◇絵でみる需給動向◇
回復の兆しを見せていたEUの脱脂粉乳価格は、域内への供給不足が懸念されて いることから、今年に入り大幅な上昇を見せている。脱脂粉乳の指標価格の1つ であるドイツの工場渡し価格を見ると、2000年6月は1kg当たり4.95マルク(約 261円:1マルク=52.70円)を記録し、前年同期比で130%もの上昇となった。 また、低迷が続いていたバター価格についても、徐々に回復の兆しが見え始め ている。指標価格の1つであるオランダの市場価格は、2000年6月に1kg当たり 6.93ギルダー(約324円:1ギルダー=46.77円)と、98年後半の水準まで回復し つつある。 バター価格は、需要の低下などにより98年後半以降下落に転じ、2000年2月に は1kg当たり6.55ギルダー(約306円)と、ここ数年来で最低の価格を記録してい た。 ◇脱脂粉乳、バター価格の推移◇
脱脂粉乳生産に影響を与える域内の生乳生産量は、2000年の第1四半期実績で、 前年同期比0.5%の減となる3,818万4千トンと見込まれている。生産減少の要因 としては、天候不順による放牧開始の遅れと、いくつかの地域で報告されている 干ばつによる牧草の未生育の影響によるものと推測される。このような中で、同 時期のEUのうち12ヵ国における脱脂粉乳生産も、前年同期比6%減となる38万 1千トン(推定値)となっている。生乳生産量の減少とともに、需要が高まるチ ーズ生産に対する生乳供給の増加も要因として無視することはできない。 一方、需要動向を見ると、経済回復が著しいアジア諸国や、中東、北アフリカ などの産油国をはじめとする国々において、乳製品への需要が引き続き高まって いることが注目される。さらに、EUにおいても、ヨーグルトなど加工乳製品を中 心とする脱脂粉乳などへの需要増加も見逃せない。 このため、世界的に見た需給バランスはかなり引き締まった状況にあり、端境 期に入ったオセアニアからの輸出停滞など、EUに対するニーズは高まらざるを得 ない。このことが結果的に大幅な価格上昇をもたらす要因となっている。
7月に入り米国は、乳製品輸出奨励計画(DEIP)に基づき、国際市場へ脱脂粉 乳輸出を開始したことから、高騰した価格はやや落ち着きを取り戻すとことが予 想されている。しかし、国連食糧農業機関(FAO)が発表した最近の報告による と、脱脂粉乳など乳製品に対する世界的な需要は引き続き今後も強く、需要国 の経済成長の動向によっては、さらに大幅な拡大が期待できるとしている。 このような中、2000年のEU域内の生乳生産量は、今年前半の低迷により前年 を上回ることが難しいとみられており、脱脂粉乳生産も前年を下回ることが予想 されている。このため、今後の価格動向は、当面、堅調に推移するものとみられ る。
元のページに戻る