◎地域便り


徳島県 ●新しい加工食品開発でムネ肉の消費拡大をねらう

徳島県/笠原 猛


 見た目は,ちょっと色白な鰹節?でも、食べると鶏肉の風味がする・・・そんな食材について紹介する。

 鶏のムネ肉とモモ肉、皆さんがどちらを好きかは不明である。しかし、一般的な話として,欧米諸国ではムネ肉が、日本では逆にモモ肉が好まれる。

 一方、現在のブロイラーは、一昔前よりもムネ肉が大きい傾向にあり、1羽からのムネ肉とモモ肉の産出割合が、おおむね同等になりつつある。ところが、日本では、ムネ肉の需要がモモ肉と比べて低いので、両部位がバランス良く販売・消費されない。本県は全国有数のブロイラー産地であるが、県内の養鶏業界もムネ肉の消費拡大に頭を悩ませている。

 ところで、ムネ肉は、各種成分が魚肉と似ており、魚と同様な加工も可能と考えられる。徳島県立農林水産総合技術センター畜産研究所では、何とかムネ肉の消費を拡大できないものかと思案し、試行錯誤した結果、ちょっと変わった新しい加工品を開発した。

 
 
材料は魚でなく鶏のムネ肉です!
 

 写真は、鰹節のように見えるが、実はこれ、鶏のムネ肉を用いた削り節なのである!製法は,簡単に説明すると、塩漬・加熱・乾燥・切削の工程で構成される。ちなみに、本品の特徴は次の通り。

(1) 旨味成分(特にイノシン酸)が多い。

(2) お湯に放せば、上品で濁りの少ない鶏肉スープが得られる。

(3) 市販のチキンスープの素と比べて、塩分が少ない。

(4) ヒスタミン(アレルギー様食中毒に関与)が少ない。

(5) 和風・洋風・中華風など様々な料理に利用できる(本品を使った新しいメニューづくりも期待できる)。特に、本県特産のスダチや魚料理に良く合う。

 いずれにしても、本品開発の最も大きな意義は、需要が低いムネ肉を有効利用できるところにある。なお、この削り節は、製造方法が今年度に特許登録され、更に県内業者による商品化も進められている。商品化の際には、これまでのムネ肉加工品に見られなかったような、新たな分野への販売展開も期待できる。


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