★ 機構から


沖縄の銘柄豚とさとうきびとの
耕畜連携の取り組み

調査情報部 調査情報第一課長  藤野 哲也
                              高島 宏子
                 那覇事務所長 仁科 俊一 


1 はじめに
−沖縄が今注目されている

 沖縄県は近年、テレビ番組などで取り上げられていることもあり、全国的にその沖縄民謡をはじめとする伝統文化や食文化などへの関心が高まっている。

 また、沖縄県といえば長寿の県としても有名であり、平成7年には「世界長寿地域宣言」を行っている。その長寿の要因としては、温暖な気候、動物性たんぱく質と野菜・海藻などバランスのとれた食生活やゆったりした生活リズムなどが挙げられている。

 しかし、厚生労働省が5年ごとに発表する平成12年都道府県別生命表によると、平均寿命は女性が86.01歳と依然として全国第一位を保ったものの、男性は77.64歳と前回(平成7年調査)の4位から26位へと後退した。沖縄県ではこれを「26ショック」として受け止め、これまで沖縄県の長寿を支えていた伝統的食生活を大切にする高齢層に対して食生活の欧米化が進んだ中年層以下の世代とのギャップが大きいことをこの要因としている。

 このような中、沖縄県では「健康おきなわ2010」として健康づくり運動を実施しているが、沖縄においてバランスの取れた食生活に欠かせない伝統食材の一つである豚肉のブランド化にも取り組んでいる。今回は沖縄県におけるブランド豚肉の動きなどについて報告したい。


2 沖縄県における養豚の概況
−豚肉は沖縄の伝統食材 

 沖縄県の平成16年の農業産出額は前年比3.3%減の900億円となった。作物別にみると基幹作物のさとうきびは台風などの影響で大幅に減少したため、肉用牛が第一位の151億円(全体に占めるシェア16.8%)、次いでさとうきびの137億円(同15.2%)、豚肉の131億円(同14.6%)、きくの100億円(同11.1%)と続いている。豚肉はこのように品目別では第3位で、重要な品目の一つとして位置付けられている(図1)。

図1 農業産出額(品目別シェア)
 しかしながら、豚の飼養戸数、飼養頭数ともに減少傾向で推移しており、平成16年の農家戸数は373戸、うち繁殖農家270戸である。総飼養頭数は269,900頭、うち子取り雌豚頭数27,000頭で、1戸当たりの子取り雌豚頭数100頭(全国平均118頭)と比較的小規模の専業の経営が多い(図2)。

図2 沖縄県の豚の飼養戸数、頭数の推移
 戸数、頭数の減少要因として、経営者の高齢化、担い手不足に加え、16年11月に完全施行された家畜排せつ物法への対応などの環境問題が挙げられている。

 また、市町村によっては臭いの問題などから新規養豚場の建設を凍結する地域も出ており、規模拡大も厳しい状況となり、一部離農施設を活用した預託などの取り組みが行われているものの、減少傾向に歯止めがかからない厳しい状況が続いている。

 一方、沖縄県では、肉といえば豚肉を指すほど豚をよく食べる。豚肉は歴史に根ざした食文化として、「ラフティ」(豚バラ肉の角煮)、「足てびち(豚足)」、「ミミガー(豚の耳)」、「豚の中身汁(豚の内臓の吸い物)」の料理が有名でよく食べられており、豚で食べないのは鳴き声だけといわれている。

 総務省の家計調査によると、那覇市一世帯当たりの年間の豚肉消費量は、平成14年が18,476グラムで全国第8位、15年が18,476グラム、同6位、16年が19,645グラム、同7位と常に上位を占めている。(表1)

表1 豚肉の1世帯当りの家計消費量

 総務省「家計調査報告」 

 また、購入単価は常に安価のトップクラスとなっており、安くておいしい豚肉の買えるところでもある。

 豚肉の流通概要をみると、出荷頭数のうち、県外と畜およびと畜後の県外出荷を合わせて約5割が県外に出荷されている。一般的に、県内であまり利用されないロースやももが県外に出荷される一方、県内で消費量の多いバラや内臓、豚足などが県外から移入されている。

 沖縄県では「ラフティ」に代表されるように煮込み料理が多いため、バラの脂肪の厚さや脂肪のうまみを重視するとともに、内臓のきれいな豚=内臓の健康な豚の生産を志向した高付加価値型の豚肉生産をするブランド化の動きが出ている。


