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中国、乳・乳製品中のメラミン残留基準を制定


甘粛省の乳児に腎結石が多発、粉ミルクからメラミン検出

 2008年9月8日、中国甘粛省の省都・蘭州市にある中国人民解放軍第一医院(ベッド数500余)泌尿器科の医師が、6月28日以降、同医院において5〜11カ月齢の乳児14人が腎結石と診断され、治療を受けていたことを明らかにした。14人の乳児は、いずれも河北省の省都・石家庄市に本拠を置く大手乳業メーカーの石家庄三鹿集団股份有限公司(以下「三鹿集団」)が製造していた乳幼児用調製粉乳(以下「粉ミルク」)を摂取していたとされる。その後、同様の症例は甘粛省のほか江蘇省、陝西省、湖南省、安徽省、山東省、寧夏回族自治区の合計7省・自治区で報告されていることが判明した。

 中国衛生部は9月11日、上記の件について緊急調査を行った結果、腎結石などを患った乳幼児の多くに、三鹿集団が製造した粉ミルクの摂取歴があり、関係部門の調査によって、「三鹿」ブランドの粉ミルクから、合成樹脂などの原料として用いられるメラミンが検出されたと発表した。

 同部のこれまでの発表などを総合すると、10月8日現在、三鹿ブランドほかの粉ミルクの摂取によって入院中の乳幼児は1万666人(うち重症8人)、治癒して退院した乳幼児の累計は3万6,144人となり、遡及(そきゅう)調査による5〜8月の死亡者は3人(甘粛省2人、浙江省1人)で、9月以降は新たな死亡者は発生していないとされる。


メラミン混入は主として中間業者か、影響はグローバルベースに

 中国関係部局は事態を重視し、該当製品の回収や全国の乳・乳製品の抽出検査などを実施するとともに、関係者の逮捕・身柄拘束、被害者および生乳出荷ができなくなった酪農家に対する支援措置などを次々と講じた。また、石家庄市の市長兼同市共産党委員会副書記、同市共産党委員会書記が解任され、さらには国家質量監督検験検疫総局長(閣僚級)までが辞任に追い込まれた。

 9月15日、三鹿集団が本拠を置く河北省当局は記者会見を開き、三鹿ブランドの粉ミルクからメラミンが検出された問題で、同省石家庄市内で搾乳ステーションを経営する兄弟を逮捕したと発表した。日本や欧米諸国などの酪農家は、自農場内に搾乳施設を併設しているのが普通だが、中国では搾乳施設を有するのは一定規模以上の酪農家に限られ、零細〜小規模酪農家では、地域の投資家などが建設した搾乳ステーションに乳牛を伴って搾乳するのが一般的である。

 また、同月17日の記者会見では、同省の楊崇勇副省長が、河北省の初期調査において、(1)三鹿集団に生乳を販売していた搾乳ステーション372カ所のうち、41カ所でメラミン混入が確認されたこと、(2)公安当局によって逮捕または身柄を拘束された者の多くは、搾乳ステーションの経営者であること−などを明らかにした。

 中国における生乳へのメラミン混入問題は、中国産の食品や原材料の貿易などを通じ、日本や台湾、韓国、東南アジア、インド、EU、ロシア、豪州、ブルンジ(中部アフリカ内陸部の共和国)など、世界各国・地域の食品市場と消費者をも巻き込む大きな問題へと拡大した。台湾では、中国産乳製品を原材料とした製品の販売禁止措置を巡って政府の指示が混乱し、行政院衛生署長(閣僚級)が引責辞任する事態にまで発展した。


中国政府が乳・乳製品のメラミン検査方法と残留基準を制定

 国家質量監督検験検疫総局(以下「国家質検総局」)は9月21日、乳業工場の監督管理の強化などを各級政府の品質検査部門に指示する通知を発した。同通知では、乳・乳製品中のメラミン検査の実施についても触れ、その検査法として、(1)高速液体クロマトグラフィー法、(2)高速液体クロマトグラフィー/質量分析法、(3)ガスクロマトグラフィー/質量分析法の3種類の方法を採用することとされた。10月2日には、前記3種類のいずれかの方法によりメラミン検査が可能な全国385カ所の食品検査機関名簿が、同総局から発表された。

 さらに10月7日、国家質検総局および国家標準化管理委員会は、上記の内容を「原料乳および乳製品中のメラミン検査測定方法」(2008年10月7日付け国家標準的公告2008年第13号(総第126号)国家標準GB/T22388-2008)として正式に公告し、即日施行された。

 また、同日、衛生部・工業信息化部・農業部・国家工商行政管理総局・国家質検総局の5部局は連名で公告(2008年10月7日付け衛生部公告2008年第25号)を発し、メラミンを故意に食品中に添加することを禁止し、故意に添加した場合にはその法的責任を追究するとした。併せて、メラミンは食品包装材料の製造にも使用されることなどにかんがみ、人の健康や乳・乳製品の品質安全性などにも配慮した上で、乳・乳製品中の暫定的なメラミン残留限度量について以下のとおり制定するとともに、限度量を超えるメラミンを含む食品の販売を禁止する措置を講じた。

 (1) 乳幼児用調製粉乳(粉ミルク)については、製品1キログラム当たり1.0ミリグラム

 (2) 原料乳を含む液状乳製品(牛乳類、乳飲料、ヨーグルトなど)、粉乳(脱脂粉乳、全粉乳など)、粉ミルクを除く調製粉乳については、同2.5ミリグラム

 (3) 乳成分を15%以上含むそのほかの食品については、同2.5ミリグラム


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