◎地域便り


静岡県 ●安全でおいしい静岡型銘柄豚の開発

静岡農政事務所/神谷 康仁


 静岡県中小家畜試験場(菊川市、辻岡孝場長)は、欧米種とは異なった中国原産種である金華豚のDNAを解析し、優れた肉質特性に関する遺伝子領域を解明した。また、静岡県系統造成豚「フジヨーク」のミトコンドリアDNAと雄系種豚の核のDNAを用い、三元交雑種のDNA鑑定法を開発した。

 一方、同試験場では平成12年に行われた「銘柄ポークコンテスト」で日本一になった「ふじのくに」を開発しているが、これらの研究成果を基に、多様化する消費者ニーズに対し銘柄豚肉であることを科学的に証明できる、次世代銘柄豚の開発を目指している。

 次世代銘柄豚のDNA鑑定には、三元交雑に用いられた種豚が静岡県系統豚「フジヨーク」「フジロック」であることを証明しなければならない。同試験場では、F1母豚作出に利用する「フジヨーク」を他の豚と判別するため母系遺伝するミトコンドリアDNAに注目し、他の大ヨークシャー種と比較して特異的な塩基配列部分の存在を明らかにした。一方、雄系とするデュロック種系統豚「フジロック」は特徴的なDNA配列を検出するのは至難のため、中国原産の金華豚と交配することにより、特異な黒い毛色遺伝子を持ち、優れた肉質特性を導入した種雄豚を開発している。

 新たな種雄豚の開発は、金華豚と「フジロック」の交雑家系を作出し、戻し交配によりDNAマーカーで金華豚由来の資質を組み込むことにより、両品種の長所を合わせ持つ合成豚の開発を進めている。

 すでに戻し交配第2世代まで誕生しており、中途世代豚の試験販売では、若干高目の価格設定にもかかわらず、多くの人が再び購入したいと回答し高級食材として受け入れられている。

 同試験場では、新たな種雄豚を平成18年度、次世代銘柄豚を平成20年度までに完成を目指すとともに、簡単にDNAが判別できるDNAチップの開発も目指している。

 また、同試験場の研究者たちは「次世代銘柄豚は、黒豚やTOKYO−Xなどの銘柄豚と対抗できる付加価値の高い商品、広域流通を目指す」としている。

仕組み図

開発中の戻し交配第2世代

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