需給動向 海外

◆米 国◆

平均枝肉重量の低下が続く米国の豚肉産業


◇絵でみる需給動向◇


肥育豚の飼養頭数は2009年に向けて減少へ

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月26日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、本年9月1日現在の豚総飼養頭数は前年を2.0%上回る6,865万7千頭となった。しかし、繁殖母豚の頭数は604万9千頭と前年を2.6%下回り、これで6月に続き2四半期連続の減少となった。

 母豚頭数の減少に伴い、2年間にわたって増加を続けてきた母豚分娩頭数も本年7月に減少に転じ(前年同月比1.8%減)、8月は100万9千頭と前年同月を3.5%下回った。USDA/NASSによると、本年9〜11月の母豚分娩頭数は300万6千頭(前年同期比5.5%減)、本年12月〜来年2月の母豚分娩頭数は298万3千頭(同2.9%減)と見込まれており、しばらくの間、母豚分娩頭数の減少傾向が続く可能性が高い(図1)。

 一方、母豚1腹当たり子豚頭数は、昨年6月以降、前年同月比2%前後の高い伸び率で増加を続けている。1998年から2007年までの10年間、1腹当たり子豚頭数の年間増加率は0.1〜0.9%の範囲で推移しており、サーコウイルスワクチンによる生産効率改善効果が極めて大きいものであったことがうかがえる。本年8月の1腹当たり子豚頭数は前年を2.9%上回る9.53頭となったが、一般に、飼料価格の高騰などにより経営環境が悪化すると、生産者は飼養管理の徹底などを通じて生産効率の向上に努める傾向があることから、今後も1腹当たり子豚頭数の増加は続くことが予想される(図2)。

 しかし、前述のとおり、本年後半から来年前半にかけての母豚分娩頭数の減少はこれを大きく上回ると見込まれているため、米国内で生産される肥育素豚の頭数は本年後半から減少に向かう可能性が高い。すでに、本年8月の子豚生産頭数は961万4千頭となり、26カ月ぶりに減少(前年同月比0.8%減)に転じている。さらに、米国で飼養される肥育豚の7%近くを占めるカナダ産の肥育素豚(50キログラム以下)の輸入についても、カナダにおける繁殖母豚頭数の急速な減少を背景に、本年6月には前年同月を9.1%下回っている。米国における食肉の原産地表示の義務化を前にした駆け込み輸入(注:7月15日以前に輸入された素畜は米国産扱いとなる。)により、7月の輸入頭数は前年を11.9%上回ったが、今後、カナダからの肥育素豚輸入頭数は前年を下回る可能性が高く、これも米国の肥育豚飼養頭数の減少要因となる。

図1 繁殖母豚分娩頭数(四半期別)と前年同期比

図2 1腹当たり子豚頭数(四半期別)と前年同期比


飼料価格の高騰を背景に1頭当たり枝肉重量は伸び悩み

 USDA/NASSが9月26日に公表した「Livestock Slaughter」によると、本年8月の豚と畜頭数は926万8千頭と前年同月を1.4%下回った。このうち、連邦検査食肉処理場でと畜された肥育豚の頭数は884万5千頭と1.3%減少した。

 出荷豚1頭当たりの重量は、飼料穀物価格の高騰などを背景に低下傾向にある。本年8月の連邦検査食肉処理場における1頭当たりの出荷重量は、261ポンド(118.4キログラム)と前年同月を1.1%下回り、枝肉重量も192ポンド(87.1キログラム)と前年同月を1.0%下回った。これで、出荷重量は5カ月連続で、また、枝肉重量は4カ月連続で前年同月を下回っている。一方、米国の金融危機を背景に、シカゴの穀物相場は9月後半から急速に下落し始めていることから、出荷豚1頭当たり重量は回復に向かう可能性もあり、今後の動きに注意が必要である(図3)。

 本年8月の豚枝肉生産量は18億440万ポンド(約81万8千トン、同2.5%減)となり、11カ月ぶりに前年同月を下回った。なお、USDA経済調査局(USDA/ERS)は、本年第4四半期の枝肉生産量を前年同期比2.0%増(62億9千万ポンド:約285万1千トン)、2009年第1四半期を同1.8%減(59億2千万ポンド:約268万3千トン)と予測している。

図3 豚の出荷時生体重量と前年同月比


好調に増加してきた豚肉の輸出の伸びは下半期に向けて減速へ

 米国の豚肉輸出量は、1991年以降17年連続で前年実績を上回っている。これまで、主要な輸出先は日本やメキシコであったが、近年、ロシアや中国・香港などへの輸出が増加している。

 7月の豚肉輸出量は4億947万ポンド(18万6千トン)と前年同月を86.1%上回った。1〜7月の累計輸出量も前年の同期間を70.8%上回っており、8月にも2007年の年間輸出量を超える可能性が高い。しかし、その伸び率はやや鈍化傾向にあり、特に、急速に拡大してきた中国向けの輸出の伸びが鈍化傾向にあるのが特徴的である。当地の関係者によると8月後半から中国向けの輸出は急速に減少しているとされ、これが2008年下半期の輸出拡大の抑制要因になると見込まれている(図4)。

 USDA/ERSは本年第3四半期の豚肉輸出量を前年同期比99.1%増(14億ポンド:約63万5千トン)、第4四半期を同61.6%増(15億5千万ポンド:約70万3千トン)とし、2008年全体で同72.3%増(54億4千万ポンド:約246万9千トン)になるとしていたが、10月の予測ではこの見込みを下方修正し、同69.3%増(53億2千万ポンド:約241万2千トン)になると公表している。米国発の金融不安による国際経済への影響により、米国のドルは他の通貨に対して強含みで推移しており、これも、今後の輸出拡大を減速させる要因となる。

図4 豚肉の輸出先別輸出量


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