調査・報告 学術調査  畜産の情報 2013年11月号

地域未利用資源“竹葉(笹)”の飼料化に関する調査研究

宮崎県畜産試験場 主任研究員 鍋西 久



【要約】

 新たな地域未利用資源として全国で竹害をもたらしている竹のうち、これまで報告例のない竹葉(笹)を主原料とした飼料化について、飼料価値の検討に加えて、給与試験(消化試験・機能性の評価)および飼料調製方法まで、普及を見据えた一連の取組を行った。その結果、自給粗飼料のひとつとして、竹葉(笹)を主原料とした笹サイレージの活用が可能であるとの見解を得ることができた。このことは、国内飼料自給率向上に寄与できるだけでなく竹害対策にもつながり、地域環境保全に対しても貢献できるものと思われる。

1.調査研究の目的

 わが国の畜産業は、高齢化や後継者不足などの構造的な課題に加え、飼料の価格高騰や自給率の低さなどの問題を抱えており、経済のグローバル化による輸入畜産物の増加、濃厚飼料の輸入依存など経常的に海外情勢の変化に左右されやすい、不安定な経営を強いられている。これらの状況に対応するため、国内に存在する未利用・低利用の飼料資源の発掘と、飼料原料としての有効活用が強く求められている。一方、日本各地に広く分布し古くから身近な資材として活用されてきた竹は、利用されず放置された竹林が山を侵食する、いわゆる竹害として大きな問題となっている。

 このことから、地域特有の未利用資源の飼料化に関する研究が積極的に進められるなか、竹害をもたらす竹についても飼料化の検討がなされ、主軸(棹)部分を粉末化することで飼料としての活用法が見出されているが、栄養価が低いことなどから、飼料原料として広く普及するには至っていない。一方、竹葉(笹)部分については高い栄養価が期待されると共に、ヒトに対して機能性成分を有することが知られているにもかかわらず、家畜飼料としての活用の可能性についての検討は、未だなされていない。以上のことから、高い栄養価が期待できる竹葉(笹)の飼料価値、含有する機能性成分の検索と家畜への影響評価によって飼料としての活用が可能となれば、国内飼料自給率向上に寄与できるだけでなく竹害対策にもつながり、地域環境保全に対しても貢献できるものと思われる。

 そこで、本課題では新たな未利用資源として、竹の飼料化の可能性を検討すると共に、竹葉(笹)の潜在的な飼料価値を見出すことによって、国内飼料自給率の向上に資することを目的とした。

2.竹葉を主原料とした竹※1の飼料化の検討

 本課題では、竹葉を通年活用できる自給粗飼料として広く普及する目的で、長期保存性を高めたサイレージとしての飼料化を試みた。サイレージ調製に適した竹の種類の選定を行い、竹稈および竹葉を混合した笹サイレージ※2を調製し、飼料成分および発酵品質を調査すると共に、笹サイレージの消化性について検討した。

※1 竹葉を主原料とした竹とは、竹稈と竹葉をすべて混合したものを示す。

※2 竹葉を主原料とした竹サイレージを竹粉サイレージと区別するため、便宜上「笹サイレージ」として表現する。

(1) 材料と方法

【試験1】モウソウ竹、カラ竹およびニガ竹の3種類を用い、飼料成分として水分、粗タンパク質含量(CP)、中性デタージェント繊維含量(aNDFom)、粗灰分含量(CA)を分析した。さらに可溶性炭水化物含量(WSC)および緩衝能を測定した。

【試験2】モウソウ竹の笹サイレージ調製は、竹稈および竹葉を細断・混合して行った。笹サイレージの調製方法の検討として、モウソウ竹に廃糖蜜を0、10および20%添加し、パウチ法(写真1)によりサイレージを調製後、60日目に開封し発酵品質を調査した。また、フレコンバックおよび細断型ロールベーラーでサイレージを調製し、発酵品質を調査した。

【試験3】笹サイレージを乾乳牛3頭に給与し、インビボ(in vivo)消化試験による飼料成分の消化性および栄養価を調査した。

写真1 パウチ法によるインビトロ(in vitro)試験

(2) 結果と考察

【試験1】竹の飼料成分を表1に示した。飼料成分には竹の種類による差は認められなかった。しかし、竹をサイレージ化する場合、微生物の栄養源である糖類の添加が必要である可能性が示された。

 次に、pH低下に対する拮抗力を示す緩衝能は、カラ竹およびニガ竹よりもモウソウ竹で低かった(P<0.05)。このことから、モウソウ竹はカラ竹やニガ竹よりもサイレージ化に適している可能性が示された。
表1 種類の異なる竹の飼料成分、可溶性炭水化物含量および緩衝能

