ダチョウ産業が不調に (豪州)




ダチョウ産業がこれまで急速に拡大

 豪州でも、 ダチョウ (オストリッチ) はその肉、 皮革などが高価に売れる有望
な商品として、 近年ブームとなり、 めざましい拡大を遂げてきた。 生産者団体で
ある豪州オストリッチ協会 (AOA)の会員数は、 91年の200から93年半ばに
は約800、 96年後半には1,800余まで急増している。 また、 飼養羽数も、 
5万5千〜7万羽と推計されている。 

 この背景には、 ダチョウは、 その肉はヘルシーミートとして、 皮は高級皮革と
して、 さらに羽毛他も装飾品原料等として高価に取引され、 また、 1番 (つがい) 
から年間に15〜20羽の生産が可能で、 成長も早いことなどから、 短期間に多
大な利益を生む有望商品として、 脚光を浴びてきたことがある。 

 AOAは、ダチョウ産業が急速に拡大する中、 肉・皮革等の安定した流通ルートを
確立し、 有利販売を達成するという最大の課題に対処するため、 93年度にダチ
ョウの処理・販売を行う豪州オストリッチ社(AOC) を設立した。 同社は生産者の
出資に加え、 一般投資家の出資も募り、 資本金は96年には総額270万豪ドル 
(約2億4千万円) に達した。 AOCは、 これを基にダチョウ処理場も購入し、 製品
販売等の活動を行ってきた。 


生産者寄りの対応が不振を引き起こす

 しかしながら、 昨年8月以降、 資金繰りが悪化し、 遂に10月上旬には自主清
算という事態に陥った。 肉・皮革の販売先がないにもかかわらず、 生産者が出荷
するダチョウの購入、 処理を続けたこと (処理羽数約8,500羽に対し、 皮革
の販売ができたのは1,900羽分のみ) 、 品質の問題等で販売価格が伸び悩む
一方、 処理コストは計画を上回ったことなどが、 資金繰り悪化の最大の要因とさ
れている。 結局は、 製品の商業ニーズがそう強くない中で、 生産者サイド寄りの
楽観的対応が災いしたとも言える。 


ダチョウ産業の今後の行方に注目

 幸いにも、AOCは、 肉・皮革の 「受注」 生産、 市場開発、 品質改善を事業の柱と
する、 より企業的マインドを強めた更生会社として再出発することとなった。 し
かし、 依然として厳しい資金繰りが見込まれ、 企業としての先行きは楽観できな
い。 

 投機的性格の強い過激なブームの中、 一時は1番6万豪ドル(約540万円)と
も言われた種鳥は現在では、 1千〜2千豪 (約9万〜18万円) ドルにまで暴落
しており、 不調となっている豪州ダチョウ産業が蘇れるかどうかは定かではない。 
わが国でも、 注目されつつあるダチョウ産業ではあるが、 一足先にブームとなっ
た豪州の今の姿から学ぶべきことは多い。 



元のページに戻る