USDA、ホルモン非投与肉牛プログラムを発表(米国)


既存プログラムの見直し

 米国からEU向けに輸出されるホルモン非投与牛肉は、年間1万1千トンの輸入枠
に対して、約7千トンの輸出実績があるとされている。

 EUは今年4月、米国から輸入されるホルモン非投与牛肉のサンプルのうち12%
から成長ホルモンが検出されたと発表するとともに、常設獣医委員会は、6月15
日から米国産牛肉の輸入を全面的に禁止するとした。

 その後、米国がEUによるホルモン投与牛肉の輸入禁止措置に対して100%の報
復関税をちらつかせる中、EUは6月14日、輸入禁止措置の実施を半年間延長し、
12月から実施すると発表した(これまでの経緯については、本誌99年5月号およ
び9月号「トピックス」参照)。

 これを受けて、米農務省(USDA)食品安全検査局(FSIS)は、ホルモン非投
与肉牛プログラムの管理に対する懸念を踏まえ、7月16日から同プログラムに基
づく証明を中止するとともに、同プログラムの改善を図ってきた。


第3者機関による認証システムの開発

 こうした中、USDAは8月31日、対EU輸出向けホルモン非投与肉牛プログラム
のための第3者機関による認証システムを策定したと発表した。

 今回の発表によれば、FSISは生産からと畜、加工、製品の包装までの全工程の
管理を改善するため、業界による協力の下、第3者機関による認証システムを開
発したとしている。第3者機関には、USDA農業マーケティング局(AMS)また
はAMSによって認証された機関が含まれる。

 改善されたホルモン非投与肉牛プログラムは3つの原則からなり、それぞれに
関連する機関は、AMSから第3者認証機関としての認証を受けなければならない。
3つの原則は以下の通り。

 第1に、肉牛は認可された農場またはフィードロットで飼養され、当該生産者
によりホルモン非投与条件下で飼養された旨証明する宣誓供述書を付してと畜場
に出荷されること。

 第2に、ホルモン非投与の肉牛および牛肉は、と畜場で他から分離され、成長
ホルモンを投与された家畜および食肉と混合しないような方法で処理されること。

 第3に、ホルモン非投与肉牛の組織のサンプルはと畜場で収集され、認証され
た独立の検査機関において、規制されている化合物の残留水準が分析されること。

 このため、牛肉生産の全工程を通じて肉牛の個体識別がなされ、生産された牛
肉がホルモン非投与肉牛からのものであることが記録・伝達されるとともに、遡
及可能でなければならない。


輸出証明書の発行は数ヵ月以内に再開の見込み

 本システムに基づく認証が完了すれば、7月16日以来中止されていた同プログ
ラムに基づく輸出証明書の発行が、今後数ヵ月以内に再開されるものとみられて
いる。一方、EUは9月22日、現在実施しているホルモン牛肉の安全性に関する科
学的な調査の報告が、当初予定していた来年初めから来年中頃になると発表した。
米側はUSDAをはじめとして、一様に反発している。USDA関係者の間では、報
告が遅れたとしても、EUが主張するホルモン牛肉の非安全性を擁護する結果には
ならないのではないかという声も上がっており、ホルモン牛肉をめぐってEUとの
間に新たな摩擦が生じる可能性が懸念される。

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