◇絵でみる需給動向◇
今年に入りEU域内の豚肉価格は、供給量の減少や消費需要の回復などを背景に 急激な上昇を続けている（左図参照）。EU委員会の報告では、今年のEUの豚肉 供給量は、飼養頭数の減少に伴い99年に比べ若干の減少と予想している。このこ とから、豚肉価格は、引き続き堅調な水準を維持するものとみられる。 イギリス食肉家畜委員会（MLC）が先ごろ発表した、2000年〜2001年のEU域 内の豚肉需給見通しによれば、豚肉生産は減少傾向で推移するとしている。2000 年の豚肉生産量（枝肉重量ベース）は17,390千トン、2001年は16,599千トンと、 いずれも99年と比較して3〜7％以上の減少を見込んでいる。
国別の生産動向では、EU最大の豚肉生産国ドイツについては、過去の価格低迷 時における飼養頭数減少の影響から、雌豚頭数の回復が見られないこと、また、 離農促進政策により一時的に豚肉生産が増加するオランダからの輸入増が、国内 生産を抑制していることなどから、と畜頭数、生産量ともに減少との予測を立て ている。このほかでは、ドイツに次ぐ生産国であるスペインは、養豚経営の近代 化が進まず、依然として輸入依存傾向にあること、また、フランスについても、 ドイツ同様飼養頭数の回復が見られないこと、さらに、EU最大の豚肉輸出国であ るデンマークについては、と畜頭数の維持は見込まれるものの、輸出需要により 早期出荷が促進されることなどから、生産量はいずれも減少との予測である。 MLCが発表した需給見通しの中で、豚肉生産を増加と予測しているのはわずか にギリシャのみであるが、最近の同国での口蹄疫の発生が伝えられる中、増産へ の道のりは遠くなりつつある。 ◇主要国における豚肉生産量の推移◇
低迷する豚肉生産とは裏腹に、域内の豚肉需要は着実に回復の兆しを見せてい る。域内の豚肉消費は、ここ1〜2年で7％という驚異的な伸びを示したともいわ れており、最近の豚肉に対する需要の高さがうかがえる。 フランスでは、品質が保証された豚肉として「ラベル・ルージュ」の認定件数 が増加するなど、堅調な価格を背景に生産者も消費拡大に向けて懸命に取り組ん でいる。 しかし、一方では、今夏、ヨーロッパ北部を中心とした異常ともいえる冷夏に より、豚肉製品に対する消費への影響が懸念されている。特に夏場の季節商品と されるソーセージについては、昨年の販売実績と比較して20％の落ち込みを見せ ているという情報もあり、引き続き域内の消費動向も注目される。
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