3 琉球在来豚「アグー」を取り入れたブランド化の動き

(1)アグーとは

 琉球在来豚「アグー」は今から600年前に中国大陸から導入され、沖縄で飼い続けられた豚が「島豚」と呼ばれ、広まったものがそのルーツとされている。

 粗食に耐え、肉質に優れるが、その一方で産子数が少なく飼料効率が悪い、成長が遅いという欠点もあったため、明治後期にバークシャーによる改良が行われ雑種豚となっていった。


全身が黒色で背が大きく凹み、しっぽが垂れている
アグーの種豚(我那覇畜産)

(2)アグー受難の時期

 アグーは第二次世界大戦の戦災や戦後に産肉性や産子数に優れた西洋種が持ち込まれたことにより、その数を急速に減らしていった。

 昭和56年に保存活動のため名護市立博物館によるアグーの全県的な調査が行われた。集められたわずか18頭のアグーが沖縄県立北部農林高等学校において戻し交配され、種を固定しつつ、現在では約150頭にまで増加した(詳細は「畜産の情報」(国内編)2004年10月号地域便り「琉球在来豚の繁殖と利用〜付加価値のある「ブランド豚」を目指して」沖縄県立北部農林高等学校教諭 東江直樹氏参照)。しかし、近親交配がかなり進んでいることから、発情が弱く、繁殖障害、高い奇形率や少ない産子数などのため簡単に増頭できる状況ではない。

 アグーの特徴としては、(1)全身が黒色、(2)背が大きく凹み、腹が地面につきそうなほど垂れている、(3)足が短い、(4)しっぽが垂れている−などであるが成豚でも100キログラム前後と小ぶりである。

(3)ブランド豚「アグー」の確立

 アグーの肉質は霜降り肉で甘みやうま味がある一方、枝肉重量は通常の7割程度(54.2キログラム)と生産性に劣っているため、別の品種との交配による雑種強勢によりアグー豚のブランド化が図られている

 その主なものは以下のとおりである。
 なお、今のところ、アグーについては客観的な品種判別基準が存在していない。このことから、沖縄県は平成17年、「おきなわブランド豚」の生産供給体制を支援するため、アグーの仮登録やDNA鑑定を推進している。また、アグーの定義付けについて「おきなわブランド豚推進協議会」で協議しているところである。

(4)やんばる島豚の取り組み

ア 生産概要

 県養豚経営者協会の会長や琉球在来種豚アグー保存会の理事も務める有限会社我那覇畜産の我那覇明社長の大川農場は、名護市街から車で約15分の山間にある。農場の入口は花に囲まれ、その前庭には小川が流れている。

 また、夫人が手がけたオリジナルの豚の置物やグッズもあり、従業員が気持ちよく、しかも穏やかな気持ちで豚に接することができるようにという配慮が施されている。豚に優しく接することをモットーに、従業員が夫婦げんかをしている場合は出勤を拒否するというほどの徹底ぶりである。

花に囲まれ小川が流れる農場の入口
 我那覇畜産では現在、アグーの雄8頭、雌7頭を純粋種に位置付けている。

 アグーは、濃厚飼料を与えすぎると太りすぎるため、ふすまを多めに給与しているという。アグーの純粋豚は枝肉重量で60キログラム程度にしかならないため、このアグーを種豚とした交雑種をブランド豚として生産している。「やんばる島豚」はデュロック×バークシャー×アグーの三元交雑となっている。このほかのブランドとしては、「琉美豚」がLWD((ランドレース×大ヨークシャー)×デュロック)およびLWB((ランドレース×大ヨークシャー)×バークシャー)の三元交雑である。

 アグーを利用した「やんばる島豚」のやんばるとは、沖縄の方言で「山原」の意味で、沖縄本島の北部を指している。産子数についてもバークシャー×アグーで4〜5頭、デュロック×アグーが10頭程度ということである。出荷月齢は、ともに8〜9カ月で、枝肉重量は「やんばる島豚」で80〜85キログラム、「琉美豚」で85〜90キログラムとなっている。やんばる島豚用の母豚は80頭で、出荷頭数は、月平均120〜130頭、年間では1,400頭ということであった。

