EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○繁殖用雌豚頭数が減少に転じる (デンマーク)



前年同期比1. 5%減

 先ごろ発表されたデンマーク統計局の98年1月期の豚センサスによると、 EU
最大の豚肉輸出国である同国の繁殖用雌豚頭数は、 経産および未経産頭数がいず
れも減少したことから、 前年同期比1.5%減の121万2千頭となった。 同国
の繁殖用雌豚頭数は、 96年8月期以降、 同年3月の牛海綿状脳症(BSE) 問題の
発生による牛肉からの代替需要や、 97年2月からのオランダ (EU最大の生体豚
輸出国) などでの豚コレラの発生により、 域内の豚肉価格が全般的に堅調であっ
たことなどから、 拡大傾向が続いていた。 今回のセンサスの結果は、 今後、 同国
の肉豚出荷頭数が減少に向かうことを示すものとなった。 

 なお、 同国の総飼養頭数は、 1)これまで繁殖用豚群が拡大基調であったことに
加え、 2)EU最大の豚肉生産国であるドイツの飼養頭数も引き続き増加傾向にあり、 
急増していたドイツ向け生体豚 (主に子豚) 輸出が落ち着いてきたことから、 肥
育豚頭数が増加したため、 2. 8%増となった。 

98年1月期デンマーク豚センサス

 資料:デンマーク統計局
  注:( )内は内数


97年秋以降の豚肉価格の低下が主因

 このようにデンマークの繁殖用雌豚頭数が減少に転じた主因は、 97年秋以降
の域内豚肉価格の低下に伴い肉豚などの出荷価格も低下したことから、 養豚農家
の経営意欲が減退していることにある。 98年2月のEUの豚枝肉卸売価格 (市場
参考価格) は、 前年同月を6. 2%下回る135.3ECU (約2万円) /100
kgとなった。 また、 同国の豚肉価格も、 域内豚肉価格の低下と相まって、 前年同
月を8.0%下回る9. 33クローネ (約181円) /kgとなった。 

 価格低下の背景としては、 1) オランダなどにおける豚コレラの影響により、域
内豚肉需給が一時期ひっ迫したことなどから、 各国の繁殖用雌豚頭数が軒並み増
加し、 肉豚出荷頭数が依然として増加傾向にあること、 2)オランダの生体豚の移
動制限区域が徐々に解除され、 域内向けの輸出が可能となったことなどが挙げら
れる。 

 さらに、 デンマーク豚肉輸出機構連合 (DS:同国のと畜組合の上部団体) の関
係者によれば、 域外の主要輸出相手国である韓国や東南アジア諸国向けが、 これ
ら諸国の通貨急落の影響により、 減少していることも同国の出荷価格の低下に影
響しているとしている。 


98年の情勢は厳しい模様

 今後、 デンマークの養豚農家を取り巻く情勢は、 これまでから一転して厳しい
ものとなることが予想される。 ドイツ市場価格情報センター(ZMP) やEUの豚肉諮
問委員会によれば、 EUの豚肉生産量は、 98年第2四半期以降増加に転じるとし
ており、 また、 同諮問委員会は、 それに伴い、 域内豚肉価格は一層低下すると予
測している。 

 DS関係者も同様の見解を示しており、 98年の豚肉価格は96年、 97年のよ
うな特需的な状況が起こらない限り、 上昇する見込みはないとしている。 また、 
今年に入りオランダやドイツなどで新たな発生が見られている豚コレラが、 域内
豚肉需給に与える影響は、 あまりないとみている。 

 なお、 デンマーク農業諮問センターによれば、 98年の同国の養豚農家の平均
純利益 (税引き前) は、 このような状況から、 97年の59万1千クローネ (約
1,100万円) から34万4千クローネ (約670万円) と大幅に減少すると
している。 



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