需給動向 海外

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豚枝肉卸売価格は堅調な中、輸出補助金によりEU域外への輸出量は増加


◇絵でみる需給動向◇


欧州委、豚枝肉の卸売価格は2009年上期も堅調に推移と予測

 欧州委員会が公表した2009年上期までの豚枝肉の卸売価格見通しによれば、2008年第4四半期から2009年第2四半期まで100キログラム当たり160〜170ユーロ(20,320円〜21,590円:1ユーロ=127円)水準で堅調に推移するとしている。これにより、2008年の年間平均価格は150ユーロ(19,050円)台後半となる見通しで、ヨーロッパにおけるBSEの拡大により牛肉から豚肉へ需要が大きく移行し、豚肉価格が堅調であった2001年以降では最も高い水準となることが確実な情勢である。

豚枝肉の卸売価格(市場参考価格)の推移

 しかしながら、欧州委員会の試算によると、2008年の配合飼料価格高騰による生産コストの上昇に豚枝肉価格の上昇が追いついていない模様で、2008年第3四半期においても養豚経営の粗収益は従前の水準まで十分に回復していないとされている。このため、経営基盤の弱い経営体を中心に生産規模の縮小や養豚経営からの撤退が進み、繁殖母豚の減少という結果につながることが懸念される。


2008年7月までのEU域外への輸出量は輸出補助金により前年同期比で約50%増

 2008年1〜7月までのEU域外への豚肉など(関連製品を含む)の輸出量は、前述のとおり2008年のEU域内の豚枝肉価格が2002年以降で最高の水準のとなっていることに加え、2008年夏までユーロ高基調で推移したものの、2007年11月30日から2008年8月7日まで措置されていた輸出補助金の効果もあり、前年同期比で約50%増(約100万トン→約150万トン)となった。中でも輸出増が著しいのは、輸出先の上位2カ国であるロシア、中国(香港を含む)であり、この2カ国だけで30万トン以上の増加となった。また、2007年上期には輸出実績がほとんどなかったウクライナについても2008年7月までに約8万トンが輸出された。

 2008年8月8日以降輸出補助金が再びゼロとされたこともあり、2008年第4四半期に入り、豚肉などの輸出の伸びは鈍化している模様であるが、2008年全体のEU27の輸出量は、2007年1月にEUに加盟したブルガリアとルーマニア向けが域外輸出として扱われていた2006年のEU25の輸出量約230万トンに迫る勢いとなっている。


日本向けの輸出の増加は比較的緩やか

 一方、日本向けの輸出については、上記の新興国向けの輸出と比較すると相対的に緩やかなものとなっている。わが国にとってEU最大の輸出国となっているデンマークの日本向け輸出量は、2008年1〜7月まででは、近年の減少傾向に歯止めがかかったものの、前年同期比8%増(9万3千トン→10万トン)にとどまった。

 近年のデンマークからの対日輸出量の減少は、米国、カナダなどの北米産豚肉のシェアが拡大する中で生じている。そのためEUの輸出補助金の措置による対日輸出への効果は、同時期のドル安基調とEU産豚肉に対する新興国からの強い引き合いの前に、比較的緩やかなものとなったと考えられる。

デンマークから日本への豚肉輸出量の推移(1月から7月までの累計)

輸入豚肉の国別シェアの推移


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