 給与飼料は大麦主体に、小麦、ヨモギ、海藻、きなこ、ニンニクなどで、抗生物質を極力使わない養豚を目指している。また、えさのカビ毒素の吸着のため与那国産の珊瑚などを利用するなど新しい試みにも積極的に取り組んでいる。販売先は琉球ジャスコや我那覇明社長の弟さんが経営する「フレッシュミートがなは」などで販売しているが、やんばる島豚は、このようにアグーを利用することから生産性が決して高くないため、現在は、新規販売先への要望になかなか応えられないのが現状であるという。

 アグーは、低コレステロールでうま味成分のグルタミン酸が多く含まれており、臭みがなく、あくが出ないということが特徴として挙げられている。やんばる島豚は琉球ジャスコ店で、一般の豚肉と比較してバラが1.5倍、ロースが1.2倍程度の価格で販売されていた。このように手間をかけているにもかかわらず、それほどの高値となっていないことも、消費者に支持されている要因の一つと考えられる。

脂肪に甘みのある「やんばる島豚」しゃぶしゃぶ用肉

イ 消費者との交流

 沖縄県では特に内臓を食べる機会が多いため、より安全な豚肉を生産、提供し、自ら作った豚肉を多くの人に食べて欲しいという思いは、豚肉だけでなく、加工品の製造販売にまで広がっている。当初は加工については、製造委託という形でスタートしたが、現在では「フレッシュミートがなは」で加工品も手がけ、ハム、ソーセージなど新しい商品開発には、夫人が先頭に立っている。夫人はいろいろな種類のソーセージなどの加工品のアイデアを次々と打ち出し、「より多くの人に豚肉を食べてもらいたい、口に入れて味わってもらえば解る」と大手スーパーや物産展などでは自らマネキンに立って、消費者との対話を大事にしている。

 また、オガコ豚舎から出る家畜ふん尿は、完熟たい肥として一部を名護市内の小中学校の花壇に無償で運搬・施肥している。オガコは県内のみならず福岡県からも購入しているという。

我那覇畜産 代表取締役 我那覇明さんご夫妻
 加えて、地産地消、食育、農業とのふれあい活動にも貢献している。現在、母豚500頭規模の新規農場の建設を計画しているというが、この豚舎には窓を作って子供たちや消費者が外から見学できるようにしたいということであった。

 なお、我那覇畜産における家畜ふん尿を利用したたい肥は、小中学校への無料配布のほか、耕種農家からの要望が多く、たい肥が足りない状況となっているという。土壌改良材を入れたものをトン当たり8,000円で販売しているが、特に野菜農家には好評で1カ月待ちの状態であるとのこと。このため、宣伝は一切していないという。


4 沖縄におけるたい肥つくり

(1)家畜ふん尿とバガスの出会い

 沖縄県の主な土壌の種類は、分布面積順に国頭マージ、島尻マージ、ジャーガルとなっている。国頭マージは赤色から黄色の粘質土壌で有機物に乏しく、島尻マージは暗褐色の中性から弱アルカリ性の石灰岩土壌で保水力が乏しい。また、ジャーガルは灰色を呈するアルカリ性の重粘性土壌である。特に国頭マージや島尻マージではその土壌の性格から家畜ふん尿を利用したたい肥や緑肥などの有機物の持続的な投入による土づくり、すなわち耕種部門と畜産部門の連携を促進による土壌改良を進めていくことが重要な課題となっている。

 沖縄県では、家畜ふん尿のたい肥化のための水分調整資材となるオガコの安定確保が難しく、不足分を他県から購入しているため、たい肥の高コスト化を招き、結果的に他県からのたい肥が利用されている状況にあったという。

 このため、県内において生産される木くず、街路樹の剪定枝、バガスなどの副資材の活用を推進する必要があり、補助事業を活用したオガコの加工施設の整備などが進められた。

 一方、バガスは基幹作物であるさとうきびから製糖する際に、原料を砕断して圧搾機にかけ、糖汁を搾り取った繊維状の残さであり、原料の約28%を占めている。

 沖縄県のバガスの平成16/17年度の産出量は18万8千トンで、その発生量の約9割が製糖工場の燃料用として使用されており、たい肥への利用は6.8%となっている(図3)。

