海外トピックス


欧州委、2015年までの農産物市場の中期見通しを公表


 欧州委員会は3月中旬、昨今の経済危機および昨年末に政治的に合意された共通農業政策(CAP)の中間検証作業(ヘルスチェック)の内容を加味した形で2008年から2015年までの農産物市場の中期見通しを公表した。

豚肉・鶏肉の生産量は増加し牛肉・羊肉の生産量は減少の見込み

 食肉部門においては、EU域内1人当たりの年間食肉消費量は、2008年では、上半期の食肉価格の高騰と下半期の経済危機による需要の冷え込みにより、前年比2.2%減の85.1キログラムとなった。しかしながら、中期的には堅調に推移し、2015年には87.6キログラムと2008年比2.9%増が見込まれるとしている。2015年の同消費量の品目別構成割合については、豚肉が2008年と同率の50%を占めるとされ、続いて鶏肉が28%(前年比1.5%増)、牛肉が19%(同1.2%減)、羊肉が3%(同0.3%減)と見込まれている。また、生産量についても同様に、豚肉・鶏肉の生産が増加傾向で推移し、牛肉・羊肉の生産が減少傾向で推移すると見込まれている。

 なお、EU域外への食肉の輸出は、低コスト生産が可能な輸出国との競争の激化と対米ドル為替レートが中期的に見てEU側に不利に作用するとの予測から、豚肉も含め減少に転ずると見込まれている。

(参考:EU国民1人当たりの年間食肉消費量(kg/人)の推移、1991-2015年)

生乳生産量はEU全体では2015年までクオータ未達で推移の見込み

 酪農部門については、ヘルスチェックにおいて、毎年1%の段階的なクオータ拡大と2015年4月のクオータ撤廃が合意されたが、今回の中期見通しでは、生乳生産量は移行期間の2015年まで増加が見込まれるものの、EU全体で見ればクオータの範囲内で推移すると見込まれている。このため、2015年のクオータ撤廃の影響は、EU全体の生乳生産には大きな影響を与えないとしている。

 昨今の経済危機の深刻化により、供給過多を懸念した一部の加盟国から2009年から開始されるクオータの段階的拡大の停止を求める声が上がっていたが、今回の見通しは、その必要性を否定する材料となったといえよう。

(参考:ヘルスチェック実施に伴う生乳の生産および生産者乳価格の変動見通し(未実施の場合との比較)



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