家畜飼料の安全対策の強化を検討(EU)


食品の安全性を脅かす問題が相次いで発生

 EUでは、最近、家畜飼料に関連した食品の安全性にかかわる問題が相次いで発
生している。99年6月に発覚したベルギーでの鶏肉や豚肉などのダイオキシン汚
染問題は記憶に新しい。家畜の飼料原料が汚染源であることが特定されたが、現
在、一部の鶏肉などの生産・販売について規制が継続されているほか輸出先など
への補償問題が残されており、いまだこの問題は完全解決に至っていない。また、
99年8月には、フランスにおいて家畜飼料として使用が許可されていない排水汚
泥(Sewage Sludge)の混入が問題となった。現行のEU規則における解釈の相違
が原因とされているが、その後、ドイツ、オランダおよびベルギーでも同様の事
例が確認されており、現在、加盟国で運用実態が調査されている。


EU委員会、家畜飼料に関する規則を見直し

 こうした問題を背景として、EU委員会のバイルン委員(健康・消費者保護担当)
は、9月27日の農相理事会で、早急に家畜飼料の安全対策を整備・強化していく
意向を明らかにした。EU委員会では現行の家畜飼料に関する規則を見直すことと
し、2000年10月(99年末までにドラフトを作成)を目途に、EU全域を対象とした
家畜配合飼料の安全性に関する包括的な管理システムを提案する予定である。こ
れには、家畜飼料に含まれるダイオキシンのモニタリング調査等が規定される見
込みである。


家畜飼料原料のダイオキシン含有許容量の設定などを検討

 また、当面、家畜飼料の安全性を確保するため、次の事項について検討すると
している。

@家畜の配合飼料原料中に含まれるダイオキシンの含有許容量の設定(この値の
設定に当たり、相対的にダイオキシン含有量が高いとされるフィッシュ・ミール
について加盟国の合意を得られず結論に至っていない)

A飼料原料の由来の追跡・特定を可能とするための取り組みや、配合飼料企業に
対する公的機関による認定制度の導入

B家畜配合飼料への添加禁止物質の見直しおよび添加物質(特に油脂および家畜
由来の原料)の定義の明確化と統一的な運用

C遺伝子組み換え(GM)作物を使用した家畜飼料に対してのラベリングの導入

 牛海綿状脳症(BSE)やベルギーのダイオキシン汚染問題を見るまでもなく、
畜産物の安全性を確保する上で家畜飼料の安全対策は必要不可欠な条件であると
言える。消費者の食品安全性に対する関心がさらに高まる中、畜産物の安全性に
対する信頼を回復するため、EUがいかに迅速かつ的確に家畜飼料の安全対策を実
行できるか注目される。

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