図3 沖縄県におけるバガスの利用状況
 しかしながら、甘しゃ糖製造合理化事業といった当機構補助事業を利用したボイラー機能の改善などによる省エネ化により、バガスの燃料効率が改善され、結果としてバガスの発生量の拡大が予想されている。このような中、バイオマスとしてのバガスを利用したプラスティック、紙、飼料化などの各種研究開発が進められている。また、糖汁を清浄・ろ過した際に残る固形物であるフィルターケーキの平成16/17年度の産出量は、3万9千トンでこちらはほとんどすべてがたい肥としてさとうきび農地に還元されている。

 このように、島の土壌改良のために家畜ふん尿とバガスの有効活用が求められているが、これに加えて、産業廃棄物である排水汚泥などと組み合わせた有機肥料を製造している取り組みを以下に紹介する。

(2)株式会社沖縄有機の取り組み

ア バガス由来のたい肥

 株式会社沖縄有機(うるま市石川 伊波哲治社長、以下「沖縄有機」)は、県内の産業廃棄物である排水汚泥、市街地からの生ゴミ、製糖工場から排出されるバガス、米ぬか、ビールかす、泡盛蒸留かす、おからに加えて、牛、豚の家畜排せつ物を利用し種々の有機肥料を生産している会社である。「すべては土に還る」をモットーにした沖縄県の循環型社会の要となる企業の一つである。

 沖縄有機では、同市内の球陽製糖株式会社(以下「球陽製糖」)から発生するバガスと下水汚泥発酵肥料を組み合わせてバガス肥料を製造している。

 球陽製糖株式会社は自社の製糖工場から出てくるバガスを沖縄有機に販売し、このバガス肥料の一部を買い上げ、さとうきび農家に限定し、土壌改良材として低価格で供給している。これは、家畜ふん尿を利用したたい肥が果樹や野菜農家などからの要望が高いため、さとうきび畑の土壌改良に優先的に配分するためのもので、球陽製糖(旧沖縄県経済連製糖工場)が平成2年から実施しているものである。

 具体的には、沖縄県那覇浄化センターや宜野湾浄化センターなどからの脱水ケーキとして搬入された汚泥などを発酵、水分調整した汚泥発酵肥料9千トンと製糖工場からのバガス2千トンを混合発酵して、年間1万1千トンのバガス肥料を製造する。このうち、9千トン(平成16年度)を製糖工場の増産対策としてさとうきび畑の土壌改良用の有機肥料としてさとうきび農家に提供しているものである。販売価格は散布費用込みとなっているが、施肥量にもより価格は異なるものの、運送費は球陽製糖が負担しているということであり、安価な価格体系となっている。

 なお、残りのバガス肥料は農協を経由または直売により農家などに利用されている。

球陽製糖の工場におけるサトウキビの回収作業

工場から産出されたバガス

イ 家畜ふん尿由来のたい肥

 沖縄有機では家畜ふん尿にバガス、チップ、オガコを組み合わせた、より高品質なたい肥生産も行っているが、この沖縄有機の特筆すべき取り組みが二つある。一つは有畜農家からのたい肥の回収方法である。

 原料の回収は、同社が畜産農家を回りダンプ車かユニック車で回収するが、その方法は以下の4つである。

(ア)豚ふん

 オガコを畜産農家に提供しショベルカーで豚ふんと混合、水分調整を行いたい積場に保管して(ここまでは畜産農家の作業)順次、ダンプ車で回収する。

(イ)豚ふん

 オガコを畜産農家に提供し敷料(10センチメートル程度敷き詰める)として利用してもらい水分状態にもよるが、約1カ月後に回収する。

(ウ)豚ふん

 畜舎に鉄製の容器(1立方メートルコンテナボックス)を設置し、生ふんを(オガコなどの副資材を混ぜていないふん)容器に入れてもらい、容器ごと入れ替え回収する。
この際、雨水が入らないようにフタ付きのコンテナボックスを使用する。

(エ)牛ふん

 オガコを畜産農家に提供し敷料(10〜20センチメートル程度敷き詰める)として利用し、約1カ月〜2カ月後に回収する。

養豚農家の畜舎に位置するコンテナボックス
 沖縄有機では、これらのオガコを無償で提供し、無償で回収している。この方式による参加畜産農家は27戸となっており、豚ふんが年間2,500トン(副資材を含む)、牛ふんが同1,000トン回収できる。

