EU委員会がイギリス産牛肉の一部輸出解禁を提案 (EU)




解禁案は北アイルランド産を対象

 EU委員会は、 1月14日、 牛海綿状脳症(BSE) 関連規則を改正し、 イギリスの
北アイルランド産牛肉および牛肉製品のEU域内外への輸出解禁を認める提案を採
択した。 これにより、 96年3月以来続いている同国産牛肉の禁輸措置の解除に
向けて、 初めて具体的な動きが取られることとなった。 

 今回の輸出解禁案では、 当該対象牛について、 以下のような条件が付されてい
る。 

1 北アイルランドでと畜されたものであること。 

2 対象牛群は、 過去8年間BSEの発生がなく、 またBSE発生の疑いを完全に否定
 できないような例もないこと。 

3 牛は出生記録およびすべての移動記録が、 イギリス政府当局のコンピュータ
 による個体識別追跡用システムに記録されていること。 

4 牛は6カ月齢から30カ月齢で、 3のシステムで確認できること。 

5 母牛は生涯BSEに感染した恐れも発症もなく、また、 当該牛の出生後最低6カ
 月間は健在であったこと。 

6 出生以来所属したすべての牛群が2の条件を満たしていること。 

 また、 対象牛以外の条件としては、と畜場は輸出専用として指定することや、牛
肉には従来の検査済み印に加え、 特別の識別印を付けることなどが提案されてい
る。 


同地域に牛群関連データベースが完備されていることなどが背景

 これらの条件は、昨年イギリスが輸出解禁要請のためにEU委員会に提出した「輸
出用許可牛群計画 (Export Certified Herd Scheme) 」 に基づいている。 この計
画は同国政府当局が設置運営する関連データベースが前提となるが、 同委員会は
昨年、 イギリスでは北アイルランドでのみ完備していると報告していた。 

 業界筋によれば、 同地域の30カ月齢未満の牛の85%がこれら関連条件を満
たすことができるとみられる。 また、 同地域におけるBSEの発生件数は、93年の
459件をピークとして以後減少し、 97年は10月末現在で20件となってい
る。 ちなみに、 北アイルランドは、 禁輸前には生産量の8割が輸出される地域で
あった (うち24%はイギリス本土向け) 。 

 なお、 今回の提案では、 この他、 肉骨粉を含まないペットフードの輸出を許可
すること、 イギリスでと畜された牛を原料とするゼラチンの輸出を禁止すること
も明確に規定している。 これらの製品の輸出に関する規定は、 これまで不明瞭で
あると指摘されていた。 


今後、 解禁までには時間がかかる見込み

 現在、 輸出解禁案は、 常設獣医委員会(SVC) で検討されており、 その採決は3
月初めまでに行われる。 SVCでは、議案に関し特定数以上の賛成が得られれば可決
され、 その他の場合は農相理事会に決定権が移行する。 農相理事会が採択する場
合、 特定数以上の賛成をもって可決、 または単純過半数の反対をもって否決され
ることとなる。 また、 どちらでもない場合、 あるいは決定権を有する3カ月の間
に採決が行われない場合は、 決定権は提案者であるEU委員会に移行する。 法制化
された際は、 同委員会は調査団を北アイルランドに派遣し、 その結果を踏まえて、 
解禁年月日が決定されることとなる。 



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