調査・報告  畜産の情報 2012年9月号

平成22年度乳製品の流通実態調査の
結果について

畜産需給部乳製品課



【要約】

 当機構では、乳製品の需給動向を把握するため、乳業メーカー等に対し、乳製品の業種別の仕向先や需要者の用途について実態調査を実施した。本稿では、平成22年度の調査対象品目のうち、生乳生産量の増減の影響を受けやすいことから注目されるバターと脱脂粉乳の調査結果の概要を紹介する。

調査結果の概要

 調査対象は、乳製品の供給者である乳業メーカー、需要者である食品製造業、外食業やホテル業であり、調査対象数は1070社、有効回収数は251社(有効回収率23.5%)であった。
 バターと脱脂粉乳の業種別・用途別消費動向については、以下に示す結果となった。
・バターの仕向先は、「菓子・パンメーカー」が39.7%で最も多く、「小売業」の22.5%が続く。
・脱脂粉乳の仕向先は「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が27.5%、「乳業メーカー
 (社内消費)」が26.8%、「はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー」が23.5%と、これら3つの業種で80%近く
 を占めている。
・バターの用途は「小売業」での消費が22.5%で最も多く、以下「菓子・デザート類」、「乳等主要原料
 食品」での使用と続く。
・脱脂粉乳の用途は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」における使用が42.1%で最も多い。

バター

1.業種別消費量

 平成22年度における国内のバターの推定出回り量8万3900トン(農畜産業振興機構調べ)を100とし、調査結果を基に業種別の供給量の推計を行った結果は次のとおりである。

 バターの流通経路と業種別消費量(推計)を図1に示した。乳業メーカーのバターの推定供給量は8万3900トンで、そのうち国産バターが8万2100トン、輸入バターが1800トンとなっている。また、供給量のうち、社内消費が9.8%、社外販売が90.2%となっている。社外販売量7万5650トンのうち、需要者に直接販売されるのは1万250トン(全体の12.2%)であり、一次卸を通じての販売が6万400トン(72.0%)、二次卸を経由するのが7300トン(8.7%)となっている。一次卸とは、主に大手乳業系列販社、乳製品卸、大手食品卸などである。

図1 バターの流通ルート(平成22年度推計)

 業種別消費量についてみると、「菓子・パンメーカー」が3万3350トン(全体の39.7%)で最も多く、次いで「小売業」が1万8900トン(22.5%)、以下「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が1万100トン(12.0%)、「乳業メーカー(社内消費)」が8250トン(9.8%)となっている。

 国産バター8万2100トンの内訳は、「菓子・パンメーカー」が40.4%で最も多く、次いで「小売業」が23.0%、以下、「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」「乳業メーカー(社内消費)」の順となっている。また、輸入バター1800トンの内訳は、「乳業メーカー(社内消費)」が58.3%で過半を占め、「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が22.2%で続いている。

 次に、平成18年度からの業種別消費量の推計値の推移を図2に示した。消費量の合計の推移をみると、平成20年度は原料乳の供給が逼迫したこと等から8万トン台を割り込み7万7900トン、さらに、平成21年度には7万7600トンとなった。平成22年度は、平成19年度以前には及ばないものの、8万3900トンまで回復している。

 業種別内訳の推移をみると、平成18年度以降「菓子・パンメーカー」の消費量が最も多くなっているが、18年度以降21年度にかけては減少傾向で推移した。しかし、平成22年度には3万3350トンと、過去5ヵ年で最も多くなっている。次いで消費量の多い「小売業」については、概ね2万トン前後で推移している。

図2 バターの業種別消費量の推移

2.用途別消費量

 国内のバター推定消費量8万3900トンの用途についてみると、「小売業」が1万8900トン(全体の22.5%)で最も多く、次いで「菓子・デザート類」が1万300トン(12.3%)、「乳等主要原料食品」が9300トン(11.1%)、「乳飲料」が7450トン(8.9%)の順となっている(図3、表2)。
図3 バターの用途別消費割合(平成22年度推計)

表2 バターの用途別消費量(22年度推計)

