主要畜産物の需給動向

◆牛 肉◆

●●●輸入品の推定期末在庫は、3年半ぶりの7万トン台に●●●

 貿易統計によると、7月の牛肉輸入量は36,612トン(前年同月比7.2%減)となり、前年同月をかなりの程度下回った。これは主に、豪州産の輸入量が28,507トン(同16.9%減)と5カ月ぶりに3万トン台を割り、大幅に減少したことが影響している。米国産は3,685トンが輸入され、輸入総量に占めるシェアは輸入再々開後初めて1割を超えた。米国産が少しずつ増加する一方で、豪州産のシェアは低下しており、16年1月以降、初めて8割を下回った(図1)。

 豪州産牛肉の輸入量の減少は、豪ドル高による原産地価格の上昇に加え、日本側の在庫調整が行われたことが背景にあると思われる。当機構調べによる輸入品の推定期末在庫は、昨年度下半期に、豪州産牛肉の輸入量が増加したことに伴い前年同月を10%以上上回って推移していた。さらに、今夏は日本列島の梅雨明けが平年より遅れたため、7月の牛肉需要が盛り上がりに欠けたのとの見方もあり、(社)日本フードサービス協会によれば、7月の焼き肉店(ファミリーレストラン業態、10事業社、店舗数1,252店)の売上高は、前年同月比6.8%減となった。この結果、輸入量の減少にもかかわらず、7月の輸入品推定期末在庫は、44カ月ぶりに7万トン台に達し、70,208トン(同11.2%増)となった(図2)。

図1 牛肉輸入量に占める豪州・米国産の比率


資料:財務省「貿易統計」


図2 牛肉輸入量と推定期末在庫量の推移


資料:財務省「貿易統計」
機構調べ


◆豚 肉◆

●●●夏場の豚肉卸売価格、高めに推移●●●

 平成19年4月から6月までの豚肉卸売価格は、平年並みのと畜頭数があったものの、末端消費が伸びず、ロース、バラ在庫の圧迫感もあって、軟調に推移し、特に6月下旬の豚枝肉相場は値下がり傾向で推移していた。

 続く7月は、と畜頭数が1,288千頭と前年同月を6.4%上回り順調な出荷状況となった。

 7月の価格は通常、夏休みに伴う学校給食の休止などにより、うで、ももの動きが鈍り、若干値を下げるところだが、今年の豚肉卸売価格(東京・省令)は、7月4日には608円と今年の最高値を記録するなど、梅雨明けが遅かったにもかかわらず、7月平均では559円(前年同月比2.0%高)と前年同月を上回った。

 さらに、8月は猛暑による生育の遅れなどが言われていたものの全国のと畜頭数(速報値:「畜産物市況速報」のと畜頭数の積算値)は、1,312,300頭(同1.2%増)で、前年同月をわずかに上回った。8月平均の卸売価格(速報値)は夏のスタミナ源として焼肉、トンカツ、冷しゃぶなどで末端消費が活発になり1キログラム当たり560円(同10.0%高)と前年同月をかなり上回り、価格は上昇傾向となった。

図3 豚肉卸売価格(省令)の推移


注)市場開催日の関係から、土日、休場日はブランクまたは削除。
資料:農林水産省「食肉流通統計」「畜産物市況速報」


●●●7月までのチリからの豚肉輸入量は累計16,691トン●●

 EPA協定が平成19年9月3日に発効されたチリからの7月の豚肉の輸入量は4,741トン(前年同月比52.5%増)となり、19年度の累計(4〜7月)は16,691トン(前年同期比2.4%減)となった。チリからの輸入量は、12年度に1万トンの大台に乗り、5年後の17年度には5万7千トンと5倍に増加している。このような中、EPA協定が締結され、発効日から20年3月31日まで(19年度)の割当数量内(16,000トン)であれば「冷蔵・冷凍の豚の部分肉」は従価税の税率が4.3%から半減の2.2%に、「ハム・ベーコン」の税率が8.5%から4.3%に、「豚肉調製品」は同20.0%が16.0%となる。

