97年の農業所得は減少の見込み (EU)




前年に比べ3. 1%の減少

 EU統計局は、 このたび、 97年のEUにおける実質農業所得 (物価調整済。 以下 
「農業所得」 )見込みを公表した。 これによると、 同年の農業所得は89年から9
1年のEU(15カ国) の農業所得を100とすると、 平均で117.9となり、過
去20年間で最高の水準となった前年と比べると3. 1%減少した。 

 97年の農業所得が減少した主な要因としては、 1)農産物の生産量が前年に比
べ0. 5%増加した一方で、 農産物の実質価格 (以下 「価格」 )が穀物を中心に
前年を3. 4%下回った結果、 その総生産額が3.0%低下したこと、 2) 補助
金総額がEUの財政事情が厳しくなっている中で、 0. 9%減少したこと、 3) 農
業労働力の減少率が1. 9%に鈍化したことなどが挙げられる。 


オランダは6.7%増、 イギリスは23.1%減

 また、 加盟国別の農業所得を見ると、 オランダが前年に比べ6.7%増加した
のをはじめフランス、 ベルギー、 ドイツで増加した。 オランダで増加した要因と
しては、 97年2月に発生した豚コレラの影響により養豚部門の収入が減少した
ものの、 野菜、 肉牛および養鶏部門における収入が増加したことにある。 

 しかしながらその一方で、 イギリスでは23.1%の大幅な減少となった。 こ
れは、 年間を通じたポンド高により、 同国の農産物の輸出競争力が弱まったこと、 
および96年には牛海綿状脳症(BSE) 問題の発生により増加した肉牛部門の補助
金が、 97年に入ってから同問題が落ち着いてきたことに伴い減少したことなど
が背景にある。 


畜産部門の総生産額は減少

 また、 今回の報告の中で97年の畜産物の総生産額は、 生産量が前年に比べ0. 
5%減少したことに加え、 価格が家畜で前年並み、 畜産物で3.1%低下したこ
とから前年に比べ減少した。 なお、 畜種別では、 肉牛部門が、 96年に発生した
BSE 問題が一段落したものの、 生産量、 価格はともにほぼ前年並みにとどまった。 
また、 養豚部門は、 オランダの生産量が豚コレラの影響で40%の大幅な減少と
なったものの、 デンマーク、 ドイツおよびフランスなどの主要国の生産が増加し
たことから全体では2.4%の減少にとどまった。 価格は豚コレラなどによる影
響で前年を0. 3%下回った。 


EU委員会、 これまでの農業所得の増加を強調

 今回の結果について、 EU委員会では92年の共通農業政策(CAP) 改革時に比べ
ると、 EUにおける農業所得が21%と順調に増加したこと、 また、 それは同期間
の平均労働者の所得増加率 (3. 6%) を大きく上回っていることを強調し、こ
の結果について楽観的な見解を明らかにした。 



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