 国産バターは、「小売業」が23.0%で最も多く、次いで「菓子・デザート類」が12.3%、以下、「乳等主要原料食品」「乳飲料」「外食・ホテル業」の順となっている。また、輸入バターは、「アイスクリーム類」が22.2%で最も多く、次いで「乳飲料」及び「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が19.4%となっている。

 次に、平成18年度からの用途別消費量の推計値の推移を、図4に示した。用途別内訳の推移をみると、「小売業」の消費量が各年度とも最も多くなっており、年度により増減はあるものの、2万トン前後で推移している。次いで消費量の多い「菓子・デザート類」については、平成22年度は1万トン強で推移している。
図4 バターの用途別消費量の推移

脱脂粉乳

1 業種別消費量

 平成22年度における国内の脱脂粉乳の推定出回り量16万900トン(農畜産業振興機構調べ)を100とし、調査結果を基に業種別の供給量の推計を行った結果は次のとおりである。

 脱脂粉乳の流通経路と業種別消費量(22年度推計)を図5に示した。乳業メーカーの脱脂粉乳の推定供給量は16万900トンで、うち、国産脱脂粉乳が16万トン、輸入脱脂粉乳が900トンとなっている。また、供給量のうち、社内消費が26.9%、社外販売が73.1%となっている。社外販売量11万7550トンのうち、需要者に直接販売されるのは3万4850トン(全体の21.7%)であり、一次卸を通じての販売が8万2200トン(51.1%)、二次卸を経由するのが4400トン(2.7%)となっている。一次卸とは、主に大手乳業系列販社、乳製品卸、大手食品卸などである。
図5 脱脂粉乳の流通ルート(平成22年度推計)

 業種別消費量についてみると、「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が4万4100トン(全体の27.4%)で最も多く、次いで「乳業メーカー(社内消費)」が4万3350トン(26.9%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー」が3万7650トン(23.4%)、「菓子・パンメーカー」が1万7000トン(10.6%)、の順となっている。
 国産脱脂粉乳16万トンの内訳は、「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が27.5%で最も多く、次いで「乳業メーカー(社内消費)」が26.8%、以下、「はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー」「菓子・パンメーカー」の順となっている。

 次に、平成18年度からの業種別消費量の推計値の推移を図6に示した。平成19年度は19万7000トンであったが、平成20年度は特定乳製品向けの生乳が不足したことにより、15万5500トンと大幅に減少した。以降、15万トン前後で推移している。

図6 脱脂粉乳の業種別消費量の推移

 

業種別内訳の推移をみると、消費量の多い「乳業メーカー(社内消費)」と「乳業(社外販売)・アイスクリームメーカー」が、ともに全体の30%前後で推移している。

2 用途別消費量

 国内の脱脂粉乳推定消費量16万900トンの用途についてみると、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が6万7800トン(全体の42.1%)で最も多く、次いで「乳飲料」が1万8300トン(11.4%)、「飲料」が1万4150トン(8.8%)、「乳等主要原料食品」が1万3150トン(8.2%)の順となっている(図7、表4)。
図7 脱脂粉乳の用途別消費割合(平成22年度推計)

表4 脱脂粉乳の用途別消費量(22年度推計)

 

国産脱脂粉乳16万トンの用途の内訳は、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が42.3%で最も多く、次いで「乳飲料」が11.3%、以下、「飲料」「乳等主要原料食品」「アイスクリーム類」の順となっている。また、輸入脱脂粉乳は、「パン類」が33.3%で最も多く、次いで「乳飲料」が22.2%、以下、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「菓子・デザート類」の順となっている。

 次に、平成18年度からの用途別消費量の推計値の推移を図8に示した。用途別内訳の推移をみると、過去5年間で「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「乳飲料」の順位に変動はなく、この2つで用途別消費量のシェアの過半を占めている。また、「アイスクリーム類」及び「飲料」は概ね7%前後で推移している。

図8 脱脂粉乳の用途別消費量の推移

 脱脂粉乳の消費量は、国内の需給及び価格動向により各年度で変動している。最近は消費者のフレッシュ志向を反映し、はっ酵乳等を中心に脱脂粉乳から脱脂濃縮乳への需要の移行もみられることから、今後も用途別消費量や仕向先の動向を注視していきたい。

 


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