1粗タンパク質.2耐熱性アミラーゼ処理中性デタージェント繊維(灰分有せず).3粗灰分.4可溶性炭水化物.
ab同一行内異肩文字間に有意差あり(P<0.05).
【試験2】廃糖蜜を添加した笹サイレージの発酵品質を表2に示した。添加割合の増加により、pHおよび酢酸含量が有意に低下し(P<0.05)、乳酸含量が有意に増加した(P<0.05)。このことから、可溶性炭水化物(WSC)含量の少ない竹に廃糖蜜を添加すると、良質な笹サイレージが得られることが示された。

 また、笹サイレージの貯蔵方法として2種類を比較した結果、フレコンバックと比べて細断型ロールベーラーで調製した場合に、pHが有意に低い値を示し(P<0.05)、乳酸含量が約0.5ポイント高い数値を示した(表3)。
表2 糖蜜の添加割合の違いが発酵品質に及ぼす影響

表3 調製方法の違いが発酵品質に及ぼす影響
【試験3】笹サイレージの飼料成分、消化率および栄養価を表4に示した。笹サイレージの飼料成分は、CP含量で稲ワラとソルガムサイレージの中間の値を示したが、中性デタージェント繊維(NDF)含量では最も高い値となった。TDN含量は、稲ワラとソルガムサイレージの中間の値となった。各飼料成分の消化率は、CP消化率でソルガムサイレージに近く、粗繊維(CF)消化率で飼料用イネWCSに近い値となった。

 これらのことから、笹サイレージは自給粗飼料のひとつとして利用できることが示唆された。
表4 笹サイレージの飼料成分および消化率

1CP、CA:表1参照,NDF:中性デタージェント繊維,TDN:可消化養分総量,EE:粗脂肪,
CF:粗繊維.トウモロコシサイレージ、イタリアンサイレージ、飼料用イネWCS、ソルガムサイレージ
および稲ワラは日本標準飼料成分表の値.

3.繁殖雌牛の給与飼料としての笹サイレージの有効性

 本課題では、繁殖雌牛の給与飼料としての笹サイレージの有効性を検証するために、笹サイレージ給与が繁殖雌牛に及ぼす影響について検討することを目的とした。

(1) 材料と方法

 供試動物として、維持期の黒毛和種成雌6頭を用い、1期を21日間とする3期の反転試験法で飼養試験を実施した。給与飼料は基礎飼料のオーツ乾草4キログラム/日と、笹サイレージ2キログラム/日(笹サ区)、ソルガムサイレージ4キログラム/日(対照区)とした(乾物当たりの給与量が同量となるように設定)。なお、岩塩と飲水の摂取は自由とした。

 評価項目は飼養試験前後の体重、血液生化学検査とし、抗酸化指標として総抗酸化能(Potential Anti Oxidant:PAO)、スーパーオキサイドディスムターゼ(Superoxide dismutase:SOD)活性およびチオバルビツール酸反応物質(Thiobarbituric Acid Reactive Substances:TBARS)濃度※3を測定した。

※3 PAO、SOD活性:生体の抗酸化能を示す指標であり、低下は酸化ストレス等をもたらす。
    TBARS濃度:脂質の過酸化を示す指標であり、酸化ストレスの有用マーカーである。増加は酸化ストレスの亢進をもたらす。

(2) 結果と考察

 図1は、飼養試験前後の両区の体重を示したものであるが、両区に有意な差は認められず、飼養試験前後でも大きな増減は認められなかった。したがって、笹サイレージがソルガムサイレージの代替として活用できる可能性が示唆された。
図1 飼養試験前後の体重の比較

 図2は、血液生化学検査結果を示したものである。笹サイレージ給与区のすべての項目において、一般的な正常範囲で推移したことから、繁殖雌牛の給与飼料としての笹サイレージの安全性が確認できた。また、笹サイレージ給与区では生化学的にも栄養状態が良好なことが示された。さらに、肝機能を示すガンマグルタミルトランスペプチターゼ(GGT)は笹サイレージ給与区で有意に低く(p<0.05)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(GOT)も低い傾向が認められたことから、笹サイレージ給与によって肝機能が改善される可能性が示唆された。
図2 血液生化学検査結果の比較

注:a-b:p<0.05。a-b間に5%水準で有意差あり。
 図3、4および5は、血液中のPAO、SOD活性およびTBARS濃度の比較をそれぞれ示したものである。これらの結果から、笹サイレージ給与が血中抗酸化活性を向上させることによって、酸化ストレスを軽減できる可能性が示された。
図3 血液中PAO濃度(μM/l)の比較

