低迷続きの豚価が上昇へ(中国)


低迷豚価、5月を底に上昇

 昨年来低落が続いていた豚価が、約1年ぶりに上昇した。農業部が公表してい
る肉豚および豚肉の市場価格(卸売と小売形態が混在していると思われる:全国
平均)は、98年前半の急落後、いったん上昇に転じたものの99年には再び低落傾
向で推移した。その後、今年5月の子豚、肉豚および豚肉の市場価格は、それぞ
れ1kg当たり4.69元、4.72元および8.47元、前年同月比でそれぞれ55.8%、78.4%
および80.4%となり、大幅に下落した。

 ところが、99年5月を最後に豚価は再び上昇し始め、99年8月には、それぞれ1
kg当たり6.37元(前年同月比80.7%)、5.87元(90.9%)および10.31元(91.6%)
まで回復した。特に、豚の主要生産省の1つである山東省の章丘などの地域では、
肉豚1kg当たりの価格が一時6.20元にまで上昇し、養豚経営の収益性を測る指標と
される飼料穀物との価格比が1:5.5〜5.7(おおよその基準は1:5.5程度)となっ
て、養豚経営が黒字に転換したとされる。

◇図:肉豚および豚肉市場価格の推移◇


生産頭数の減少や国の介入措置が上昇要因に

 豚価が上昇し始めた背景には、第1に豚の生産頭数が減少したことが挙げられ
る。これは、長引く豚価の低迷により、養豚農家の赤字が深刻となり、資金が少
なく技術力の低い養豚農家が規模を縮小または廃業したためである。国内貿易局
の調査によると、全国11の主要生産省の今年5月末時点における豚の飼養頭数は
1億9千4百万頭、前年同期比92.9%となり、また、前回(99年2月末)の調査に比
べ4.1%の減少となっている。このため、7〜8月の肉豚出荷頭数は減少し、一部
の地域では競って買いつけが行われる等、価格が上昇した。

 第2は、豚価の長期低迷に対処するため、国が積極的に市場介入に乗り出した
ことである(本誌6月号トピックス「長期化する豚価低迷(中国)」参照)。


価格上昇も、楽観はできず

 長期化していた豚価の低迷は、ひとまず回復基調となりつつあるかに見える。
しかし、@98年の繁殖雌豚の飼養率が例年より2%多く、豚の飼養頭数が全体的
にそれほど大きく減少していないこと、A昨今の収入の減少の影響により、食肉
消費自体が振るわないことに加え、消費が、豚肉から牛肉などにシフトしていて
いること、Bまた、豚の全国的な流通市場がないため、生産省と消費省における
需給の不均衡が解消されていないこと、C今年も豊作が予測される中、国際的に
もトウモロコシ価格は低水準で、飼料価格の上昇要因がないことなどから、今年
下半期以降、豚価が大幅に上昇するような状況にはないといわれている。関係者
によると、下半期は祝日も多く、豚肉の消費増も期待されるものの、よくても97
年の水準を取り戻す程度と予測されている。また、国内貿易局の幹部も、今回の
豚価の上昇は限られた地域の市場のみの現象で、全国のすべての市場に起こって
いるものではなく、国際的または国内的な需給動向から見ても、豚価は今後も低
レベルで推移するのではないかとしており、必ずしも楽観できる情勢ではないこ
とがうかがえる。

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