オーガニック畜産が引き続き進展(EU)


消費志向の変化を背景に成長、さらなる進展にはいくつかの課題も

 EU各国では、食品の安全性を求める消費志向の変化などを背景に、オーガニ
ック畜産や農業が急展開で成長している。EUの全農地面積に占めるオーガニック
農地(畜産用草地および飼料畑を含む)の割合は、98年時点では2%程度にとど
まっているが、高まる消費ニーズや有利な条件で取引される価格状況などを要因
に、安定的な拡大が見込まれている。しかし、オーガニック畜産や農業が一般的
に広く認知されるためには、的確な消費志向の把握や、オーガニックに対する各
国での補助政策の実施、さらに、オーガニック食品へのプレミア価格体系の形成
など、いくつかの課題を乗り越えることが必要とされる。これら課題の解決が将
来におけるオーガニック畜産や農業のカギを握ることから、各国における今後の
動向が注目されている。

フランスのオーガニック畜産
organick.gif (15796 バイト)
 資料:フランスオーガニック農業監視機関


フランスでは、需要に追いつかない事態も

 EU域内でオーガニック畜産が相対的に遅れていたフランスでは、近年、著し
い成長が見られる。最近のフランスにおけるオーガニック畜産の状況(97年〜
98年)は、表の通りである。

 フランスのオーガニック畜産は、99年も引き続き拡大し、家畜数(推定値)は、
乳用経産牛および肉用雌牛合計で4万9千頭(前年比41%増)、雌羊:4万7千頭
(同52%増)、豚:3万7千頭(同78%増)、採卵鶏:131万羽(同25%増)と大
きく増加したとみられている。また、オーガニック草地および飼料畑についても
5割程度増加し、オーガニック農地(31万6千ヘクタール)の約8割を占めること
となった。なお、オーガニック農地の割合は全農地の約1%となっている。

 このように、オーガニック畜産物の生産が急増する中、生産に必要なオーガニ
ック飼料も不足する事態となり、必要量の6割(8千6百トン)が不足している。

 オーガニック畜産物および農産物の需要が増加する中、特にオーガニックミル
クについての需要が高く、生産量が需要量の1割を満たしているにすぎないこと
から、ドイツなどからの輸入が急増している。


EU各国の状況−最大生産国のオーストリア、政府主導のデンマークの状況−

 オーストリアでは、オーガニック農業に対する政府の手厚い支援策などを背景
として、EUで最大のオーガニック農畜産物生産量を誇っている。88年には約1千
戸であったオーガニック登録農家数は、99年に国内農家の約8%に当たる約2万戸
までに拡大し、EU全体のオーガニック農家数の約5割を占めている。オーガニッ
ク農地の多くは山岳地帯に位置し、その割合は全農地の約10%、30万ヘクタール
となっている。大半のオーガニック農地は酪農で用いられているが、オーガニッ
クミルクに対するプレミアが十分に認知されていないことから、製品の約5割は
通常価格で売られている。このため、より利潤の高いオーガニック牛肉の生産が
伸びている。

 同国で生産されるオーガニック農畜産物の約3分の1は輸出に向けられており、
主な輸出先はイギリス、ドイツ、スウェーデンで、チーズなど乳製品に高い需要
がある。一方、オーガニック大豆、穀物、果物および野菜などは、国内で調達す
ることができず輸入に頼っている。

 政策の一環としてオーガニック農業が推進されているデンマークでは、87年か
らオーガニックへの転換を行った農家に対し、転換後5年にわたり補助金を交付
している。99年までの合計登録・転換農家数は、2,155戸と順調に増加している。
このうち、酪農家は750戸で、国内生産の9%に当たる39万5千トンのオーガニッ
クミルクを生産している。デンマーク政府は今後の方針として、主要輸出産品で
ある豚肉を生産する養豚農家について、特にオーガニック畜産への転換を促進し
たい意向であり、割増補助金を設定して参加者を募るなどの動きを見せている。

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