需給動向 海外

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EU、2012年も引き続き生乳生産量は増加傾向


◇絵でみる需給動向◇


 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、EUにおける生乳生産量は2012年に入っても引き続き増加傾向にあり、1月〜2月の生乳出荷量は前年同期比で2.3%の増加である。EUにおける生乳生産の主要国であるドイツは同2.8%増、次いでフランスは同1.5%増、ポーランドは同8.4%増となった。2月上旬の寒波により同月の出荷量は若干落ちたものの、その後天候が回復したことから、3月は再び増加に転じる見込みである。

 LTO(オランダ生産者団体)によると、生乳価格は2月100キログラム当たり34.56ユーロ(3,836円:1ユーロ=111円)となり、前年対比2.9%増であった。しかし、3月は乳量の増加と乳製品価格の下落を受け、アルーアフーズ(スウェーデンおよびデンマークの合併企業)は 100キログラム当たり0.99ユーロ減、フリースランドカンピーナ(オランダ)は同 0.75ユーロ減、ダッチデイリー(オランダ) は3月に同1.5ユーロ、4月に同0.5ユーロなど多くの企業で生乳価格引き下げを表明している。

 最近、欧州全体の生乳出荷量は、生乳クオータの出荷制限量を下回って推移してきた。しかし、2010/11年度(4月〜翌3月)、2011/12年度の好調な乳価により各国で生産量が増加したため、出荷制限量まで残りは4.5%となっている。また、2011/12年度において生乳クオータを超過する可能性がある国は、オランダ、デンマーク、アイルランドである。年度末の3月末に向けてこれらの国では出荷を抑制し始めている。他方、生乳クオータを残しているのはフランス、ポーランドなどで、2012年に入り出荷量を増加させるなど生乳クオータに合わせた調整が行われている。

表3 EUにおける生乳出荷量
資料:ZMB
注1:2012年は暫定値である。
注2:2012.2.29の閏日を調整した数値である。
図9 EUにおける生乳価格の推移
資料:LTO
 注:域内主要乳業17社の平均値
図10 EUにおけるクオータ量と供給量
資料:ZMB

早くもバターの民間在庫は3万2026トンに達する

 ZMB(ドイツ乳製品市場価格情報センター)によると、2012年2月のバター価格は、100キログラム当たり328ユーロ(3万6408円)となり、昨年10月以降の下落が継続している。この価格は介入価格である246.39ユーロ(2万7349円)より依然として高水準で推移しているものの、3月1日より開始された民間在庫補助(PSA)に4月1日時点で既に3万2026トン分が申請・受理されている。バターの民間在庫補助(PSA)は、バターの生産が域内需要を上回る夏季に在庫として保管し、冬季の需要期に放出することで年間を通じてバターを安定的に流通することを目的としている。3〜8月の保管経費に補助金が交付される仕組みとなっており、固定経費がトン当たり14.88ユーロ(1,652円)、保管経費がトン、1日当たり0.26ユーロ(29円)となっている。

 価格が下落していることについてZMBは、生産の増加、域外輸出の減少、輸入増加、消費量の減少が組み合わさって引き起こされているとコメントしている。消費量については、主要消費国であるフランスで2010年対前年比同4.3%減と減少しており、東欧での微増を差し引いてもEU全体では減少の傾向である。この要因としては、健康志向の高まりによる植物由来油脂への移行や不安定な経済による安価な製品への移行などが挙げられている。また、輸出については、2011年は域内のバター価格が高水準で推移したため減少した。ZMBは、今回の下落によりバターの輸出が再度増加させる必要があるとしているものの、オセアニア産および米国産との価格差は依然として顕著であることや欧州産バターは品質を重視する顧客に限られることなどから、急激な輸出増加は難しいとコメントしている。

図11 バター卸売価格の推移
資料:ZMB
表4 2012年 バター民間在庫量
資料:EUCOLAIT

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