需給動向 海外

◆米 国◆

牛肉生産量が減少する中、輸出量・輸入量は増加


2014年の第2四半期の生産量は前年同期比4.8%減

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が7月29日に公表した「Red Meat and Poultry Production」によると、2014年第2四半期(4〜6月)の牛肉生産量は、前年同期比4.8%減の280万トンとなった(図1)。減少の要因は、2011年、2012年に発生した干ばつの影響により、繁殖雌牛を中心としたと畜が進み、長期にわたり飼養頭数が減少したことで、と畜頭数が前年を下回っていることが挙げられる。

 また、米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が8月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2014年7月の牛のと畜頭数は、前年同月比10.3%減の256万2000頭とかなりの程度減少しており、2014年1月以降、7カ月連続で前年を下回って推移している。

 北米食肉協会(NAMA)が9月2日に公表した資料によると、と畜向け肉牛出荷頭数の減少から、大手食肉企業を中心に食肉処理・加工施設の稼働率が低下しており、8月末時点で全米48の食肉処理・加工施設(肥育牛用が21施設、経産牛用が27施設)が閉鎖している。NAMAは、今後もと畜向け出荷頭数の減少が見込まれることで、既存の食肉処理・加工施設の稼働率は90%を下回ると予測しており、引き続き牛肉生産の減少が見込まれている。
図1 牛肉生産量の推移
資料:USDA
  注:枝肉重量ベース

牛肉輸出量、アジア向けがけん引

 牛肉生産量が減少傾向で推移する中で、海外の旺盛な需要を背景に輸出量は好調に推移している。2014年の1〜6月までの牛肉輸出量は、前年同期比4.7%増の56万7000トンとなった。国別に見ると、メキシコ向けが10万トン(同33%増)と好調さを維持したほか、韓国向けが6万6000トン(同22%増)、香港向けが9万トン(同57%増)とアジア向けの増加が目立った。一方で、日本向けは13万8000トン(同7%減)、カナダ向けは8万4000トン(同21%減)と、いずれも落ち込んだ。これは、冷蔵牛肉を中心に、米国内や他国の需要を反映して価格が上昇しているため、両国の輸入者の手当が困難になっているためとみられる(図2)。
図2 牛肉輸出量の推移(1〜6月)
資料:USDA
  注:子牛肉を含む

2014年第2四半期の牛肉輸入量、大幅増

 牛肉生産量の減少や輸出量の増加により、米国内の牛肉輸入量は大幅に増加している。2014年第2四半期(4〜6月)の牛肉輸入量を見ると、前年同期比22%増の34万8000トンとなった(図3)。国別に見ると、主要輸入先国である豪州は11万7000トン(同58%増)、カナダは6万9000トン(同11%増)、ニュージーランドは9万3000トン(同11%増)といずれも2ケタの伸びとなった。このうち、豪州産増加の要因としてUSDAは、同国での干ばつによる放牧環境の悪化からと畜頭数が増加し、牛肉生産量が増加したことを挙げている。また、カナダ産については、為替相場が米ドルに対してカナダドル安であったためとしている。

 なお、USDAは、2014年下半期以降も米国内の牛肉生産量の減少により牛肉輸入量は増加と見込んでおり、2014年通年では前年比15%増、2015年は同1%増と予測している。
図3 牛肉輸入量の推移
資料:USDA
  注:子牛肉を含む
(調査情報部 山神 尭基)


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