タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○上半期の鶏肉輸出、アジア依存度の低下傾向続く


低下するアジア地域への輸出依存度

 タイブロイラー加工輸出業者協会はこのほど、今年上半期の鶏肉輸出動向を公
表した。これによると、今年1〜6月の輸出量(速報値)は14万5千トンで、昨
年の同じ時期と比べて12.5%増加した。

 形態別に見ると、冷凍鶏肉は10万9千トンで、前年同期比7.6%の増加であっ
たのに対し、鶏肉調製品は30.5%増の3万6千トンと大幅に躍進している。これは、
ブラジル産冷凍品などとの競合により、日本など主要輸出先に対する鶏肉調製品
へのシフト戦略を、如実に反映した結果となっている。

 また、地域別では、第一の輸出先である日本を含むアジア地域向けは9.1%増
の10万トンに達したものの、全体に占めるシェアは69.2%と7割を割り込み、前
年同期と比較すると2.1ポイント下げた。一方、第二の輸出先であるEU向けは、
21.2%増の4万4千トンと大幅に増加した。これによりEUの全体に占めるシェアは、
逆に2.2ポイント上昇して30.5%となり、アジア地域に対する依存度が引き続き
低下していることが分かる。

◇図 地域別輸出割合の推移◇


日本への輸出割合も低下傾向

 国別では、全輸出の過半を占める日本向けは6.4%増の8万1千トンとなった
が、全体に占めるシェアは、前年同期に比べ3.1ポイント減少して56.0%となり、
日本への輸出割合が低下する傾向が続いている。他のアジア地域向けでは、香港
が5千トンと約3倍に増加したほか、シンガポールが調製品の大幅な伸長から15
.5%増の7千トン、韓国が23.4%増の3千トンとなっている。これに対し、国内養
鶏業の強化を着々と図る中国向けは20.7%減の2千トン、マレーシア向けも36.6
%減の2千トンといずれも大幅に減少し、日本市場での伸び率の鈍化に加え、ア
ジア向けが伸び悩む一因となった。

 EU地域について見ると、オランダ向けが31%増の1万5千トンとなったほか、
イギリス向けが18.5%増の1万1千トン、ドイツ向けが16.7%増の1万6千トン
と、いずれも大幅に増加しており、EU向け輸出が躍進する原動力となった。なお、
この3ヵ国で、同地域向け輸出の96.4%を占めている。

◇図 形態別・輸出先別の推移◇


鶏肉業界、新たな市場開拓を模索

 輸出が全体に好調な伸びを示す一方、鶏肉業界では、日本をはじめとした伝統
的な主要市場における、安価なブラジル産鶏肉などとの競合を回避する目的で、
南部アフリカ地域を照準とした、新たな輸出市場を模索する動きが見られる。タ
イ最大の養鶏企業であるチャロン・ポカパン社では、輸出コスト削減のため、現
地での養鶏産業育成を目指し、南部アフリカ地域への大規模な投資の機会をうか
がっていると伝えられており、7月下旬には、タイ政府の肝いりで同社をはじめ
とする投資家グループの視察ミッションが組まれた。現在、タイからアフリカ地
域への輸出は皆無に近いが、鶏肉輸出企業は、2億人の人口を抱える南部アフリ
カ地域安全保障機構(SADC:14ヵ国で構成)を潜在的な輸出市場として注目し
ているとされる。

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