◇絵でみる需給動向◇
96年10月から一貫して上昇してきた域内バター価格は、 97年下半期に入 っても、 上昇傾向が続いている。 域内の指標価格の一つであるオランダのブラン ドバターの取引価格 (以下 「バター価格」 ) は、 97年8月にこの3年間の最高 値であった95年12月の730ギルダー (約4万3千円) /100kgを更新し、 12月には前年同月を15.0%上回る780ギルダー (約5万1千円) に達し た。 98年1月は横ばいとなったものの、 これは89年 (年間の平均価格は81 8ギルダー (約5万4千円) ) に次ぐ記録的な水準となっている。 ◇図:域内バター価格の推移◇
この価格上昇の背景としては、 域内のバター生産量が主要生産国であるドイツ などの減少により、 前年に比べ減少傾向 (97年1月から11月までは前年同期 比2.5%減の約159万1千トン) で推移した中、 主要輸出先のロシアや他の CIS(独立国家共同体) 諸国向けなどの域外向け輸出が好調であったことが挙げら れる。 特に、 ロシアでは、 92年の経済改革以降混乱していた経済状態が97年に入 り回復の兆しが見られ、 新富裕層が出現してきたとされる一方、 国内の畜産は依 然として牛や豚などの家畜飼養頭数の減少が報告されるなど、 不振の状態が続い ている。 そのため、 97年上半期の同国のバターの輸入量は前年同期比32.9 %増の約11万3千トンと大幅な増加となった。 ロシアなどからの需要増により、 国際価格 (西欧主要積出港の本船渡し価格) も97年下半期以降上昇傾向となり、 11月には前年同月を35. 3%も上回る2, 300米ドル (約30万円) / トンに達した。 その後、 98年1月までその状態が続いている。 さらに、 域内のアイスクリーム、 菓子類などの製造業者や小売業者からのバタ ー需要が旺盛であったことが、 価格の上昇にさらに拍車をかけることとなった。 その結果、 97年1月末には約4万1千トンあったバターの介入在庫量は、 98 年1月末で約8千トンと大幅に減少した。
しかしながら、 業界紙によれば、 今年に入り、 EUからのロシア向け輸出はほと んど行なわれていないことが報告されている。 これは、 97年7月以降の東南ア ジア諸国の通貨急落の影響により、 同諸国向けの脱脂粉乳輸出が大きく落ち込ん でいるニュージーランドが、 最大の輸出先であるロシア向けのバター輸出に力を 入れていることが一因と考えられる。 また、 EU委員会は、 国際価格の高騰に加え、 域内バター需給のひっ迫に対処す るため、 97年11月28日付けでバター (乳脂肪82%のもの) の輸出補助金 を180.5ECU (約2万6千円) /100kgから170ECU (約2万5千円) と 約5.8%引き下げた。 このような状況から、 今後の域内バター価格の上昇率は、 鈍化傾向となっていくものとみられる。
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