需給動向 海外

◆米 国◆

2009年11月の生乳生産量は1%の減少、引き続き2010年も減少する見込み


◇絵でみる需給動向◇


削減が進む搾乳牛頭数

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が12月18日に公表した「Milk Production」によると、搾乳牛飼養頭数は9カ月連続で前年同月を下回るとともにその減少幅を拡大させており、11月は前年同月比2.6%減の909万1千頭となっている。

 搾乳牛飼養頭数においては、生産者が乳価低迷に苦しむ中、生乳生産者団体による牛群とう汰事業が実施され、自主的な削減が進められているところである。

 2009年には異例となる3回のとう汰事業が実施されており、5〜7月にかけて実施された1回目においては101,040頭の搾乳牛がとう汰され、8〜9月にかけて実施された2回目においては74,114頭の搾乳牛に加え2,958頭の初妊牛がとう汰された。11月から実施された3回目の事業の集計はまだ終了していないが、26,000頭の搾乳牛と465頭の初妊牛がとう汰されると見込まれている。再三の牛群とう汰事業により搾乳牛頭数の減少傾向は維持されるものと考えられる。

図9 搾乳牛頭数と前年同期比の推移

11月の生乳生産量は前年同月を1%下回る

 飼料原料価格が、2008年6月のピーク時より4〜5割程度低下して推移していることなどから、1頭当たりの乳量は9カ月連続で前年同月を上回って推移しており、11月は前年同月を1.7%上回る751.6キログラムとなっている。

 1頭当たりの乳量はわずかに上回って推移しているものの搾乳牛飼養頭数の削減効果が大きいことから、11月の生乳生産量は、前年同月を1.0%下回る6831千トンと5カ月連続の前年割れとなった。減少幅は7〜9月の3カ月は前年同月を0.1〜0.6%下回る程度であったが、10月と11月は1%以上の減産となっている。

 なお、12月17日に公表された経済調査局(USDA/ERS)の予測では、2010年の1頭当たり乳量は飼料価格の低下を背景に1.84%上昇するとしているが、搾乳牛飼養頭数は前年比2.5%減の900万頭を下回ると予測され、その結果、2010年の生乳生産量は2009年を0.7%下回ると予測されている。

図10 トウモロコシの価格と1頭当たりの乳量の前年同期比の推移

さらなるUSDAの支援策で期待される生産者の経営改善

 2010年会計年度(2009年10月〜2010年9月)の農業予算において乳価低迷とコスト高に苦しむ酪農経営の厳しい現状にかんがみ、350百万ドル(325億円5千万円:1ドル=93円)を酪農分野に充当することが決定された。その使途として、USDAは12月17日に290百万ドル(269億7千万円)を財源とした酪農家を直接支援する酪農経営損失補てん事業(DELAP)の実施と、翌18日には60百万ドル分のチーズを買い上げることを公表した。

 搾乳牛飼養頭数の減少が進み、生乳の需給改善が期待される中、乳製品の国際需給にタイト感が強まったという追い風も吹いてきている。そのような中、この政府支援策により酪農経営が一層改善されることが期待される。


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