【要約】
近年のバターおよび脱脂粉乳の流通動向は、年度によってさまざまな変化をみせており、当機構では、乳業メーカーなどに対し、販売先の業種や、その用途についての実態を調査し、乳製品の需給動向を把握しているところである。
平成25年度の動向に関する調査では、輸入バターや輸入脱脂粉乳は、国産品に比べ乳業メーカーで社内消費される割合が高いこと、バターが幅広い用途で消費されている一方、脱脂粉乳は、供給量の半分近くが、はっ酵乳・乳酸菌飲料の原料として消費されていることなどが確認された。
1 調査対象および回収率
本調査は、乳製品の供給者である乳業メーカー、需要者である全国の食品製造業や外食業、ホテル業を対象に実施し、有効回収数266企業(有効回収率23.0%:調査対象数1155企業)であった。また、大手乳業企業などからの回答を得たため、カバー率は出回り量ベースで9割程度となった。
2 平成25年度の乳製品の需給
25年度のバターおよび脱脂粉乳の生産量は、経産牛飼養頭数の減少などによる生乳生産量の減少、クリームやチーズに仕向けられる生乳の増加などから、いずれも前年度比で9割程度となった。
両品目ともに機構のカレントアクセスによる輸入や在庫の取り崩しはあったが、出回り量を見ると、バターは過去20年間で最低水準、脱脂粉乳も2番目に低かった。バターおよび脱脂粉乳の概要は、以下の通りである。
(1)バター
25年度のバターの需給は、生産量が消費量を下回ったことから、前年度から引き続き逼迫基調で推移した。生産量は6万4300トン(前年度比8.3%減)、輸入量は当機構のカレントアクセスによる3500トンが市場に放出された。この結果、推定出回り量(注)は7万4100トン(同1.6%減)となった。なお、大口需要者価格(農林水産省)は、年度平均で1キログラム当たり1237円(同2.5%高)であった。
注:推定出回り量=前年度末在庫量+当年度生産量+当年度輸入量−当年度末在庫量=推定消費量
(2)脱脂粉乳
25年度の脱脂粉乳の需給は、生産量が消費量を下回った。生産量は12万8800トン(同8.9%減)、輸入量は当機構のカレントアクセスによる5000トンが市場に放出された。この結果、推定出回り量は、14万3100トン(同2.1%増)とやや増加した。なお、大口需要者価格(農林水産省)は、年度平均で25キログラム当たり1万5746円(同1.4%高)であった。
3 平成25年度の流通経路と業種別・用途別消費量
(1)バター
25年度の国内のバターの推定出回り量7万4100トン(機構調べ)の流通経路および業種別、用途別消費量の推定を行った結果、次の通りとなった。
ア.流通経路
推定出回り量のうち、国産品((1)乳業メーカーの自社製造と在庫取り崩しの合計)が6万8000トン(推定出回り量に対する構成比91.8%)、輸入品((2)乳業メーカーの取り崩し等と(3)機構の輸入放出の合計)が6100トン(同8.2%)となった(図1)。
図1 バターの流通経路(平成25年度) |
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注1:・供給者(緑色):推定出回り量74,100トン=国産品68,000トン((1)乳業メーカーの自社製造+
在庫取り崩し)+輸入品6,100トン((2)乳業メーカーの在庫取り崩し等2,600トン+(3)機構の
輸入放出3,500トン)
・需要者(ピンク色):推定消費量74,100トン=9,900トン((4)乳業メーカー社内消費)+
45,600トン((5)バター需要者:業務用)+18,600トン((6)バター需要者:家庭用)
2:( )内%は、推定出回り量(推定消費量)に対する構成比率
3:(5)業務用の乳業は、バターを生産していないメーカーを指す。 |
また、乳業メーカー(社内消費)が9900トン(同13.4%)、乳業メーカーからの社外販売が6万1500トン(同83.0%)、機構から一次卸への売渡しが2700トン(同3.6%)となった。
乳業メーカーなどから需要者にバターが供給される流通経路では、一次卸を通じた販売が5万3200トン(同71.8%)と大きなシェアを占めており、卸売業者がバターの流通に果たす役割は大きいものであった。
イ.業種別消費量
業務用が4万5600トン(推定消費量に対する構成比61.5%)と最も多く、家庭用は1万8600トン(同25.1%)、乳業メーカー(社内消費)は9900トン(同13.4%)となった。業務用の内訳では、菓子メーカーが1万8500トン(同25.0%)で最も多くなった(表1)。
また、国産品は、家庭用を含む各業種で幅広く使用されている一方、輸入品は、乳業メーカー(社内消費)、加工油脂メーカー、乳業・アイスクリームメーカー、菓子メーカーなど一部の業務用で比較的消費量が多い傾向にあった。なお、業務用については、主に25キログラムのブロックタイプであるバラバター(冷凍)での消費が中心となった。
表1 バターの業種別推定消費量の内訳(平成25年度) |
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24年度との比較では、業務用は4万5600トン(前年度比5.4%減)とやや減少した(表2)。バター価格が上昇したこと、乳業メーカーが計画販売により抑制的な供給をせざるを得なかったこと、需要者側で原材料をバターから輸入調製品や植物油脂へ切り替えたことなどが要因として挙げられる。
表2 バターの業種別推定消費量の推移 |
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一方、家庭用は1万8600トン(同5.1%増)と、2万トン前後で推移していた22年度以前の水準には戻っていないながらも、回復基調にあることが確認された。