図4 血液中SOD活性(U/ml)の比較

図5 血液中TBARS濃度(μM)の比較

注:a-b:p<0.05。a-b間に5%水準で有意差あり。
 以上のことから、繁殖雌牛への笹サイレージ給与は、健康上の問題は認められず、生化学的栄養状態も良好であることから、自給粗飼料のひとつとして十分活用できることが明らかとなった。さらに、笹サイレージの機能性として、酸化ストレスに対する抗酸化活性を改善できることが示されたため、暑熱ストレスなどに起因する酸化ストレスに対する機能性飼料としても活用できるのではないかと考えられた。

4.購入乾草の代替飼料としての笹サイレージの子牛への給与

 本課題では、子牛用の粗飼料である購入乾草の代替飼料として、笹サイレージの有効性を検証するために、笹サイレージ給与が子牛の飼料摂取量および発育に及ぼす影響について検討することを目的とした。

(1) 材料と方法

 供試牛としてホルスタイン種の乳用子牛6頭を用い、5カ月齢から10カ月齢までの5カ月間試験に供した。笹サイレージ給与区(笹サ区)では、モウソウ竹の軸および葉を混合した笹サイレージを体重比で日量0.05パーセント給与し、粗飼料(バヒアグラス乾草)は飽食、配合飼料は一定量とし、笹サイレージを給与しない対照区と比較した。

 評価項目として粗飼料摂取量、4週ごとの体重測定による発育状況について調べると共に、下痢等の疾病の発生状況についても調査した。

(2) 結果と考察

 笹サイレージを乳用子牛に給与した場合、嗜好性には個体差が認められたが、数日間の馴致によって解消し、10カ月齢で約1.1キログラム/日まで摂取した。粗飼料摂取量は、笹サイレージ区で少なくなったが、これは、笹サイレージの摂取によって低下したものと思われた(図6)。
図6 笹サイレージの給与が乾草摂取量に及ぼす影響

 試験開始時から終了時までの増体重は、対照区で114キログラムであったのに対して、笹サイレージ区で106キログラムとなったが、増体スピードに試験区間の差は認められなかった(図7)。

 なお、試験期間中、下痢等の発生は両区とも認められなかった。

 このことから、笹サイレージは子牛用の飼料として利用可能であり、購入乾草の代替飼料として利用することができることから、飼料コストの低減および自給飼料率の向上につながるものと考えられた。
図7 笹サイレージの給与が発育に及ぼす影響
(開始時を0として増体重を算出)

5.経産肥育牛の給与飼料としての笹サイレージの有効性

 本課題では、経産肥育牛の給与飼料としての笹サイレージの有効性を検証するために、枝肉出荷前の笹サイレージ給与が経産肥育牛および枝肉成績に及ぼす影響について検討することを目的とした。

(1) 材料と方法

 供試動物として黒毛和種経産牛6頭を用い、出荷前の3カ月間に肥育試験を実施した。給与粗飼料は笹サイレージ3キログラム/日(笹サ区)、慣行の稲ワラ2キログラム/日(対照区)とし、濃厚飼料給与量は、肥育開始時の3キログラム/日から開始後、8キログラム/日に達するまでは1週間毎に0.5キログラム増量した。なお、濃厚飼料は市販の肥育後期用配合飼料を用い、岩塩と飲水の摂取は自由とした。

 評価項目は、肥育試験開始時から出荷まで4週ごとの体重測定、血液生化学検査とし、抗酸化指標として総抗酸化能(Potential Anti Oxidant:PAO)、スーパーオキサイドディスムターゼ(Superoxide dismutase:SOD)活性およびチオバルビツール酸反応物質(Thiobarbituric Acid Reactive Substances:TBARS)濃度を測定した。

 なお、出荷後の枝肉成績は、公益社団法人日本食肉格付協会の格付成績を用いた。

(2) 結果と考察

 図8は、肥育試験期間中における両区の体重の推移を示したものであるが、両区に有意な差は認められなかった。肥育期間を通した日増体重は、稲ワラ給与区の1.2キログラム/日に対し、笹サイレージ給与区では1.4キログラム/日となり、笹サイレージ給与区で増体が良くなる傾向が認められた。
図8 肥育試験前後の体重の比較

 図9は、血液生化学検査結果を示したものである。笹サイレージ給与区のすべての項目において、一般的な正常範囲で推移したことから、経産肥育牛の給与飼料としての笹サイレージの安全性が確認できた。また、笹サイレージ給与区では稲ワラ給与区と比較して、生化学的に栄養状態が良好なことが示された。
図9 血液生化学検査結果の比較

