需給動向 海外

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2008年の鶏肉生産量はわずかに増加、調製品の輸出も好調


◇絵でみる需給動向◇


2008年の生産量はわずかに増加、 価格は第4四半期に陰りも

 タイ農業・協同組合省(MOAC)によると、2008年12月のブロイラー生産量は前年同月比2.7%減の約7千3百万羽となった。生産量は2007年1月以降、7千万羽を超えて推移し、同年3月以降は、前年を上回って推移した。しかし、2008年8月には同99.9%とわずかながら前年同月を割り込み、12月には再び前年同月を割り込んだ。この結果、2008年の生産量は、前年比2.0%とわずかに増加し、約8億9千9百万羽となった。ひなふ化羽数についても、ブロイラー生産量と同様に推移しており、12月のひなふ化羽数は前年同月比2.8%減の約7千6百万羽となった。

 生産量が横ばい傾向で推移している中、12月の卸売価格(生体)は、同12.0%安のキログラム当たり33.0バーツ(約92円:1バーツ=2.8円)と、前年同月をかなり大きく下回った。卸売価格は、2007年3月以降、前年同月を上回って堅調に推移し、2008年1月には同40.5%高の同35.9バーツ(約101円)を記録した。その後も9月までは前年を上回って推移したが、10月に同10.7%安の同29.9バーツ(約84円)と前年同月を割り込み、その後も、前年同月を下回って推移している。2008年の平均価格は、9月まで堅調に推移したことなどから、前年比14.2%高の同37.8バーツ(約106円)となった。

 卸売価格が前年同月を大きく割り込んだ一方で、12月の小売価格(中抜き)は、同0.9%高の同56.0バーツ(約157円)となった。小売価格は、2007年3月以降、2008年12月まで前年を上回って推移しているが、10月以降、上昇率が小さくなっている。2008年の平均価格は、前年比11.7%高の同59.4バーツ(約166円)となった。

 こうした価格の低下について、MOAC農業経済局では、経済不況による国内消費の低下が一因と見ている。

図1 鶏肉生産量と卸売価格の推移
図2 鶏肉卸売価格と小売価格の推移
図3 鶏肉卸売価格と小売価格の前年同月比の推移

2008年の鶏肉調製品の輸出は大幅に 増加

 2008年12月の鶏肉調製品の輸出量は、前年同月比14.4%増の約3万1千トンとなった。主な輸出国別で見ると、日本は同37.0%増の約1万4千7百トン、英国は同14.2%増の約9千7百トン、オランダは同46.1%減の約1千5百トンとなった。

 2008年の輸出量は約36万トンとなり、前年の実績約27万6千トンを30.3%上回った。国別実績は、日本が同45.3%増の約16万2千トン、英国は同16.7%増の約10万7千トン、オランダは同27.7%増の約3万3千トンとなった。国別シェアを見ると、日本向けは45.1%と、前年の40.4%から4.7ポイント増加した。EU向けは48.1%と、前年の53.0%から4.9ポイント減少し、5割を下回った。EU向けの約6割を占める英国は33.1%から29.7%、同約2割を占めるオランダは9.4%から9.3%へと減少した。

 日本向けシェアの増加は、食品衛生上の問題が発生した中国産からタイ産へのシフトが進んだことが一因であると思われる。

 また、日本とEU以外の新規市場として有望視されている国では、シンガポール向けが同42.8%増の約1万2百トン、韓国向けが同35.0%増の約6千トンとなり、いずれもシェアを拡大した一方で、香港向けは約3千4百トンと数量ベースでは同3.2%増だったものの、シェアを減少させた。

 シンガポール以外の東南アジア諸国向けでは、ベトナムが約2千1百トン、ミャンマーが約3百トンと、それぞれ同309.7%増、同38.8%増と大幅に増加している。一昨年輸出が再開されたアラブ首長国連邦(UAE)には、65トン、昨年輸出が再開されたサウジアラビアには12キログラムが輸出された。

鶏肉調製品国別輸出量

調製品の輸出価格は引き続き大幅に上昇

 2008年12月の鶏肉調製品の平均輸出価格は、前年同月比22.2%高のキログラム当たり156.2バーツ(約437円)となり、対日輸出価格は同44.4%高の同165.4バーツ(約463円)であった。輸出価格は、2006年以降、総じて低下傾向で推移してきたが、2007年10月以降は、上昇傾向で推移している。特に同年12月以降は、前年同月比10%以上の上昇傾向で推移している。

 今後の観測として、タイブロイラー加工輸出協会は、飼料価格が下がり始めたため、輸出価格も下がっているものの、2009年第1四半期の輸出価格はそれまでの水準を維持すると推測している。また、ブラジル産鶏肉の価格の下落の影響を受け、輸出価格も下がるという意見もある。

2009年の生産量はわずかに増加 との予測

 MOAC農業経済局は、2009年度の鶏肉生産量を、人口増加および輸出拡大に応じて、9億2千万羽と前年比2%程度増加すると予測している。また、輸出量を、EUの関税割当の設定や2007年11月に発効した日タイ経済連携協定による関税率削減効果(鶏肉調製品は現行の6.0%が2009年1〜3月は5.0%、4〜12月は4.5%)、UAEやサウジアラビアへの輸出再開、予測されるバーツ安の影響などから、6%程度増加すると見込むものの、世界経済の減速による影響を受ける可能性があるとしている。


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