USDA、 酪農家の新リスク管理事業を発表




96年農業法に基づく改革が進む米国酪農

 96年農業法は、 酪農制度に関して、1) 加工原料乳目標価格の段階的引き下げ・
価格支持制度の撤廃、 2) 酪農家からの課徴金徴収の撤廃、 3) 連邦ミルクマーケ
ティングオーダー (地域) の10〜14への統合などを規定している。 このうち、 
2) の課徴金の廃止については既に実施済みであり、 また、 3) の連邦ミルクマー
ケティングオーダーの統合については、 今年1月に、 米農務省 (USDA) から本制
度 (MMO制度) の包括的な改正案が提示されるなど、96年農業法に基づく改革が
着実に進められている。 

 こうした中、 USDAは、 1月6日、MMO制度改革案の発表に先立ち、 酪農家に対す
る新しいリスク管理事業である酪農オプション・パイロット・プログラムを発表
した。 この事業は、 加工原料乳に対する価格支持制度の段階的撤廃に対処するた
め、 作物保険制度などを所管するリスク管理局により提案されたものである。 


先物市場におけるオプション取引を活用

 この事業は、 酪農家とUSDAとの合意に基づく助成 (コストシェアリング) を通
じて、 酪農家に対して最低価格保証を行うための一種の保険であるといえる。 一
定の条件を満たしこの事業に参加した酪農家が、 生乳に関するプット・オプショ
ン (先物市場で売る権利) を購入し、 乳価が低落した場合に、 オプション取引の
権利 (プット・オプションの売り) を行使するにより、 乳価低落による影響の一
部を相殺することができるというものである。 USDAは、 このような仕組みの下で、 
酪農家が生産した生乳について実質的に最低価格が保証されることになるとして
いる。 

 具体的には、 この事業は、 各参加者グループごとに6ヵ月間継続され、 その期
間中に、 各参加者は、 20万ポンド (約90トン) から60万ポンド (約270
トン) の生乳生産をヘッジしなければならない。 USDAは、 事業に参加する酪農家
に対し、 オプション取引に関する研修を行なった上で、 オプションの取引料30
ドルに加え、 オプションの掛け金の80%を助成する。 したがって、 この事業に
参加する酪農家は、 オプションの掛け金の残り20%だけを負担すればよいこと
になる。 


今年の春から一部地域で実験的に実施

 この事業は、 今年の春からの3年間、 生産の集中度合い等に基づいて選択され
る6つの州のそれぞれ6つの郡の計36の郡において実験的に実施され、 合計5
千4百戸の酪農家 (全米の酪農家の約5%) が参加するものと見込まれている。 
また、 この事業に要するUSDAの年間予算額は、 1千万ドル (約13億円) と予測
されている。 



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