生乳の最低取引価格を引き上げ (タイ)




96年の輸入は百万トンを突破

 タイの酪農の歴史は非常に浅いものの、 近年は急速な発展を遂げており、 96
年には5年前の91年と比べると乳牛の飼養頭数が1.4倍の27万6千頭、 生
乳生産量が2. 4倍の47万4千トンに拡大している。 

 しかしながら、 順調な経済発展による所得の増大により、 牛乳・乳製品の消費
が飛躍的に拡大したことから、 供給が需要に追いつかず、 96年の牛乳・乳製品
の輸入は初めて百万トン (生乳換算) の大台を超えた。 その結果、 近年、 上昇傾
向にあった生乳の自給率は、 95年の41%から96年には31%に低下してい
る。 


最低取引価格を2年ぶりに引き上げ

 このような中、 タイ政府は、 昨年7月からの通貨バーツの下落による輸入飼料
価格の高騰によって、 生乳生産コストが上昇したことにより困窮している酪農家
を救済するため、 政府が設定している生乳の最低取引価格 (目標価格) を96年
1月以来、 概ね2年ぶりに1kg当たり10.5バーツから12.25〜12.5
バーツに引き上げるとしている。 

 なお、 実際の生乳取引価格は、 酪農家から集乳している酪農組合または集乳セ
ンターが、 乳業メーカーへの輸送経費等を勘案して決定されている。 今回の最低
取引価格の引き上げ措置は、 法的な拘束力はないものの、 大手乳業メーカーにお
いても原料乳確保のために価格改定に応じざるを得ず、 酪農家の生乳販売価格の
上昇につながるとみられている。 


不足分は輸入品で充当

 その一方で、 タイ政府は、 今年の需要を満たす国内の生乳生産の確保が困難と
見込まれることから、 8万8千トンの脱脂粉乳、 2千3百トンの生乳・飲用乳等
の関税割当てを行うこととしている。 

 しかしながら、 乳業メーカーは通貨バーツの下落が続く中、 割高となっている
輸入原料等を購入する余裕もなく、 さらに国内産原料乳を確保するためにメーカ
ー間での競争に直面するなど、 厳しい状況に置かれている。 



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