需給動向 海外

◆中 国◆

供給減からと畜企業は豪州産肉牛の確保へ


2015年の冷凍牛肉輸入量はブラルの躍進で前年比6割増

2015年の冷凍牛肉輸入量は、前年比58.3%増の46万7145トン(製品重量ベース)となった(表4)。このうち8割強を占めた上位4カ国(豪州、ウルグアイ、NZ、ブラジル)はいずれも前年より増加したが、第1位の豪州は他の上位国よりも伸び幅が少なかったのに対し、2015年6月に輸入が再開したブラジルは2012年の約6倍の5万6429トンと大幅増となった。





ブラジル産は、2012年12月に同国でのBSE(牛海綿状脳症)発生により輸入停止となっていたが、輸入再開以降、中国に対し牛肉輸出認定施設の追加認定を働きかけるなど、攻勢を強めている。

豪州産も、中長期的には後述すると畜業者による豪州産肉牛確保の動きが加速しているため、大きく伸長することが見込まれる。

と畜企業による豪州産肉牛確保の動きが加速

牛飼養頭数は2011年以降減少傾向にあり、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2015年は、前年より5万頭減の1億295万頭で、今後も減少が見込まれている。政府は、2015年8月に豪州と生体牛輸入に合意し、同年10月には肉牛と畜企業のこう農業集団(本社:重慶市)が豪州から150頭の生体牛(と畜場直行牛)の試験輸入を行ったところである。業界団体によると、冷凍牛肉に加えて生体牛が輸入されることで、牛肉の需給ギャップは緩和されるとみている。

豪州産肉牛の確保に向け、現地での一貫経営にも乗り出そうとする動きも出てきた。大手肉牛と畜企業のふくせいほう(本社:河北省)は2015年8月、豪州に完全子会社を設置した。この子会社を通じて豪州国内の大規模牧場の買収を計画しており、豪州産肉牛の確保を目指している。

さらに、豚と畜企業が豪州の肉牛確保を目指す動きもある。豚肉と畜大手の(本社:山東省)は、国内の牛肉需給ギャップをビジネスチャンスと捉え、豪州のと畜企業の買収を目指している。同社は、食の多様化で今後、豚肉から牛肉へのシフトが見込まれることから、牛肉ビジネスへの参入を図るとしている。豪州と畜企業の買収については、国内の飼養頭数が回復しないことに加え、中豪FTAにより生体牛は2019年1月、牛肉は2024年1月から関税が撤廃されることから、消費者から支持の高い豪州産牛肉を安価に確保できるためとしている。

小売価格の高止まりが継続

2016年1月の牛肉(もも肉)の小売価格は、1キログラム当たり67.12元(1275円:1元=19円)と、依然として高止まっている(図10)。





これについて業界関係者は、沿岸部を中心に食の多様化が進み、牛肉の消費量が大きく伸長しているのに対し、国内生産量は飼養頭数の減少により伸び悩んでおり、この需給ギャップの拡大が大きな要因であるとしている。安定した牛肉生産には肉牛の牛群構築が欠かせないことから、需給バランスが安定するには少なくとも5年から6年は必要と見ており、高値傾向は継続すると見込んでいる。また、価格安定のために牛肉輸入は欠かせないとしている。

(調査情報部 伊澤 昌栄)


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