◎地域便り


福島県 ●「待ったなし、豚のふん尿処理・利用対策」について

独立行政法人 家畜改良センター/岡部 昌博


 
  「待ったなし、豚のふん尿処理・利用対策」をテーマに専門家から農家まで約200名がシンポジウムに参加した。


 平成16年10月21日、(独)家畜改良センター本所において、第82回日本養豚学会大会公開シンポジウムが開催された。今回のテーマは、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の完全施行(これまで猶予されてきた施設の構造に関する基準などが施行される)を目前の平成16年11月1日に控えていることから、「待ったなし、豚のふん尿処理・利用対策」とされた。約200名の産学官の関係者や養豚農家が参加し、家畜ふん尿処理に関する最近の情報の提供と今後の対応について意見交換が行われた。

 シンポジウムでは、先ず講演として、農林水産省畜産企画課松田正勝氏及び(独)農業・生物系特定産業技術研究機構(以下「生研センター」)畜産草地研究所市戸万丈氏から、最近の家畜ふん尿処理に関する課題と今後の対応方向について説明があった。また、生研センター九州沖縄農業研究センター薬師堂謙一氏から、現場から見たたい肥の利用促進のための技術とコスト問題について詳しい解説があった。

 次に、パネルディスカッションとして、生研センター畜産草地研究所羽賀清典氏と畜産汚水処理施設業者3社との間で、汚水処理施設の性能を高度に安定させるための手段、アフターケアやフォローアップの手法などについて意見交換があった。

 さらに、技術紹介として、(有)鹿熊種豚場鹿熊修氏から、設備費用が少ないこと、尿が敷き料に吸着されるため汚水処理施設が不要となることなどの長所を有し、小規模養豚農家向きと見られている発酵床について技術面・コスト面からの解説があり、(財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所古谷修氏から、リンゴジュース粕などを飼料に添加することによる尿中窒素の低減技術、堆肥の熟度判定機など最近開発された技術について解説があった。

 最後の総合討論では、参加者と講演者との間で予算制度、技術的知見などについて幅広い質疑応答が行われたほか、「以前は家畜排せつ物を減らす研究が多く行われていたが、最近では少ないようだ。大学では実施困難な研究であり、国などの研究機関で積極的に取り組んで欲しい。」との要望も出された。

 今回のシンポジウムを通じて、多くの関係者間で貴重な情報・意見の交換が行われたようであり、これを機に今後の家畜ふん尿対策が適切かつ迅速に展開されることを期待したい。


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