないが、健康・ヘルシー牛肉として食べる意義と楽しみ(スローフード)を持ち合わせている。また、飼料の利用性が品種により異なることから特性を理解し、戦略を立て未利用資源を有効に活用していくことが必要ではないかとの意見が出された。

 協議会としては、今後も資源循環のシンポジウムを開催したいと考えている。

 
日本大学阿部教授の基調講演
生産者・流通関係者などによるパネルディスカッション

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