◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)の飼養動向調査によると、2000年7月1日現在における牛の 総飼養頭数は、前年比0.6%減の1億640万頭となった。キャトルサイクル(肉用 牛経営の収益性がもたらす循環的な牛群消長)は、子牛価格の低迷と96年から98 年にかけての局地的な干ばつに伴う粗飼料不足により繁殖経営の収益性が悪化し、 繁殖雌牛のとう汰が進展したため、95年をピークに減少に転じ、現在下降局面に ある。今回の調査結果から、7月1日現在の飼養頭数は5年連続で減少しているこ とが明らかになった。 ◇図 牛の飼養頭数の推移◇
種類別に見ると、繁殖雌牛および未経産牛が前年比0.2%減および0.6%減とい ずれも前年水準を下回った。中でも、肉用未経産牛は前年比2.1%減の470万頭と 減少が目立っている。これは、極めて旺盛な牛肉需要に伴い子牛価格が高騰した ことなどから、未経産牛を更新用に保留せずに肥育業者などに売却した繁殖経営 が多かったことによるところが大きい。このため、7月1日現在のフィードロット における飼養頭数は、前年比9.5%増の896万頭と92年以来最高の水準に達し、こ のうち未経産牛の飼養頭数も前年比9.0%増となった。 牛の飼養動向 資料:NASS/USDA「Cattle」 注1:表中*1は500ポンド以上、*2は500ポンド未満の子牛 2:各年7月1日現在
USDAによれば、繁殖経営の現金収支は99年11月以降黒字となっていることか ら、早ければ今夏にも未経産牛を積極的に保留していく傾向となり、飼養頭数は 2001年を底に2002年には増加局面に転じると見込まれる。ただし、繁殖経営の多 くは、子牛の高値販売によって得た利益で過去の負債を整理しているため必ずし も最良の財政状態にないことなどから、現時点では未経産牛を積極的に保留する 兆候は現れていない。さらに、周年放牧が一般的な南西部や北部平原地帯などの 主産地では、今夏の干ばつによる粗飼料不足を懸念して、今年も保留を見送る生 産者が多くなることが予想される。こうしたことから、良好な収益性という増頭 へのインセンティブは用意されているとはいえ、未経産牛の保留が進展するか否 かは、今後天候に恵まれ十分な粗飼料が確保できるかなどに左右されるとみられ る。
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