★ 機構から


畜産・野菜についての消費者代表との現地意見交換会

総括調整役 平野 昭



1 開催の趣旨

 当機構の消費者への情報提供業務の一環として、畜産・野菜の実情について理解を深めていただくため、この度、地元関係機関や団体の協力を得て、消費者代表の方々に、栃木県高根沢町の畜産のふん尿処理、たい肥化などによる循環型農業生産への取り組み(いわゆる「耕畜連携」)の現場を視察していただきましたので、その概要を報告します。

2 日時・訪問先

(1)日時

  平成16年11月25日(木)

(2)訪問先

 (1)元気あっぷむら(農産物直売所)
  (栃木県高根沢町上柏崎588−1)

 (2)高根沢町土づくりセンター
  (栃木県高根沢町大字平田1525番地1)

 (3)宮内庁御料牧場
  (栃木県高根沢町上高根沢6020)

3 参加者

 ご参加いただいた消費者代表の方々は、下記のとおりです。

 主婦連合会 参与   和田 正江
       常任委員     大熊 禮子

 全国消費者団体連絡会  

        事務局    有田 芳子
                  高野 ひろみ

 消費科学連合会 

        副会長    山賀 真須美
      企画委員     鈴木 美根子

 日本生活協同組合連合会

           理事   阿南 久

 川崎市地域女性連絡協議会

           理事   岩本 孝子
                  中西 富貴子

                           (順不同。敬称略)

4 元気あっぷむら (農産物直売所)

(1)直売所の概要

 
 
店頭に並ぶ高根沢産の野菜


 高根沢町、塩野谷農協などが出資する第3セクター「元気あっぷ公社」が平成9年5月に元気あっぷむら内に農産物直売所を開設し、現在、農協、生産者代表からなる運営協議会が運営に当たっています。取扱品目は全て高根沢産のトマト、しいたけ、白菜、ネギ、キャベツなどの野菜、梨、ぶどう、いちごなどの果実、花、米、みそなど、全体で約80品目を販売しています。

 現在、農協の組合員で高根沢町内に農地を有する300名弱の生産者が出荷者として登録され、出荷者は高根沢町土づくりセンターで生産されるたい肥「たんたんくん」の施用と栽培履歴の記帳が義務付けられています。生産者の顔写真を商品に添える品目など、生産者と消費者との顔の見える関係の強化に努めています。

 15年度の直売所の売上は2億3,000万円に達しており、隣接する宇都宮市や県外では茨城(水戸)方面からの来客が多く、販売額は年々増加傾向にあります。


(2)意見交換の概要

 元気あっぷむら本館の会議室で、直売所の販売状況などについて参加者による意見交換を行いました。

 消費者代表からは、直売所の売上動向、販売品目、どのような人が買いに来るのか、野菜など販売品目の表示、市場出荷との違いなどについて質問が多くあり、高根沢町や栃木県などから説明がありました。栃木県からは出荷する農家に対する県の普及指導、栃木県の農産物の農薬使用基準や認証・表示制度(認証マーク「リンク・ティ」)などについても説明がありました。

5 高根沢町土づくりセンター

(1)土づくりセンターの概要

 家庭で排出する生ごみを分別回収してリサイクルすることで焼却施設への搬入量を減らすとともに、畜産農家周辺の環境対策と高品質たい肥を製造するため、家畜ふん尿と生ごみ、水分調整剤のもみ殻を混ぜ合わせた有機質肥料「たんたんくん」を製造する土づくりセンターを高根沢町が農林水産省と環境省(当時環境庁)の補助を受けて設置され平成12年度から稼動しています。

 現在、高根沢町は管理運営を塩野谷農協に委託して年間約1,800トン(実績)の有機質肥料を生産しており、バラ製品(4,000円/トン)、袋詰製品(350円/10キログラム)として高根沢町内限定で販売しています。生産されたたい肥は全量販売され、稲作や園芸用の土づくりに効果をあげています。