 一方、メキシコからのEPA協定に基づく特恵枠は今年度の65,000トンのうち7月までの累計輸入量は15,783トン(同20.4%増)となっている。

 
 ◆鶏 肉◆

●●●8月の鶏肉むね卸売価格、20カ月ぶりに240円台●●●

  8月のブロイラ−の卸売価格(東京、速報)は、1キログラム当たりもも563円、むね240円となった。

 今年度の鶏肉価格は、生産量の増加にもかかわらず、輸入鶏肉の減少などから比較的堅調に推移している。特にむね肉は夏場に入って、引き合いを強め、5月以降前年同月を上回って推移していたが、8月はさらに一段高となり、平成17年12月の248円以来20カ月ぶりの240円台となった。
 

●●●鶏肉輸入価格も高水準に●●●

  わが国の鶏肉の輸入先が、タイ、中国に替わってブラジルに集中し、加工原料用の約9割を占めるようになって約4年が経過した。

 しかし、その輸入量は17年度の39万トンをピークに減少傾向にあり、18年度に入ってからは、前年同月を大きく下回る月が続き年度累計では前年度を21.8%下回る31万トン、今年度は7月までの累計で前年同期比12.3%下回る11万トンとなっている。

 輸入量減少の一因として、ヨーロッパやロシアなども同様に輸入先をブラジルに求めているため、競争が激化し、わが国への量の確保が難しいと言われており、さらに原産地価格の値上げなどもあって輸入価格は上昇している。

 ブラジルからの輸入価格(CIF価格)は5月は1キログラム当たり214円(前年同月比7.9%高)、6月は227円(同17.3%高)、7月は234円(同17.3%高)と高水準に推移している。

図4 鶏肉の輸入量とCIF価格の推移


資料:財務省「貿易統計」


 ◆牛乳・乳製品◆

●●●バターの生産量、14カ月連続で前年同月を下回る●●●

  7月の生乳の用途別処理量は、牛乳等向け処理量が387,442トン(前年同月比4.3%減)と減少幅が拡大した結果、乳製品向けは282,000トン(同2.3%増)と3カ月ぶりに前年同月を上回った。

 乳製品の生産量を見ると、堅調な需要に支えられてチーズおよびクリームの生産量が好調に推移する一方で、バターの生産量は減少している(図5)。年末に向け、需給のひっ迫が懸念されるバターの生産量は、14カ月連続で前年同月を下回る5,893トン(同2.5%減)で、年度累計(4〜7月)では前年同期を5.6%下回っている。この結果、国内乳業メーカーなど14社の7月末のバター在庫量は21,051トン(同30.0%減)となり、うち業務用バラ物が14,337トン(35.9%減)、家庭用が1,062トン(同21.4%減)とそれぞれ前年同月を大幅に下回っている。

 このような状況下において、今年度のバターの輸入量(当機構分、その他)は、7月までに前年同期の約3.8倍に相当する4,136トンに達しており、当機構が今年度カレントアクセスとして放出した数量は7月までに2,599トンと増加している。

図5 バター、クリームの生産量と輸入量


資料:財務省「貿易統計」
農水省「牛乳乳製品統計」


 ◆鶏 卵◆  

●●●卸売価格が下落し、3カ月連続で補てん金が交付される●●●

  平成19年1〜6月の鶏卵生産量は、昨年までの堅調な価格を反映し、前年同期を4.8%上回る1,287,577トンとなった。

 全農「畜産販売部情報」による7月の鶏卵の卸売価格(全農・東京・M)は1キログラム当たり145円となり、19年4月以降4カ月連続で前年同月を下回って推移し、8月の速報値では、157円と前年同月を0.6%下回り価格が軟調となっている。(図6)

