需給動向 海外

◆チ リ◆

2011年の豚肉生産量、輸出量ともに増加


輸出量は前年比7.7%増

 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2011年のチリにおける豚肉輸出は、輸出量が前年比7.7%増の10万888トン、輸出額が同19.0%増の3億8366万7200ドル(約315億336万円:1ドル=82.19円)と好調に推移した。

 輸出状況を国別でみると、最大の輸出先は韓国であり、輸出量ベースでは約33%のシェアを占めたものの、前年と比べると10.3%減となった。韓国は2010年に発生した口蹄疫の緊急対策の一環で、輸入無税枠を設定したため、チリ・韓国FTAによる低関税の優位性がなくなり北米産豚肉にシェアを奪われたことが要因である。

 日本向けは輸入豚肉の引き合いが高まり、輸出量が3万203トンと2ケタ台の伸びとなり、輸出額では韓国を上回り首位となった。単価は1キログラム当たり6.3ドル(約517円)で、韓国(3.0ドル:約246円)と2倍のひらきがある。

最も大きな変化が見られたのは中国向けである。2011年5月初旬に中国への輸出が開始され、現在、6カ所の認可処理場から輸出が行われている。輸出量は同約11倍の2,963トン、輸出額は583万7700ドル(約4億7980万円)となった。

表2 国別チリ産豚肉の輸出状況(2011年)
資料:チリ農業省政策・調査局(ODEPA)
注:輸出量は部分肉ベース

生産量は前年比5.9%増

  2011年の生産量は前年比5.9%増の52万7857トンとなり、2年連続の減少傾向に歯止めがかかった。チリ養豚生産者協会(ASPROCER)によると、増産要因として、チリ最大手豚肉生産企業AGROSUPERがアジアやEU向けなどの輸出需要拡大を見込み、2011年に母豚を5万頭増加させたことを挙げている。この増頭計画は2013年まで継続予定であったが、輸出先国の市場が予想に反して伸び悩んだため、2012年以降の計画は中断している。AGROSUPERは中国向けの輸出拡大により当初の事業計画達成を見込み、2012年に中国に現地事務所を開設し、チリ産豚肉の販促に傾注する予定である。

  国内消費について、1人当たりの年間豚肉消費量は、2008年に牛肉(22キログラム)を追い抜き25キログラムとなり、その後2年続けて24キログラム台で推移したが、2011年には25.7キログラムと過去最高となった。

 なお、2011年の豚肉生産者価格は1キログラム当たり1.27ドル(前年比10.4%高)となり、年間を通じて上昇基調が続いた。

図7 豚肉生産量の推移
資料:チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)
図8 チリ産豚肉生産者価格
資料:チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)


生産コストの約7割は飼料費

 ASPROCERによると、チリの豚肉生産コストは、1キログラム当たり1.5ドルであった(2011年)。このうち飼料費が74%と大半を占める。

図9 豚肉生産コスト内訳(2011年)
資料:チリ養豚生産者協会(ASPROCER)

 南米の豚肉生産国(チリ、アルゼンチン、ブラジル)の生産コストを比較すると、2011年では飼料穀物の主要生産国であるアルゼンチンが1キログラム当たり1.37ドルとなり、最も低コストであった。世界第4位の豚肉輸出国であるブラジルは、1.55ドルと前年の0.95ドルから大幅に上昇した。これは、国内の物価高騰や為替などの影響によるものである。

 一方、チリでは飼料の6割を自給していることや、物価上昇率が3%強と経済的に安定していることから、生産コストの変動幅が小さいことが特徴である。

 このような特性からみると、チリの豚肉生産は、国際需給に大きな影響を与える規模ではないが、価格変動が比較的小さいことから今後も日本にとって安定した供給地となりうるものとみられる。

図10 南米の豚肉主要生産国別生産コスト(2011年)
資料:チリ養豚生産者協会(ASPROCER)



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