EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○98年の牛肉需給見通し


EU15カ国の生産量は800万トンを割り込む

 イギリス食肉家畜委員会(MLC) は、 先般、 98年におけるEU域内の牛肉需給見
通しを発表した。 これによれば、 98年の牛肉生産量は、 前年比2.1%減の7
85万7千トンと800万トンを割り込み、 3年連続の減少が見込まれている。 
これは、 96年の牛海綿状脳症(BSE) 問題から牛肉消費が大きく落ち込んだため、 
牛肉過剰対策として実施された子牛のと畜奨励金制度 (Calf Processing Premiu
m) および子牛の早期出荷奨励金制度 (Early Marketing Premium) による生産の
抑制措置等が奏効したためとしている。 


イギリスの生産量は3年前の3分の2に

 98年の国別の生産量を見ると、 EU15カ国のうち12カ国が減少するのに対
し、 増加するのはわずか3カ国 (スペイン、 アイルランド、 ギリシャ) と見込ま
れている。 2大生産国であるフランス、 ドイツでは、 それぞれ2.9%減の19
1万トン、 2. 7%減の152万1千トンと見込まれている。 

 また、 BSE問題の中心となったイギリスでは、 3. 8%減の66万5千トンと
3年連続の減少となり、BSE問題発生前の95年に比べ3分の2の水準に落ち込み、 
引き続き厳しい状況下に置かれると予想されている。 これは、 同国内の牛肉消費
が回復基調にあるものの、 ポンド高による輸入増や、 96年3月以来続いている
牛肉の輸出禁止措置が影響している。 しかし、 EU委員会は、1月14日、 BSE関連
規則を改正し、 北アイルランド産のみを対象とした牛肉および牛肉製品のEU域内
外への輸出解禁を認める提案を採択したことから、 わずかな光明が見えてきたと
言える。  (詳細はトピックス参照) 


消費回復は加盟国間で格差

 牛肉消費量は、BSE問題により96年は700万トンを割り込み、 前年比7.9
%減の696万1千トンとなったが、 その後は回復基調で推移している。 98年
は、 2. 1%増の730万トンに回復するが、 依然としてBSE問題発生前の95
年より3.5%下回るとみられている。 これは、イタリア、 スペインではほぼBSE
問題前の消費水準に回復するものの、 フランス、 ドイツ、 イギリスの主要消費国
での回復が遅れると予想されるためである。 


98年の牛肉自給率は107. 6%に

 98年の牛肉輸出量は、 輸出補助金が対象となる数量、 価額ともに削減される
ものの、 昨年レベルの99万トン、 また、 輸入量は前年比2.4%増の43万ト
ンと見込まれている。 一方、 98年末の介入在庫量は、 年間を通した介入買い入
れ (特に第2四半期の発動が必要) と放出が行われると予想されることから、 昨
年末と同レベルの62万トンと見込まれている。 

 このように、 98年の牛肉需給見通しは、 生産の減少に対して消費の回復がみ
られることから、 牛肉自給率は昨年より4. 7ポイント低下し、 107. 6%
と見込まれている。 これは、BSE問題発生前のレベルとなることから、 EU域内の需
給バランスは、 徐々に回復に向かうものと予想されている。 

EUの牛肉の需給見通し(枝肉ベース)

 (注)1 97年の数値は見込値、98年の数値は予想値
    2 輸出入量には、生体牛を枝肉換算したものを含む。
    3 EU15ヶ国の合計



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