ウ.用途別消費量
菓子・デザート類が1万9500トン(構成比26.3%)と最も多く、次いで、家庭用が1万8600トン(同25.1%)、外食・ホテル業が8100トン(同10.9%)の順となっており、25年度においても家庭用と菓子メーカーを中心に特定の用途に偏ることなく、多様な食品の原材料として使用されたことが確認された(図2)。
図2 バターの用途別消費割合(平成25年度) |
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注:乳等主要原料食品とは、牛乳分を主要原料としながら、牛乳・乳製品に該当しない
食品類をいう。 |
業務用に消費されたバターの用途別内訳を24年度と比較すると、菓子・デザート類など主な用途で軒並み減少し、中でもアイスクリーム類が3300トン(前年度比21.4%減)と大幅に減少した(表3)。この要因としては、脂肪調製品や植物性脂肪への置き換えが考えられる。
表3 業務用バターの用途別推定消費量の推移 |
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(2)脱脂粉乳
25年度の国内の脱脂粉乳の推定出回り量14万3100トン(機構調べ)の流通経路および業種別、用途別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった。
ア.流通経路
推定出回り量のうち、国産品((1)乳業メーカーの自社製品と在庫取り崩しの合計)が13万8700トン(推定出回り量に対する構成比96.9%)、輸入品((2)機構の輸入放出から乳業在庫を除した合計)が4400トン(同3.1%)となった(図3)。
また、乳業メーカー(社内消費)が5万4600トン(同38.2%)、乳業メーカーからの社外販売が8万6400トン(同60.4%)、機構から一次卸への売渡しが2100トン(同1.5%)となった。
図3 脱脂粉乳の流通経路(平成25年度) |
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注1:・供給者(緑色):推定出回り量143,100トン=国産品138,700トン((1)乳業メーカーの自社
製造+在庫取り崩し)+輸入品4,400トン((2)機構の輸入放出5000トンのうち、乳業在庫
600トンを除いた量)
・需要者(ピンク色):推定消費量143,100トン=54,600トン((3)乳業メーカー社内消費)
+87,600トン((4)脱脂粉乳需要者:業務用)+900トン((5)脱脂粉乳需要者:家庭用)
2:( )内%は、推定出回り量(推定消費量)に対する構成比率
3:(4)業務用の乳業は、脱脂粉乳を生産していないメーカーを指す。 |
バターと比較すると、家庭用の消費量が非常に少なく、乳業メーカー(社内消費)の割合が高いことが脱脂粉乳の流通経路の特徴と言える。また、卸売業者を経由せずに需要者に直接販売される割合も、バターと比べ高いことが確認された。
イ.業種別消費量
業務用が8万7600トン(推定消費量に対する構成比61.2%)と最も多く、社内消費は5万4600トン(同38.2%)、家庭用は900トン(0.6%)とわずかであった。業務用の内訳では、乳業・アイスクリームメーカーが3万2500トン(同22.7%)と最も多く、次いで、はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが3万400トン(同21.2%)となった(表4)。
また、国産品は各業種で幅広く使用されている一方、輸入品は乳業メーカー(社内消費)が約6割を占めた。乳業メーカーは需要者への国産品の供給を優先させるため、社内消費には輸入品を手当てするなどの対応を取ったものと推測される。
表4 脱脂粉乳の業種別推定消費量の内訳(平成25年度) |
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24年度との比較では、業務用は8万7600トン(前年度比3.4%増)とやや増加し、パンメーカーや飲料メーカーでの増加が目立った(表5)。また、推定消費量が増加する中で、シェアが大きい乳業メーカー(社内消費)はほぼ横ばいとなったが、これは、乳業メーカーにおける無脂乳固形分の需要が、価格面でのメリットがある粉乳調製品や、使い勝手が良く風味を向上させられる脱脂濃縮乳に移行したためとみられる。
表5 脱脂粉乳の業種別推定消費量の推移 |
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ウ.用途別消費量
はっ酵乳・乳酸菌飲料が6万9300トン(構成比48.4%)と最も多く、次いで、乳飲料が2万3400トン(同16.4%)、アイスクリーム類が1万3000トン(同9.1%)の順となった。バターと異なり、脱脂粉乳は上位3用途で約7割が消費される状況が確認された(図4)。
図4 脱脂粉乳の用途別消費割合(平成25年度) |
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業務用に使用された脱脂粉乳の用途別内訳を24年度と比較すると、菓子メーカーなどでの消費量の減少を受けて、菓子・デザート類が5900トン(前年度比7.8%減)、乳等主要原料食品が6900トン(同8.0%減)と、いずれもかなりの程度減少したものの、夏季の高温を受けて、アイスクリーム類が1万3000トン(同14.0%増)とかなり大きく増加した(表6)。
表6 業務用脱脂粉乳の用途別推定消費量の推移 |
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