需給動向 海外

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2010年の豚枝肉卸売価格は前年水準で推移の見込み


◇絵でみる需給動向◇


2010年の豚肉生産量は前年比0.6%増との予測

 欧州の調査会社GIRAが取りまとめた2010年における豚肉の需給見通しによれば、EUにおける豚肉生産量は主要生産国において増加が見込まれることから、EU27では前年比0.6%増と予測されている。中でも、ポーランドとイギリスの堅調ぶりが目立っており、ユーロに対する自国通貨の為替レートが低下したことにより、結果として豚肉生産の収益性が向上したことが影響しているもようだ。ポーランドは2008年下期から顕在化した経済危機の影響により2008年から2009年にかけて豚肉の生産基盤が大きな打撃を受けたが、現在は回復基調に転じたとみられる。図5は主要生産国における豚肉生産量の変化率を示したものであるが、前述のポーランド、イギリスに加え、デンマーク、オランダ、ドイツといった北ヨーロッパの加盟国を中心に豚肉生産量の増加が見込まれていることが読み取れる。

 また、域内の豚肉需要は2009年において経済危機の影響により前年比で2%減少したものの、2010年においては前年比で0.3%から0.7%程度増加すると分析されている。これは、新規加盟12カ国において豚肉需要が横ばいないし微増と見込まれる一方で、EU15においては、

・消費者のより安価な食材へのシフトの継続

・小売業者の価格転稼への消極姿勢

・比較的安価な食肉である鶏肉との競合

などの状況が観察されているが、2010年におけるEU27全体としての豚肉需要は堅調に推移するとの分析結果となったもようである。
図5 主要生産国における豚肉生産量の変化率

2010年の豚枝肉卸売価格は前年比0.6%低下との見通し

 一方、2010年の豚枝肉卸売価格の動向については、上期に低下するものの、下期に回復すると予測されており、2010年全体では前年比0.6%安と前年とほぼ同水準で推移すると分析されている(図6)。ただし、GIRAによれば、2010年の養豚経営の収益性は、豚肉価格が堅調に推移する一方で飼料をはじめとする生産資材価格が低下することにより、前年より改善すると見込まれているものの、2013年1月からのアニマルウェルフェアに係る規制の強化に対応するための投資が懸念材料となっており、当面は域内養豚経営にとって厳しい局面が続くとみられる。

図6 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移と今後の見通し

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