 平成16年11月の家畜排せつ物法の施行により有畜農家での家畜ふん尿の管理基準が厳重になり新たな施設整備や管理記録の必要を余儀なくされた高齢者やたい肥場を持たない農家にとっては大変良い仕組みであり、好都合であるといえる。これも家畜ふん尿が不足している恩恵といえるのではないか。

 また、沖縄有機では、たい肥の生産・販売のみでなく、有償で畑への施肥も行っており、耕種農家からの需要が高いという。

ウ 実証農場や食育への取り組み

 二つめの特筆事項として、沖縄有機では、3つの農場での実証展示のみならず、この土作りを通して野菜の種まき、植え付け、収穫、調理の体験学習の受け入れまで敷地内で行っている。3歳から幼稚園児を対象として、土、空気、水、太陽など作物を育てる上で自然に対する感謝と関心をもってもらおうという趣旨である。

 小さなプランターでの野菜やくだものの有機栽培は、ベランダ菜園のPRとなる一方で、親子一緒の食育体験となる場所(テーブルやテントなど)まで提供している。

 体験学習も広範囲な地域にPRするのではなく、あくまでも地元主体で行われており、地域密着型のもので、昨年は約1千人が参加した。

様々なイベントの様子を写した写真が飾られている(沖縄有機)


5 バガスの飼料利用への取り組み

 バガスの飼料化は、球陽製糖株式会社が約15年ほど前に取り組み、生産に踏み切ったが、太めの筒状形態で生産したことや糖蜜の添加によるカビの発生、発火(炭化)などの問題から飼料の生産を中止している。

 また、他の製糖工場でもバガスを蒸気で柔らかくして飼料化を行ったが、バガスの有機成分であるリグニンが分解できないことから、これも製造を中止している。

 一方、酵素などによる発酵バガスは飼料として一部商品化がされている。

 バガスは栄養価は低いものの、良質な繊維質に富み、消化器官の機能を高めるには効果があることから、農家は、ルーメン(第1胃)を丈夫にして、腹づくり、肋づくりには良いことを経験上理解している。

 このような中、有限会社沖縄ノーチクバイオ(宜野湾市 下地和成社長)では、バガスに糖蜜を混ぜることによりし好性を高め、さらに乳酸菌などを加えて発酵させることで、繊維質の消化率を向上させ、豚や肉牛用の機能性サプリメントとしての飼料化を試みており、新しいバガスの畜産への利用方法が模索されている。


おわりに

 沖縄県において豚肉はなくてはならない食材である。また、そこから出される家畜ふん尿も沖縄にとって、なくてはならない資源となっている。

 安全、安心なブランド豚肉を作るためには、生産者の情熱のみならず、消費者との交流などを通じた豚の飼養方法や豚肉の情報提供など、購入者への思いやりの心が必要である。また、消費者も畜産物、そしてその生産者に対する理解がないと難しいのではないか。顔の見える畜産物は、生産者が元気に自信をもって畜産に取り組むという姿勢がないと消費者には支持されないと思う。

 沖縄県の持つ土壌環境から有機たい肥の需要は高い。県内から排出される家畜ふん尿の量だけでは不足するという実態がある。これにさとうきびのバガスなどと合わせた有機肥料生産の連携がある。

 沖縄には「ゆい」という相互扶助の心がある。畜産物の生産、流通、消費に至るまでの「ゆい」、また、たい肥や食品残さなどを生かした資源循環としての「ゆい」が、形を代えてこの地で実践されているように感じた。

 この事例は、限られた資源、土地基盤の制約の多い沖縄ならではの事例かもしれないが、豊かな気候と人柄が生きる取り組みではないかと思う。

 現に無駄に捨てられている“ゴミ”を資源として生かせる畜産が、その地域に根ざして発展することができれば、畜産も循環型社会の一端を担える大切な産業として改めて見直されるであろう。

 最後に今回の調査に際し、沖縄県農林水産部砂川正幸畜産課長、多嘉良功主任技師、沖縄県北部食肉協業組合宮城正参事、内間安寿氏、有限会社我那覇畜産我那覇社長はじめ関係者の方々、JA沖縄伊江支店知念俊信支店長はじめ関係者の方々、株式会社沖縄有機伊波哲治社長、伊波勲氏、有限会社沖縄ノーチクバイオ下地和成社長、球陽製糖株式会社伊波榮雄社長、宮平正三管理部次長には熱心なご説明をいただき大変お世話になりました。記して皆様に感謝の意を表します。

 


元のページに戻る