需給動向 海外

◆米 国◆

干ばつの影響を受け、今後の豚肉生産量は当初予測よりやや減少の見込み


◇絵でみる需給動向◇


国内の豚肉需要の低迷などにより、生産量は3カ月振りに減少

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が7月17日に公表した「Livestock, Daily, and Poultry Outlook」によると、2012年6月の豚肉生産は、1頭当たり枝肉重量(93.0キログラム)は前年同月比0.5%増と増加傾向で推移しているものの、と畜頭数(854万8千頭)が同4.4%減となったことから、豚肉生産量は79万4千トン(同3.8%減)となり、3カ月ぶりに前年同月を下回った。と畜頭数の減少の要因としては、輸出需要が好調であるものの、国内の需要が低迷していることから在庫量が蓄積していることなどが考えられる。

干ばつの影響により、繁殖母豚と畜頭数が増加

 米国のコーンベルト地帯は6月下旬から熱波に見舞われ、深刻な干ばつ状態にある。トウモロコシの単収が低下し、2012/13年度産(9月〜翌8月)トウモロコシの生産量は前年と比べ大幅に減少すると見込まれることから、7月以降トウモロコシ価格は高値で推移している。

 7月の繁殖母豚と畜頭数を見ると、7月9日の週以降前年を上回って推移しており、9日の週から23日の週のと畜頭数の合計は、前年同期比4.0%増の17万6千頭となった。繁殖母豚のと畜頭数増加の要因として、トウモロコシの価格高騰の影響により肥育経営での飼料コスト増が見込まれることから、繁殖経営が子豚生産の抑制に舵を切ったことが考えられる。

 なお、ERSは2012年の豚肉生産量を前月予測値から0.3%下方修正するも、繁殖母豚のとう汰による一時的な供給量増加もあり前年比2.3%増と見込んでいる。また、繁殖母豚の減少は2013年の豚肉生産に影響を及ぼすことなどから、2013年の豚肉生産量予測値は、2012年の修正幅を上回る0.7%下方修正された。

 米国政府は8月13日、干ばつの影響を受けている畜産生産者に対する支援策として、食肉製品の買い上げを行う旨発表した。豚肉製品では1億ドル(79億円:1米ドル=79円)を上限として買い上げが行われる。今回の支援策は、飼料価格の高騰を受け、生産者が家畜をと畜にまわすことで一時的に生産量が増加し、市場価格の著しい下落につながる懸念があることを見越しての対応とみられる。

図5 繁殖母豚と畜頭数の推移
資料:USDA/AMS 「USDA Market News」
 注:横軸の月日は、2012年を基準にしたものであり、2010年および2011年については暦の関係上一致しない。

引き続き好調な豚肉輸出

 5月の豚肉輸出量は、日本向けが前年同月を19.4%下回った一方、その他の主要輸出先国で前年同月を上回ったことから、全体では前年同月比10.4%増の20万3千トンとなった。また、1月から5月の総輸出量をみると前年同期比12.9%増の106万3千トンとなり、好調だった前年実績を上回る水準となっている。5月の豚肉輸出量は、中国向けおよびロシア向けで前年同月を大きく上回った。中国向け輸出量は、中国国内の豚肉価格が低下していることから前年11月をピークに米国産に対する需要が弱まって推移しているものの、米国産豚肉の価格優位性が続いていることから前年同月比106.7%増、ロシア向け輸出量はブラジルとの貿易摩擦による米国産豚肉へのシフト等により同103.4%増となった。なお、ERSは2012年の豚肉輸出量を、前年比4.1%増の245万1千トンになると予測している。
表6 米国産豚肉輸出量(1〜5月)
資料:USDA/ERS


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