需給動向 海外

◆米 国◆

依然として乳価低迷に苦しむ酪農家


◇絵でみる需給動向◇


搾乳牛頭数は減少するも生乳生産量は前年並みで推移

 米国農務省全国農業統計局(USDA/ NASS)が9月18日に公表した「Milk Production」によると、8月の生乳生産量は前年並みの7128千トンと、この6カ月間、ほぼ前年並みで推移する状況が続いている。一方、搾乳牛飼養頭数は、生乳生産者団体による牛群とう汰事業の効果もあり、今年3月以降は前年同月を下回り、8月は前年同月を1.8%下回る9160千頭となった。

 同局が9月29日に公表した「Agricultural Prices」によると、9月のトウモロコシとアルファルファの価格は前年同月を33.9%、37.5%下回り、どちらも昨年の夏以降下落基調にある。1頭当たりの乳量が上向きに推移していることに加え、飼料価格の低下が、搾乳牛頭数を削減する中で収益を増やそうとする生産者の増産意欲をかき立て、その結果、8月の1頭当たりの乳量は前年同月を1.6%上回る778キログラムとなった。1頭当たりの乳量の増加が搾乳牛頭数削減の効果を相殺する結果となっている。

図1 搾乳牛頭数と1頭当たり乳量の前年同月比の推移

乳価は上向くも前年を大きく下回る

 9月の生乳の生産者販売価格は前年同月を30.2%下回る100ポンド当たり12.70ドル(キログラム当たり25円:1ドル=91円)となった。価格は低迷しているもののこの数カ月は上向きに推移しており、今年2月以降の最高値を記録した。前述のとおり、トウモロコシやアルファルファなど飼料原料価格は下落していることから、生乳販売価格と飼料価格(トウモロコシ価格、アルファルファ価格などから試算)の差は緩やかに拡大している。このため、酪農家の収益はやや改善しているものとみられるが、その差額は依然として大きく前年同月を下回って推移している。

 このような中、10月から始まる2010会計年度の農業関連予算において、下院では計上されなかった3億5000万ドル(318億5千万円)の酪農家支援策が上院で計上され、9月30日の両院協議会においても承認された。内訳としては、生産者の直接支援策として2億9000万ドル(263億9千万円)、チーズなど乳製品の買上げ費用として6000万ドル(54億6千万円)となっている。直接支援策としては、補助額に生乳生産量による上限のある比較的小規模の生産者が有利と言われている生乳所得損失補償契約事業(MILC)が想定されているが、これについては大規模生産者を多く抱える西部州の議員から異論も出ている。どのような支援策が実施されるのか動向が注目される。

図2 生乳価格と飼料価格および差額の前年同月比の推移

生産者団体は、本年3回目の牛群 とう汰事業を発表

 一方、生乳生産者団体は10月1日、今年3回目となる牛群とう汰事業を実施することを発表した。2003年に同事業が開始されて以来、6年間で通算9回目の事業となるが、この12カ月間で4回、18カ月間で5回の実施となるなど昨年夏以降の国際乳製品価格の暴落および昨年秋以降の世界的不況が与えた米国酪農家への影響の大きさがうかがえる。生乳生産者団体は、今回の牛群とう汰事業の規模には言及していないが、前回並みのとう汰が行われるものとみられている。政府の酪農家支援策と相まって、年末に向けて生産者の収益が改善されることが期待されている。

酪農協共同基金(CWT)による搾乳牛とう汰事業の実績


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