需給動向 海外

◆ブラジル◆

2015年の鶏肉輸出量、過去最高を記録


通貨安が輸出を後押し

ブラジル開発・商工省貿易局(SECEX)によると、2015年の冷蔵および冷凍鶏肉輸出量は、前年比6.5%増の388万8346トンとなった(表6)。増加の要因として、2014年末からブラジル国内で表面化した経済低迷や政治不信を受けた米ドル高レアル安により、輸出環境が良好に推移したことが挙げられる。





国別輸出量を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは、同国の需要拡大により、同22.1%増となった。また、第2位の日本向けは、同国において、牛肉・豚肉価格が平年に比べ割高で推移し、安価な輸入鶏肉への引き合いが強まったため同1.7%増となった。一方、第3位の中国向けは、同国が米国での鳥インフルエンザ発生に伴い、2015年1月12日以降、米国産鶏肉の輸入を停止しており、この代替需要により同34.9%増の大幅増となった。

2015年12月のレアルの対米ドル為替相場は、同年1月比で5割安となった(図17)。



これにより、ブラジル産鶏肉の平均輸出単価(米ドル建て)は、大手輸出パッカーを中心に下げ基調で推移し同15.1%安となって価格競争力が増加した。世界最大の鶏肉輸出国であるブラジルは、第2位の米国が米ドル高の為替相場により競争力が低迷していることを受け、さらに存在感を増す結果となった。

2016年の輸出量は過去最高を更新する見込み

米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が2015年10月に発表した「Livestock and Poultry: World Markets and Trade」によると、ブラジルの2016年の鶏肉生産量は、国内外の需要が好調に推移していることを受け、過去最高となる1348万トン(前年比3.1%増)が見込まれている。

一方、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)によると、2016年1月の主産地パラナ州のブロイラー生産コストは、前年同月比24.2%高の生体1キログラム当たり2.8レアル(81円:1レアル=29円)となっている(図18)。



これは、飼料用トウモロコシの価格が輸出仕向け増に伴う需給ひっ迫で値上がりしていることが背景にあり、鶏肉の輸出価格の引き上げは避けられないとみられている。

こうした状況について、オランダの金融機関ラボバンクは、ブラジルの鶏肉生産コスト高および輸出価格の引き上げはレアル安により相殺されることから、2016年の同国の鶏肉輸出量は、引き続き価格競争力を有し、過去最高を更新すると見込んでいる。

(調査情報部 米元 健太)


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