牛肉産業の振興に向けた新機関設立の動き(アルゼンチン)


口蹄疫の清浄化による輸出市場の開拓と国内消費の減少が背景

 アルゼンチン政府は、これまで2年にわたりアルゼンチン産牛肉の輸出振興お
よび国内の需要増進を目的とする新機関の設立に関する法案準備を行ってきた。

 この背景には、97年の口蹄疫ワクチン接種清浄国の地位獲得、同年の米国向け
アルゼンチン産の生鮮、冷蔵および冷凍牛肉の輸出解禁に加え、国内の牛肉消費
の減退による生産減に対処することが挙げられる。農牧水産食糧庁の統計による
と、98年の生産量(枝肉ベース)は90年に比べ18%減の245万トン、1人当たりの
牛肉消費量は同年比で26%減の59.9kg(枝肉ベース)となっている。


輸出振興と国内の需要増進が目的

 農牧水産食糧庁が示した新機関の設立に関する法律の草案では、実施機関とし
てアルゼンチン牛肉振興協会を設立し、その主な業務として、アルゼンチン産牛
肉の輸出振興および国内の需要増進を目的とする事業の推進、具体的には、調査
研究、宣伝キャンペーン、研修制度の実施による人材の育成、関係機関との調整
などが規定されている。

 また、構成メンバーとして農牧水産食糧庁から1名、農業4団体から各1名、5つ
の食肉団体から3名の計8名から構成される理事会を設置し、新機関の年間予算や
活動計画の作成などを行うとしている。


財源は生産者などからの課徴金

 財源について草案では、生産者などからの課徴金を原資とする牛肉振興基金を
造成し、これを新機関の運営資金に充当するとしている。課徴金については、取
引頭数1頭に対し、生産者からは農牧水産食糧庁が公表する生体牛指標価格の0.2
%を、と畜業者からは0.09%をそれぞれ徴収することを規定している。これによ
り、年間約1千2百万ペソ(約13億円:1ペソ=108円)の課徴金収入が見込まれて
いる。なお、課徴金の徴収方法については、農牧水産食糧庁が別途定めるとして
いる。


大統領選を控え、法案審議の遅延を予想

 アルゼンチン農牧協会のクロット会長は、8月7日、同協会主催による国際農牧
工業展の開会式において、政府高官の相次ぐ交代により、新機関の設立に関する
法案準備が遅れていると指摘した。 

 これを受けて農牧水産食糧庁マンサーノ次官は、「同法の草案は、農牧水産食
糧庁の協議を経て、既に上部組織である経済公共事業省に上げられた。今後は、
同省内において協議された後、大統領府に提出され、最終的に法案として議会で
審議される。」旨発言している。

 アルゼンチンの牛肉業界は、新機関の設立に期待を寄せているが、同国では10
月24日に大統領選挙を控えていることから、国会での法案審議の遅延が予想され
ている。

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