(2)意見交換の概要

 
  土づくりセンターで説明を熱心に聞く参加者


 土づくりセンターのたい肥発酵施設の内部を高根沢町の担当者に案内いただいた後、土づくりセンターで意見交換を行いました。

 施設の視察の際に消費者代表からは、たい肥の製造工程や、生ごみに混入してセンターに持ち込まれる金属などの異物とその除去などに質問がありました。

 また、意見交換では、ふん尿と生ごみにもみ殻を入れる効果(発酵促進剤などの薬剤は使わず、もみ殻の空気の層により発酵促進)、発酵菌の種類(在来菌を使用)、農地へのたい肥投入の効果(有機肥料による地力増進)、たい肥の用途(園芸用と稲作用で半々)などについても質問がありました。

 土づくりセンターの採算性についても質問があり、光熱費、修理費、人件費などの支出に対したい肥販売などの収入だけでは赤字であるが、生ごみを別途処理した場合の処理経費を考慮に入れて収支がほぼ釣り合っているとの説明がありました。

 土づくりセンターは、家庭の生ごみと家畜ふん尿などからたい肥をつくり、農地に還元されたたい肥から生産された農産物が元気あっぷむら直売所などで販売されるという、町全体での「循環型農業」、「地産地消」における取り組みの象徴的な施設にもなっています。

6 意見交換会

 
  活発な意見交換がされた(御料牧場)


 宮内庁御料牧場内会議室で、畜産のふん尿処理、たい肥化などについて意見交換を行いました。

 はじめに栃木県農務部畜産振興課 山口幸志課長から県の畜産のふん尿処理、たい肥化の現状と方向について説明していただき、次に、御料牧場 石原哲雄場長から牧場の概要について説明していただきました。

 意見交換の概要は以下のとおりです。

(1) 御料牧場でのBSE対策はどのように行われているのか。

⇒牧場で飼養している乳牛およびめん羊(スクレーピーというBSEと同様の疾病がある)用に購入する配合飼料については、原材料の確認および厳重な保管を行っているほか、羊肉は、検体を所定の検査機関に送付し、合格したもの(スクレーピー陰性)を御料品としてお届けしている。

(2) たい肥の利用促進を図るにはどうすればいいのか。耕種農家などにとってはたい肥は使いにくいのだろうか。

⇒これまではふん尿の管理が不適切な畜産農家もありましたが、関係法律の施行により現在は許されないので、畜産農家は良いたい肥を作って耕種農家などに使ってもらうことが大事である。

(3) 耕畜連携を進めるための支援体制はどうなっているのか。

⇒たい肥を作る施設は基本的には農家自ら対応するべき。しかし、たい肥を作るには費用がかかるので、農林水産省の補助事業や独立行政法人農畜産業振興機構の補助金付きリース事業を活用して施設整備を行っている。

 栃木県のたい肥舎などの施設の80%以上がこれによって整備された。残りは簡易対応だが、この方式では良いたい肥が作れないので、今後も順次たい肥舎などの施設を整備する。

(4) 稲わらを飼料として使うのは当然と考えるか。あるところで、田にすき込んでしまう話を聞いたが、そのような傾向はあるのか。

⇒稲作農家はコンバインで刈り取りするので、結果的に田にすき込まれる。畜産農家が良い肉牛を作るために稲わら飼料がほしいとの意思を明確にして、稲作農家の稲わらと交換してたい肥を供給する道を作る必要がある。県としてもこれを推進しているが、外国産の稲わらが安く入ってくるので厳しい状況ではある。

(5) 高根沢町ではたい肥のリサイクルなどに自覚を持ち、積極的に取り組んでいると思われるが、土づくりセンターのたい肥化事業の採算割れが永遠に続くのか。

⇒たい肥の販売価格を値上げするという選択肢もあるが、家庭から出る生ゴミの処理も兼ねてたい肥を作る代わりに町からの援助を受ける、との基本的なルールに基づき事業を継続することになる。今後、老朽化などにより現施設の稼働ができなくなった時点で最良の方法を選択することになろう。

 本意見交換会の実施に当たり、宮内庁御料牧場、栃木県農務部畜産振興課、塩谷農業振興事務所経営普及部、高根沢町産業振興課、全農栃木県本部畜産部、同園芸部、塩野谷農業協同組合高根沢地区営農生活センターには訪問先の案内、説明などご協力をいただきました。また、財団法人畜産環境整備機構からも参加していただき、たい肥について有意義なアドバイスをいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

※「畜産・野菜についての消費者代表との現地意見交換会」についての詳細は、機構のホームページ(http://www.alic.go.jp)に掲載している。


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