 19年度の鶏卵補てん基準価格は1キログラム当たり166円に設定されており、3カ月連続でそれを下回ったことから6,7,8月はそれぞれ1キログラム当たり12,18,4円の補てん金が交付された。

図6 標準取引価格と補てん規準価格


資料:(社)全国鶏卵価格安定基金
注)枠内は年度平均(東京、M)


●●●19年1、2月の鳥インフルエンザの感染経路について●●●

  平成19年6月「食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会第26回家きん疾病小委員会」が開催され、本年1、2月に宮崎県および岡山県で発生した高病原性鳥インフルエンザの感染経路についての報告書が公表された。これによると、感染源、経路については、(1)国内へのウイルスの侵入として、発生農場から分離されたウイルスは、鳥インフルエンザH5N1亜型ウイルスであり、@近年、中国、モンゴル、韓国において分離されたウイルス、A昨年末に韓国の野鳥から分離されたウイルス、B本年1月4日熊本県で捕獲された野鳥のクマタカから分離されたウイルスといずれも相同性が高いことや海外の事例などから、国内への侵入は渡り鳥により持ち込まれた可能性が想定された。(2)農場内へのウイルスの侵入として、発生農場における野鳥や野生動物の侵入防止対策は必ずしも十分ではなく、また、農場内で初めに死亡鶏が確認された場所については、外部からのヒナの導入や人の作業動線との関連性が確認されなかったことから、農場へのウイルスの侵入は、人為的原因によるものではなく、野鳥や野生動物により持ち込まれた可能性が想定された。

  
  ◆飼 料◆   

●●●輸入価格上昇で、単体飼料用トウモロコシの生産量は減少●●●

   流通飼料価格等実態調査によると、6月の配合飼料生産量は1,972,537トンとなり、前年同月を2.4%上回った。この結果、年度累計(4〜6月)では、5,961,788トン(前年同期比1.8%増)となった(巻末資料参照)。これは、卸売価格の堅調な推移に支えられ、飼養頭羽数が増加傾向にある肉牛用や成鶏用の生産量が増加したことによる。

 配合飼料の年度累計(4〜6月)の生産量を畜種別に見ると、肉牛用が1,098,690トン(同4.2%増)、養鶏用が2,610,588トン(同2.2%増)、養豚用が1,431,918トン(同0.3%増)、乳牛用が798,475トン(0.2%増)となっている。乳牛用の生産量は、生乳の減産計画が実施されていることから、飼養頭数が減少し、おおむね前年同月をわずかに下回る水準で推移している。

 配合飼料の原料となる飼料穀物の輸入価格(CIF)は、前年を大幅に上回る水準で推移している。主要原料の7月のCIF価格は、トウモロコシがトン当たり27,304円(同66.0%高)で前月比の上げ幅を若干縮小しつつあるものの、依然高値が続いており、大豆油かすが同38,616円(同22.0%高)、こうりゃんが同27,991円(同64.8%高)といずれも大幅に値上がりしている(図7)

 このように主要原料となる飼料穀物の価格が軒並み上昇する中で、単体飼料使用のメリットは少なくなっており、単体飼料用トウモロコシの生産量は、年度累計で前年同期比15.5%減の92,410トンとなった。

図7 配合飼料 主要原料CIF価格の推移


資料:財務省「貿易統計」


 ◆その他◆  

●●●日チリEPAが発効され、今後5年間の関税割当公表●●●

  平成18年9月に大筋合意し、19年3月に協定に署名されていた日チリ経済連携協定に基づくチリを原産地とする冷凍牛肉をはじめとする畜産4品目に関する関税割当が9月3日に発効され、以下のとおり公表された。これにより19年度は、冷凍牛肉650トン、冷凍牛くず肉など300トン、豚肉および豚肉調製品16,000トン、鶏肉1,750トンが枠内数量の特恵税率で輸入可能となる。






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