◎地域便り


岡山県 ●モー大丈夫!和牛バンクの取り組み

岡山県/内田 啓一


1 はじめに

 岡山県内では近年、飼養管理の省力化や飼料自給率向上を図る目的で、遊休農地への和牛放牧が増え始めている。これまで、県内における和牛放牧は、脱柵や環境問題、あるいは放牧実施後の現状復帰などへの懸念から遊休農地所有者の理解が得られにくく、普及が進まなかった。

2 事業の概要及び実施状況

 県では、遊休農地の解消と飼料自給率の向上を図るため、本年度から「モー大丈夫!放牧でいきいき遊休農地活用事業」(以下、「モー大丈夫!」事業)をスタートした。

 事業実施にあたっては、市町村を事業主体として位置付け、自治体が遊休農地の把握、放牧牛の確保、または放牧後の現状復帰の取り決めなどについてコーディネートすることで、農地所有者と和牛所有者双方が安心して実施できる仕組みとした。

 また、和牛がいない地域でも容易に放牧に取り組める体制を整備することとし、貸与可能な放牧経験牛の登録(放牧牛バンク)、放牧指導者(放牧インストラクター)の登録も行った。

 遊休農地を活用した和牛放牧は、当事業により新たに7市町村(約10ha)で実施された。

 事業を実施した地区では、省力的に保全管理が可能となり、加えて脱柵、悪臭などの問題もなかったことから、周辺住民の放牧に対する理解が深まった。

3 放牧推進に向けた取り組み

 「モー大丈夫!」事業を実施する一方で、和牛放牧への理解を広めてもらおうと、県の試験機関である岡山県総合畜産センターが中心となって「放牧実証展示(以下、実証)」を行った。実証を希望した市町村に対して、放牧牛及び電気牧柵を無償で貸し出し、牧柵の設置から和牛の飼養管理方法まで指導するもので、これまでに6箇所で実施した。予想外の保全管理効果に反響が大きく、来年度は是非事業に取り組みたいという感想を多くいただいた。

 来年度は、「モー大丈夫!」事業の特徴のひとつである放牧牛バンク及び放牧インストラクター制度をさらに有効に活用して、県下一円での放牧普及につとめていきたいと考えている。

おいしそうに草をむ(美作町)
和牛への理解が広まった放牧実証展示(吉備中央町)

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