◎新年のごあいさつ



新年のごあいさつ

独立行政法人 農畜産業振興機構 
理事長 木下 寛之

明けましておめでとうございます。

 私、昨年9月、山本前理事長の後任として理事長に就任いたしました木下でございます。新年のごあいさつと併せて、就任のごあいさつを申し上げます。

 当機構は、わが国農業の大宗を占める畜産、野菜、砂糖、蚕糸の振興業務を担っておりますが、新年を迎え、理事長としてその重責にあらためて、身の引き締まる思いであります。

 前理事長と同様、ご支援、ご鞭撻いただきますようお願い申し上げます。

 さて、昨年の農畜産業をめぐる情勢についてでありますが、まず、国際情勢についてみますと、世界貿易機関(WTO)のドーハ開発ラウンドは、昨年7月に交渉が一時中断されました。その後、WTO交渉の行方に影響を及ぼすとみられた米国中間選挙も11月に終了し、WTO事務局と各国により再開に向けた協議が行われている状況にあります。

 一方で、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)については、締結に向けた動きが非常に活発化しています。

 わが国も、シンガポール(平成14年11月発効)、メキシコ(平成17年4月発効)、マレーシア(平成18年7月発効)、フィリピン(平成18年9月両首脳署名)との間で協定を締結するとともに、タイ、チリ、インドネシアとの間でも同協定の締結につき大筋合意に至ったところです。また、韓国、アセアン全体、ブルネイ、GCC(湾岸協力理事会:サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、オマーン、カタールの6カ国)加盟国との交渉が行われており、ベトナム、インド、スイス、豪州との間でもFTAに向けた共同研究が進められました。

 特に、豪州とのEPAにつきましては、昨年12月に本交渉入りが両国首脳により決定されましたが、これまでのEPAとは異なり、日豪両国の生産力に相当の格差があり、国内農畜産業への影響度合いが極めて大きいこと、豪州EPAが第三国との農林水産物貿易に与える影響も十分考慮する必要があることから、国内農畜産業および関連産業関係者より今後の動向に強い懸念が示されております。わが国は、食料安全保障の確保とあわせて、多面的機能の発揮を農畜産業が持つ重要な役割とし、各国が持つそれぞれの事情を踏まえた上での多様な農業の共存の必要性を、国際交渉の場で訴えてきました。関係者よりこうした強い懸念が示されているのは、日豪EPA交渉の帰趨いかんによっては、このようなわが国の基本的な主張が崩れかねないという思いが関係者の間で共有されたからではないでしょうか。

 次に、国内の農畜産業についてでありますが、まず牛肉の需給事情についてみますと、一昨年12月に輸入を再開した北米産牛肉のうち、米国産については、せき柱を含む米国産子牛肉が発見されたことから、昨年1月に輸入手続きが停止されました。その後、現地調査の結果を踏まえ、昨年7月輸入手続の再開が決定されました。

 平成15年12月の輸入一時停止前の米国産牛肉の輸入量は、輸入牛肉の約4割を占めていましたが、輸入される牛肉などについては、20カ月齢以下由来の牛のものであることなどの条件が付されており、現在のところ輸入は限定的となっております。

 一方、北米産牛肉の輸入が停止している間、わが国の牛肉輸入量の9割以上のシェアを占めていた豪州では、昨年の干ばつによる農畜産物全体の生産量の減少が見込まれており、わが国の牛肉需給をはじめナチュラルチーズ、飼料穀物などの輸入などへの影響が心配されております。

 当機構としましては、こうした状況を踏まえ、海外情報のテーマの重点化を図る中で、各国における牛肉の生産状況などに係る情報の迅速な収集提供に取り組んでまいります。

 このほか、酪農につきましては、減産型計画生産が実施される中、酪農経営の安定のため関係者一丸となった需要拡大の取り組みが行われております。

 また、食品中に残留する農薬、動物用医薬品、飼料添加物などを規制するポジティブリスト制度が平成18年5月29日から導入されたことに伴い、農場での適切な飼養管理や動物用医薬品などの適正な取り扱いが求められるなどの新しい課題も出てまいりました。

 このように、わが国農畜産業に対しましては、需給の安定確保とともに良質で安心、安全な食品に対する消費者ニーズの把握、さらには国際化の進展に伴う効率的な生産・流通によるコストダウンへの対応などその体質の強化に向けた一層の努力が求められています。

 当機構は、価格安定業務、畜産業振興事業、学校給食用牛乳供給事業の補助業務、国内外の情報収集提供業務など様々な業務を担当しておりますが、農畜産業が抱えます様々な課題に対し、各事業をどの様に展開していけば、その解決にお役に立てるのか、日々心を新たにしながら、業務の運営に努めてまいる所存であります。

 本年が皆様方にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつといたします。


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