◎地域便り


兵庫県 ●防水シートを用いた低コスト簡易たい肥処理施設

兵庫県/安井 淳雅


 兵庫県では、昨年11月に施行された家畜排せつ物法に対応するためにたい肥舎などの施設が設置出来ない農家を対象に、平成16年度事業で簡易処理施設の実証展示を行った。

 兵庫県加古川市で34頭の乳用牛を飼育する花房享一郎さん(44)は周囲を住宅に囲まれてたい肥舎などの施設を作れずにいたが、家畜排せつ物法への対応もあり昨年7月に県の事業を導入して簡易処理施設を設置した。

 設置面積は400平方メートル。簡易施設に用いた資材は下敷きの防水シートと上掛けの通気性のある不透水性シート、土壌固化剤で、設置は以下の手順で行った。(1)地面全体の表土を約20センチの深さで取り除く。その際、表土と土壌固化剤を良く混ぜておく。(2)表土を除いたところに防水シートを敷く。(2)取り除いた土を元に戻しローラーで踏み固める。工事は近隣の酪農家や関係者15名に手伝ってもらい作業は1日で完了した。

 設置コストは下敷きシート、上掛けシート、土壌固化剤の資材費とローラーの借り賃のみで456千円と低コストで済ませることができた。シートの設置だけでも済ませることができるが、耐久性、機械での作業性を考えて地盤を固める処置が必要だと考えて固化剤の使用を決めた。

 ふんのたい肥化は、固液分離したふんにモミガラを混ぜて水分を70パーセント程度に調整した後、約1.5メートルの高さにたい積し、上掛けシートを掛けて行う。たい積したふんは、すぐに発酵が始まり最初の1週間で温度が周辺部で73℃、内部で60℃程度まで上昇しその後緩やかに低下した。途中1、2回の切り返しを行い3カ月ほどすると、中熟程度のたい肥ができあがり、試験場での分析結果は水分57パーセント、N3.5パーセント、P2.3パーセント、K4.8パーセントであった。

 たい肥は一部が園芸農家に引き取られ、残りの大部分は花房さんが代表を務める加古川市土づくり組合が市内の集落営農組合と連携して水田に散布する。ちなみに、土づくり組合は4戸の酪農家で組織され、平成16年は43ヘクタールの面積にたい肥を散布している。

 以前は野積みに近い状態で見た目も悪かったが、簡易たい肥施設を設置してからは機械作業が容易になって管理も行き届くようになり品質も向上している。

 花房さんは「本格的なたい肥舎を作る余裕はないけれど、これで安心して経営を続けられる」と話している。

 
固液分離したふんをモミガラと
混ぜてたい積
通気性のある防水シートをかぶせて発酵を
進める

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