米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○肥育豚価格が急落


97年7月以降、 前年水準を下回る

 肥育豚価格 (主要5市場の平均価格、 以下同じ) は、 95年6月以降概ね前年
水準を上回り堅調に推移してきたが、 97年7月以降は、 一転して前年水準を下
回る展開となっており、 ここ数ヵ月間の価格急落が養豚経営を急速に悪化させて
いる。 

 97年の肥育豚価格をみると、 上半期 (1月〜6月) は前年同期に比べ6.7
%高であったものの、 下半期 (7月〜12月) では前年同期比14.5%安と大
きく下落した。 98年に入ってからも下落傾向は続いており、 98年1月は前年
同月比33. 6%安の35. 3ドル/100ポンド (約102円/kg) となり、 
ほぼ3年ぶりに30ドル台となった。 

 豚肉卸売価格 (カット アウト バリュー) も、 肥育豚価格同様、 97年7月
をピークに低落傾向を強め、 98年1月では前年同月比27.4%安となってい
る。 

◇図:肥育豚価格の推移◇


生産増加が背景

 こうした価格下落の主な要因としては、 豚肉生産の増加が挙げられる。 97年
は、 飼料穀物価格が前年に比べ比較的安価であったことから豚生産が増加してお
り、 米農務省 (USDA) 公表の豚総飼養頭数は、 97年6月以降前年水準を上回っ
ており、 97年12月1日現在では前年同期に比べ6.7%増加となった。 豚肉
生産量 (枝肉ベース) についても、 97年計では前年比1.0%増となっており、 
USDAによると、 今後も生産の増加基調は続くとして、 98年は前年比8%程度の
増加を見込んでいる。 


1頭当たりの出荷重量増も一因に

 また、 最近の豚1頭当たりの出荷重量の増加も生産増に寄与しているといえる。 
97年は、 飼料穀物価格が比較的安価に推移したことや、 通常重量減がみられる
晩春から夏場にかけても豚の成長が良好であったことなどから、 1頭当たりの平
均枝肉重量 (連邦食肉検査済み重量) は、 前年比1. 3%増の85. 5kgと過
去最高を記録した。 


経営悪化で農家戸数の減少に拍車か?

 このような豚価の下落を受けて、 生産者の経営状態は悪化してきている。 肥育
豚生産1ポンド当たりの純利益 (北中央地域の一貫経営) をみると、 97年11
月以降は赤字に転じており、 98年1月では、 マイナス8.6セント/ポンドと
一層赤字が拡大している。 

 特に、 中小規模の生産者の経営状態は、 深刻な状態であるとされており、 生産
者の間では、 このまま価格低迷が続くならば中小規模層を中心に離農者が増え、 
農家戸数の減少や大規模経営化に一層拍車がかかると懸念されている。 また、 こ
うした声を受けて、 1月に、 生産者団体の代表は、 養豚経営に対する支援措置を
求める書簡をUSDAに提出した。 

◇図:養豚経営の純利益の推移◇



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