注:a-b:p<0.05。a-b間に5%水準で有意差あり。
 図10は、血液中のPAO濃度の比較を示したものである。血液中の総抗酸化能を示すPAO濃度は両区で有意な差は認められなかったが、PAOの増加率で比較すると、稲ワラ給与区では肥育期間を通して変動は認められなかったのに対し、笹サイレージ給与区では、肥育日数の経過とともに、PAOが増加する傾向が認められた(図11)。
図10 血液中PAO濃度(μM/l)の比較

図11 血液中PAO濃度の増加率

 図12と13は、血液中のSOD活性とTBARS濃度の比較をそれぞれ示したものである。抗酸化酵素であるSODの活性を示すSOD活性は、笹サイレージ給与区が稲ワラ給与区よりも高くなる傾向が認められた。したがって、経産肥育牛においても、笹サイレージ給与によって血中抗酸化活性を向上させ、酸化ストレスを軽減できることが示された。

 以上のことから、経産肥育牛への笹サイレージ給与は、健康上の問題は認められず、生化学的栄養状態も良好であることから、自給粗飼料のひとつとして十分活用できることが明らかとなった。さらに、繁殖雌牛への給与試験結果と同様に、酸化ストレスに対する機能性飼料としても活用できるのではないかと考えられた。したがって、経産肥育牛への肥育用自給粗飼料として、笹サイレージが活用できる可能性が示唆された。
図12 血液中SOD活性(U/ml)の比較

図13 血液中TBARS濃度(μM)の比較

 出荷後の枝肉成績を表5〜9に示したが、歩留成績、肉質共にすべての項目において両区に有意な差は認められなかった。しかしながら、脂肪の光沢と質については笹サイレージ給与区が、稲ワラ給与区と比較して高くなる傾向が認められ(p<0.1)、脂肪の光沢と質等級が優れていた(表9)。

 したがって、経産肥育牛に対する笹サイレージ給与は、出荷後の枝肉成績を見ても慣行の稲ワラ給与と遜色なく、むしろ脂肪の光沢と質等級は改善される可能性が示唆されたことから、経産牛の肥育用自給粗飼料として活用できることが明らかとなった。
表5 歩留成績の比較

表6 脂肪交雑の比較

表7 肉の色沢の比較

表8 肉の締まり及びきめの比較

表9 脂肪の光沢と質の比較

注:a-b:p<0.1。a-b間に10%水準で有意差あり。

6.現地普及を考慮した笹サイレージ調製方法について

 これまでの試験において、地域未利用資源のひとつとして考えられている竹葉(笹)を主原料とする笹サイレージが、繁殖雌牛、子牛および経産肥育牛の自給粗飼料として十分活用できることが明らかとなった。そこで、笹サイレージを自給粗飼料のひとつとして位置付けし広く普及するために、より効率的な飼料化方法が求められる。そこで、本課題では、笹サイレージの調製マニュアルを作成することを目的として、竹の伐採から笹サイレージ調製までの効率的な飼料化方法について検討した。

(1) 竹の伐採方法について

 試験開始当初は、竹林にて伐採した竹を裁断現場までトレーラーで運搬した後に、裁断機にて破砕しサイレージ調製する方法を試みた(写真2、3)。しかしながら、この方法では、竹林から破砕現場までの長尺竹の取扱いに苦慮し、積み下ろしと裁断作業に多くの時間と労力を要することとなった。したがって、裁断機による破砕については、竹の伐採作業に続けて竹林にて実施する方が望ましいと考えられた。
写真2 竹林での竹伐採
写真3 長尺竹の運搬
 そのため、裁断機を積載したトレーラーで竹林に入り、伐採した竹を直接裁断機で破砕することで、作業の効率化を図ることが可能となった(写真4、5)。

