需給動向 海外

◆タ イ◆


生産量の増加により、販売価格が低迷

◇絵でみる需給動向◇


卸売価格は3月に大きく下落するも、4月にはやや値を戻す

 タイ農業・協同組合省によると、タイ国内における2012年1〜4月期のブロイラー処理羽数は、前年同期比5.3%増の3億2670万羽となった。昨年末には洪水の影響を受け、一時的に前年を下回る状況(2011年11月:8424万羽、前年同月比3.2%減、12月:8156万羽、同1.5%減)となったが、2011年以降、鶏肉調製品の輸出価格が高水準で推移したことを背景に増産が強まり、2012年3月には同10.5%増の8447万羽となった。

 本年7月のEU向け生鮮鶏肉の輸出の解禁や2015年のAEC(ASEAN経済共同体)の実現による市場拡大を見据えて、食肉処理場の増新設や契約農家との取引強化など、大手インテグレーターを中心に生産基盤の拡充がより一層進められていくものとみられる。
 
 タイ商務省が発表した卸売価格は、昨年7月以降ほぼ横ばいで推移していたものの、本年1月以降下落し、3月には同44.8%安の1キログラム当たり26.3バーツ(79円:1バーツ=3円)となった。これは、上述の輸出価格の上昇に起因した積極的な増産が一因となって国内市場への供給過剰を招いた結果、2012年3月には卸売価格が大きく下落したものと考えられる。

図6 ブロイラー処理羽数と市場価格(卸売・小売)の推移(月別)
資料:・処理羽数;タイ農業・協同組合省
   ・価格(卸売・小売);タイ商務省

国内消費は安定するも、小売価格は低迷

 国内消費は、過去4年間に渡り80万トン程度で推移しているが、2012年1〜4月期も前年同期比でほぼ横ばいの水準となり、今年度も年間では80万トンに達するものと見込まれる。

 バンコク市内の小売価格は、国内市場における供給過剰を背景に、2012年に入り軟調となり、本年3月には、同21.9%安の1キログラム当たり53.9バーツ(162円)まで下落した。4月にはやや値上がりしたものの、国内市場はやや過剰気味にある。今後、需給調整が進み、60バーツまで戻すか注目される。

表7 タイの鶏肉需給の推移
資料:機構調べ(鶏肉生産量および国内消費量)、タイブロイラー加工輸出協会(輸出量)
注1:鶏肉生産量は、ブロイラー処理羽数を基礎とした推計
注2:国内消費量は、「生産量−輸出量」で算出

調製品の輸出量は増加するも、輸出価格は下落

 タイ財務省によると、2012年1〜4月期における鶏肉調製品の輸出量は、前年同期比9.9%増の14万2695トンとなった。内訳を見ると、日本向けが6万3535トン(同16.1%増)となり、全体の44.5%を占めた。EU向けは、英国向けが4万4744トン(同4.2%増)、オランダ向けが9,860トン(同6.2%減)、ドイツ向けが6,115トン(同26.4%増)となり、EU向けシェアは全体の42.6%となった。

 上述のとおり、鶏肉調製品の仕向け先は、日本およびEU向けで鶏肉全体の9割弱を占める。ただし、EUは昨今の欧州の信用不安に伴う為替変動などを背景に、調達先に変化が現れる可能性もある。今後、タイのブロイラー産業は、飼料トウモロコシを自給できる点や低廉な労働力などのコスト優位性を活かして、EU市場でシェアを伸ばすことができるか注目される。なお、現地ブロイラー関係団体は、本年12月までのEU向け生鮮鶏肉輸出量を4万トンと予測し、次年度以降はクオータ全量(9万2610トン)を見込んでいる。

 鶏肉調製品の輸出価格は、2011年2月以降、前年を上回る水準で推移し、同年7月に1トン当たり14万3661バーツ(43万983円)まで上昇後も高水準で推移した。2012年に入り卸売価格に連動して下落し始め、本年4月には同13万2185バーツ(39万6555円)となった。

 2013年以降、EU向け輸出が本格化することは、新たな仕向け先の拡大による生産能力の強化が求められることから、タイのブロイラーの生産構造に少なからず変化を及ぼすであろう。既に大手インテグレーターは、2015年に控えたAECの実現を見据えて、隣国を巻き込んだ生産分業体制を軸に生産能力の強化に乗り出している。今後、隣国の市場をも取り込みながら、国単位を超えた地域単位での生産へと大きく変貌しつつあるタイのブロイラー産業の動向について注目していきたい。

図7 鶏肉調製品の輸出量と輸出価格の推移(月別)
資料:タイ財務省

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