 なお、伐採した竹については、すべてサイレージとして利用可能である。
写真4 竹林での竹伐採
写真5 竹林での裁断作業

(2) 笹サイレージ調製方法について

 裁断機で破砕した竹をサイレージ調製する方法として、当初はフレコンバックによる笹サイレージ調製を試みた。しかしながら、フレコンバックによる笹サイレージ調製は、詰め込み作業や鎮圧作業が困難であるばかりでなく(写真6)、短期間の保存では問題は認められなかったが、長期間の保存において二次発酵と思われるカビの発生が認められた(写真7)。これは、フレコンバックへの詰め込み時の鎮圧が不十分なことが原因として考えられた。
写真6 フレコンバックでのサイレージ調製
写真7 フレコンバックでのカビ発生
 したがって、笹サイレージの調製方法については、新たな対策が必要となったことから、詰め込み作業と鎮圧の効率化を考慮して、細断型ロールべーラーを活用したサイレージ調製を試みることとなった。その結果、竹林から運搬した破砕された竹を細断型ロールべーラーに投入、ロール状に成型し、ラッピングフィルムで被覆することで、詰め込みと鎮圧作業を効率よく短時間で実施できる結果となった(写真8、9)。さらに、フレコンバックによるサイレージ調製と比べて細断型ロールベーラーを活用して調製した場合に、pHが有意に低い値を示し(Pp<0.05)、乳酸含量も約0.5ポイント高い数値を示し、長期間の保存においてもカビ等の発生は認められなかった。

 以上のことから、笹サイレージの自給粗飼料としての現地普及を考慮した場合、調製方法としては、細断型ロールべーラーを活用し、ラッピングフィルムで被覆する方法が、生産現場における取扱いを容易にする観点からも望ましいのではないかと考えられた。
写真8 細断型ロールべーラーでロール状に成型
写真9 ラッピングフィルムで被覆

7.調査研究のまとめ

 本課題では、国内飼料自給率の向上に資することを目的として、竹葉(笹)を主原料とした飼料化の可能性と潜在的な飼料価値について検討し、自給粗飼料のひとつとしての普及を見据えた調査研究を実施した。本課題では、竹葉を通年活用できる自給粗飼料として広く普及する目的で、長期保存性を高めたサイレージとしての飼料化を試みた。

 竹稈および竹葉を混合した笹サイレージを調製し、飼料成分、発酵品質および消化性について検討した結果、笹サイレージの発酵品質は良好で、飼料価値についても自給粗飼料として十分活用できる結果が得られた。

 繁殖雌牛への笹サイレージ給与においては、健康上の問題は認められず、生化学的栄養状態も良好であることから、自給粗飼料のひとつとして十分活用できることが明らかとなった。さらに、笹サイレージの機能性として酸化ストレスに対する抗酸化活性を向上できることが示されたため、暑熱ストレス等に起因する酸化ストレスに対する機能性飼料としても活用できるのではないかと考えられた。

 また、笹サイレージは子牛用の飼料としても利用可能であり、購入乾草の代替飼料として活用できることが明らかとなったことから、飼料コストの低減および自給飼料率の向上につながるものと考えられた。

 経産肥育牛への笹サイレージ給与においても、健康上の問題は認められず、生化学的栄養状態も良好であることから、自給粗飼料のひとつとして十分活用できることが明らかとなった。また、繁殖雌牛への給与試験結果と同様に、酸化ストレスに対する機能性飼料としても活用できるのではないかと考えられた。さらに、枝肉成績についても、慣行の稲ワラ給与と遜色ない結果が得られ、脂肪の光沢と質については稲ワラ給与よりも優れていた。したがって、経産肥育牛への肥育後期用自給粗飼料として、笹サイレージが活用できる結果となった。

 以上の結果から、笹サイレージが繁殖雌牛、子牛および経産肥育牛の自給粗飼料として十分活用できることが明らかとなった。そこで、笹サイレージを自給粗飼料のひとつとして位置付けし、広く普及するために、竹の伐採から笹サイレージ調製までの効率的な飼料化方法を検討した。試行錯誤の結果、裁断機を積載したトレーラーで竹林に入り、伐採した竹を直接裁断機で破砕し、破砕した竹をトレーラーで運搬後、細断型ロールべーラーを活用して成型し、ラッピングフィルムで被覆してサイレージ調製する方法が、生産現場における取扱いを容易にする観点からも望ましいのではないかと考えられた(図14)。
図14 省力的な笹サイレージ調製方法の流れ

 本調査研究において、新たな地域未利用資源として全国で竹害をもたらしている竹のうち、これまで報告例のない竹葉(笹)を主原料とした飼料化について、飼料価値の検討に加えて、給与試験(消化試験・機能性の評価)および飼料調製方法まで、普及を見据えた一連の取組を行った。その結果、自給粗飼料のひとつとして、竹葉(笹)を主原料とした笹サイレージの活用が可能であるとの見解を得ることができた。このことは、国内飼料自給率向上に寄与できるだけでなく竹害対策にもつながり、地域環境保全に対しても貢献できるものと思われる。

 したがって、本調査研究で検討した地域未利用資源である竹の飼料化の普及については、地域環境保全の取組と併せて実施することでより現実性が高まり、畜産のみならず地域社会的観点からも推進していくべきではないかと考えられる。
 

 


元のページに戻る